認知症による暴力・暴言の5つの原因はコレ!対処法や予防策をご紹介

認知症の全知識

認知症が進行していくと「暴力・暴言」が出てしまうことがあります。
ご家族が介護をしている場合、どう対処すればいいのか困ってしまうことも多いでしょう。

この記事では、暴力・暴言の主な原因を探るとともに、対処法や予防策をご紹介していきます。

認知症の暴力・暴言の5つの原因

穏やかな性格だった人でも認知症になると暴力・暴言が出てしまうことがあります。
大切な家族から急に暴力を振るわれたり、聞いたこともないような暴言を吐かれたりしてしまうと、そのショックは計り知れません。

ここでは、暴言を言ったり暴力をふるってしまったりする主な原因を5つご紹介します。

原因1 脳の機能が低下して不安を感じているから

認知症で脳の機能が低下してくると、自分の今の状況が理解できにくくなります。
たとえば、これからどこに行くのか、何をされるのか、この人は信頼して良い相手なのかどうかなどをすぐに忘れてしまいます。

常にこのような状況が続いているのを想像すると、強い不安を感じるのは当然です。
強い不安から来るストレスから、結果的に暴言や暴力となって表れてしまうことがあります。

原因2 感情のコントロールがうまくいかないから

認知症の症状の1つに、「感情のコントロールが難しくなる」というものがあります。
感情を抑制する働きのある前頭葉が萎縮してしまうと、本来の性格とは関係なく、わずかなストレスを感じただけで感情が爆発してしまいます。

一度、パニックなり感情が爆発してしまうと、簡単には収まらず、介護者も慌てて大きな声で抑えようとしてしまいがちです。
このような介護者が焦る様子や大きな声を聞いて、余計にパニックになってしまうことがあります。

原因3 体調が悪いから

認知症になると、自分の体に不調を感じても周囲に伝えることが難しくなります。
たとえば、歯が痛い、お腹が痛い、便秘でお腹が苦しいなどの症状があっても、具体的にどうすれば良いのかがわかりません。

「なぜこんなに苦しいのか、痛いのか」が理解できず、介護者が診療に連れていこうとすると、「こんなに苦しいのにどこに連れて行こうとしているんだ」という怒りの感情が沸き、とっさに暴力が出てしまうケースもあるのです。

原因4 薬による影響

認知症の治療薬の中には、食欲不振や便秘・下痢などの副作用などの他に、暴力や徘徊、幻覚などの症状が強く現れることがあります。
また、認知症の治療薬以外に高血圧や糖尿病などの薬を併用している人も多いでしょう。

これらの薬の飲み合わせが悪いと、暴力や暴言などの副作用が出ることがあります。
薬の種類を変えたり、数を減らしたりすることで症状が改善する可能性がありますので、決して自己判断はせずに医師に相談の上調整してもらいましょう。

原因5 認知症の症状によるもの

認知症の種類により、暴言や暴力が強く現れやすいことがあります。

たとえば、脳血管性認知症では感情のコントロールが難しくなったり、前頭側頭型認知症では暴力的な行動が起こりやすいとされていたり、レビー小体型認知症では幻視から来る恐怖で暴力や暴言が現れやすいとされています。

暴言・暴力はどんな時に現れる?

前述のように暴力や暴言が現れる原因はさまざまですが、どんな時に現れやすいのでしょうか。

自尊心が傷づいた時

認知症の人は、自分の能力が低下してきているという自覚をもっている場合もあります。

そのようなもどかしさや不安を抱えている時に、過剰に心配されたり、長年の習慣を否定されたり、試されるような行動を受けると、自尊心が傷ついて暴力や暴言につながる可能性があります。

「1人で大丈夫?」「危ないからやめといたら?」など、相手を思いやって言ったはずの言葉が、相手を傷つけることになりかねないのです。

強い不安や恐怖を感じた時

認知症により脳の機能が低下すると、自分が置かれた状況が理解しにくくなります。
たとえば、入浴介助をするために服を脱がせようとすると、裸になることへの羞恥心、服を無理矢理脱がされると感じた恐怖などから、拒否したり暴れたりしてしまうことがあるのです。

このような時には、同姓の介護者が声をかけながら関わるなどの対応を心がけましょう。

認知症の暴言・暴力が起きたときの対応法

介護者にとって暴言や暴力を受けることはとてもショックなことです。
暴言・暴力が生じた時の3つの対応法をお伝えします。

原因を探る

まずは暴力や暴言の原因を探るため、本人の感情に寄り添いましょう。
落ち着いたタイミングで本人の話に耳を傾け、気持ちに寄り添うことで不安や怒りの原因がわかる場合があります。

暴力や暴言は認知症という病気の1つの症状ですので、介護者は感情的にならずできるだけ冷静に対応することが重要です。

心理的・物理的に距離を置く

認知症は病気だと頭では理解できていても、大切な家族から暴力や暴言を受けるととても辛いものです。
介護者が疲れてしまう前に、思い切って距離を取るのも大切な対応法です。

ほかに介護できる人がいれば代わってもらったり、ショートステイを利用したりするのも良いでしょう。
好きな音楽を聴いたり思い切って出かけたりして、リフレッシュできる時間をつくり、気持ちを落ち着かせることが重要です。

信頼できる相手に相談する

ほかの家族、ケアマネジャーやかかりつけ医などに積極的に相談しましょう。
認知症による暴力や暴言は、恥ずかしいことではありません。

すべて1人で抱え込んでしまわずに、第三者に話してみることで気持ちが楽になったり、新たな解決の糸口がみつかったりする可能性もあります。
同じ境遇に悩む家族会へも積極的に参加してみることをおすすめします。

認知症の暴言・暴力の予防と改善策

最後に、暴言や暴力の予防や改善策についてご紹介します。

関わり方を変えてみる

暴力や暴言は、わずかな不安やストレスから生じる場合があります。
大きな声で指示したり、力で無理矢理押さえつけてしまったりするのは、恐怖心を煽るため逆効果です。

たとえば、頻繁に声をかけることで不安の軽減に繋がったり、さすったり優しくタッチすることで安心感を持てたり、出来ることは本人に任せることで自信につながるかもしれません。
本人の意思を尊重するように関わり方を少し変えてみることで、不安やストレスを軽減できる可能性もあります。

介護者を変更する

1人で介護をしている場合、他の家族に手伝ってもらったり、介護ヘルパーなどに介護を任せたりしてみるのも1つの方法です。

特に介護ヘルパーは専門の教育を受けているので、介護に対する新たな発見があるかもしれません。
状況をわかってくれる顔なじみのヘルパーを作り、1人で介護をせず協力者を作りましょう。

体調を細かくチェックする

前述の様に体調不良から暴力・暴言へつながる場合があります。

排便や排尿がスムーズにできているのかを確認し、定期的にトイレに連れていくなど細かく体調を把握しておくことも、暴力や暴言の予防につながります。

医師に相談する

暴力や暴言が酷くなっていくようであれば、早目に医師に相談し、薬を変更してもらったり、興奮を抑える薬を処方してもらったりしましょう。

前頭側頭型認知症やレビー小体認知症などの認知症は、暴言や暴力といった症状が強く現れやすいと言われていますので、特に注意しておきましょう。

まとめ

「暴言や暴力は本人の意思ではなく、認知症の症状の1つ」と頭ではわかっていても、介護者にとってはとても辛いものです。

しかし、1人で全てを抱え込む必要はありません。
ケアマネジャーやかかりつけ医に相談すると気持ちも楽になり、最適な予防策を提案してくれるはずです。

まずはご自身の気持ちを大切にし、さまざまな専門家やサービスを利用しながら無理しすぎないようにしましょう。