介護費用の減額に役立つ!高額介護サービス費制度と負担限度額認定制度とは

老後のお金・年金

「高額介護サービス費制度」
「負担限度額認定制度」

なんだか聞きなれない堅苦しい名前ですよね…

でも、この2つの制度を知っているだけで、有料老人ホームやグループホームなど介護費用を減額できるかもしれません!

今回は介護保険の自己負担額を減らす方法や、介護費用の減額に役立つ制度について、さらには世帯分離のメリット・デメリットも併せて解説します。

そもそも介護保険って?

介護保険とは、介護が必要な方が適切なサービスを受けられるように、社会全体でサポートする制度です。
この制度によって、保険加入者は介護費用の1割(※所得に応じて2~3割)の負担で、介護サービスを受けることができます。

「でも、1割の費用負担でも苦しいとき、どうすればいい?」

そんな時に役立つのが高額介護サービス費制度です!

高額介護サービス費制度とは

1ヶ月の自己負担額

高額介護サービス費制度は介護保険の自己負担額の合計が上限を超えたとき、超過分のお金が戻ってくる制度です。

介護保険では、実際に使った介護費用の1割(※所得に応じて2~3割)をご自身で負担します。
しかし、1割負担が積もり積もって1ヶ月に定められた金額の上限を超えた場合、超えた費用の払い戻しを受けることができるのです。

「高額介護サービス費制度」の自己負担額について

では、この自己負担額の上限とはどのように決められているのでしょうか?
自己負担額の上限は下記の表のように決まっています。

対象となる方 自己負担額の上限
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方※1 44,400円(世帯)
どなたかが市区町村民税を課税されている世帯 月間44,400円(世帯)
年間446,400円(世帯)※2
全員が市区町村民税を課税されていない世帯 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以上の方等 24,600円(世帯)
前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方等 15,000円(個人)

※(世帯)は世帯で介護サービスを利用した全員分の負担額の上限で、(個人)は介護サービスを利用したご本人の自己負担額の上限です。
※1、現役並み所得者に相当する方がいる世帯とは、65 歳以上で課税所得が 145 万円以上の方がおり、世帯内の 65 歳以上の方の収入の合計が520 万円以上(単身の場合は 383 万円以上)である場合を指します。
※2、同じ世帯の65歳以上の方の利用者負担割合が1割の世帯に年間上限額(446,400円)を設定

親御さまと同居されている世帯の場合、①もしくは②に該当します。
同居しておらず、両親共に市区町村民税を課税されていない場合は③に当てはまります。

高額介護サービス費制度の申請ポイント

申請方法は自治体によって異なります。
各市町村のホームページに必要書類が記載されています。申請書などダウンロードが可能な場合は、そちらを印刷・記入して役所に提出すれば申請は完了です。

●市町村によっては、高額介護サービス費制度の条件を満たす方には「お知らせ」と「申請書」が届く場合があります。
原則として申請は初回のみです。それ以降は手続きをしなくても、自己負担額の上限を超えた金額が支給されます。

その他、申請に必要な可能性があるもの
・領収書
・マイナンバー
・被保険者証
など
※自治体によっては不要です。

注意ポイント

●高額介護サービス費用制度の支給は2年以内に申請を行わないと時効になります
●下記は対象になりません
・介護保険施設・ショートステイでの食費や居住費、日常生活費などの自己負担分
・特定福祉用具販売の費用
・住宅改修の費用

高額介護サービス費制度では介護保険施設・ショートステイでの食費や居住費は対象外になっています。
では、介護保険施設・ショートステイでの食費や居住費の負担を減らしたい場合はどうすればよいのでしょうか?
そこで役に立つのが負担限度額認定制度です。

負担限度額認定制度とは

介護保険施設・ショートステイでの食費と住居費は原則自己負担です。
しかし、その費用を軽減できるのが負担限度額認定制度です。
介護保険施設とは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設、介護療養型病床を指します。

負担限度額認定を受けられる対象は?

・世帯全員が住民税非課税の方
・預貯金等が、配偶者なしの場合は1000万円以下、配偶者がいる場合は2000万円以下の方
(どちらも世帯分離をしている配偶者も含む)

利用者負担段階

市町村から「介護保険負担限度額認定証」を交付してもらうことで、食費・居住費の自己負担額の上限が下の表のようになります。
こちらも高額介護サービス費制度と同じく、自己負担額の上限は世帯の所得に応じて、1~4段階に分けて決まります。
自己負担額認定制度の対象は第1~3段階の方になります。
また、対象者の細かい条件は市町村によって変わる場合があります。

対象の方 居室 自己負担額の上限/1日
居住費 食費
第1段階 ・世帯全員が住民税非課税で、老齢福祉年金受給者の方
・生活保護受給者の方
ユニット型個室 820円 300円
ユニット型準個室 490円
従来型個室 320円(490円)
多床室 0円
第2段階 ・世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と非課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下の方 ユニット型個室 820円 390円
ユニット型準個室 490円
従来型個室 420円(490円)
多床室 370円
第3段階 ・世帯全員が住民税非課税で、本人の課税年金収入額と非課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円を超える方 ユニット型個室 1,310円 650円
ユニット型準個室 1,310円
従来型個室 820円(1,310円)
多床室 370円
第4段階
(対象外)
・住民税課税世帯の方 ユニット型個室 1970円 1380円
ユニット型準個室 1640円
従来型個室 1150円(1640円)
多床室 840円(370円)

※第4段階は減免対象外になります。自己負担額は施設の平均を見て国が定めた基準費用額です。具体的な負担額は施設により異なります。

負担限度額認定制度の申請ポイント

この制度を利用するためには「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることが必要です。
各市町村のホームページに必要書類が記載されています。申請書などのダウンロードが可能な場合は、そちらを印刷・記入して役所に提出してください。
そのほか、介護保険負担限度額認定証の交付には、預貯金が確認できるものが必要になります。

申請に必要な物
・申請書
・同意書(資産などの照会について)
・全ての預貯金のコピー

預貯金に含まれるもの
・預貯金(普通・定期)
・有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
・金や銀など購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属(積立購入を含む)
・投資信託
・タンス預金
・負債(借入金・住宅ローンなど)

※市町村により異なる場合があります。詳しくは各市町村のホームページから確認できます。

世帯分離という選択肢

2世帯以上の家族が同居している場合、世帯分離することができます。

世帯分離とは、住民票に登録されている世帯を分離するという方法です。
親御さまの所得が低く市区町村民税が非課税の場合は、ご自身と親御さまを世帯分離することで、高額介護サービス費制度や負担限度額認定制度などの自己負担額の上限が下がり、介護費用を減らすことに繋がります。

ただし、この方法にはメリットとデメリットがあり、この方法を利用すれば誰でも必ずしもお得になるとは限りません。
節約法の1つの手段として知った上で、利用を慎重に検討することをオススメします。

世帯分離のメリット

・介護費用の自己負担額を軽減できる
高額介護サービス費や負担限度額認定制度の自己負担額の上限は世帯の所得によって決まります。
世帯分離することで、親御さまの所得が下がると、それに応じて自己負担額の上限も下がり、払い戻しの金額が増えるので、介護費用の削減することができます。
特に高額な費用のかかる施設に入所した場合は、世帯分離によって負担額が大きく変わります

・国民健康保険料が減る
国民健康保険料は前年の所得で計算されます。世帯分離をすることで保険料が減る可能性があります。
ただし、デメリットとして、負担額が増えるケースもあります。

世帯分離のデメリット

・国民健康保険料が増える
各世帯主が国民健康保険料を支払うことになるので、合計の負担額が増える場合があります。

・健康保険組合を利用できない
会社員の場合、世帯分離せずに親御さまを健康保険組合に扶養家族として加入した方が、お得になることがあります。

・夫婦で世帯分離には手間がかかる
夫婦の世帯分離は手続きが煩雑になる場合や、市町村によっては認められていないこともあります。

・世帯分離をすると介護費用の合算ができない
世帯に介護サービス利用者が複数いる場合、その方たちを別々の世帯に分離してしまうと利用料を合算して払い戻し申請をすることができなくなります。

・世帯分離は本来、介護費用の自己負担額軽減のための制度ではない
自己負担額軽減のための世帯分離は受理されないケースがあります。
理由を聞かれた場合は「生計を分けたい」などにとどめ、必要以上のことは言わない方が賢明でしょう。

世帯分離の申請ポイント

市区町村の役所に「住民異動届」を提出することで申請が可能です。
本人、世帯主、代理人の誰かが届け出をしてください。
代理人が手続きをされる場合、親族であっても委任状が必要になります。

申請に必要な物
・住民異動届
・本人確認書類(運転免許所、パスポート、マイナンバーカードなど)
・印鑑
・国民健康保険証(加入されている場合)
・委任状(代理人が手続きされる場合)

介護費用の減額の関連記事
>>>別の市町村の施設に引っ越す前に!知っておきたい「住所地特例制度」
>>>介護施設の費用が払えないとお悩みの方へ7つのポイント