ユニットケアの最大の特徴は個別ケア!従来型との違いやメリット・デメリット

老人ホーム・介護施設・介護サービスの種類

介護施設のスタイルとして、最近「ユニットケア」が注目されているのをご存知でしょうか。ユニットケアとは、施設入居者の個性や生活スタイルに合わせた介護を実現する方法の一つです。

そこでこの記事ではユニットケアについて、従来型との違いやメリット・デメリットなどを詳しくお伝えします。

ユニットケアとは?効率優先から個別ケアへ

ユニットケアとはどのようなものなのでしょうか。ユニットケアが求められるようになった時代背景とともにご紹介します。

ユニットケアとは?

「ユニットケア」とは、入居者一人ひとりの個性や生活リズムに合わせてその人らしく暮らしていけるようにサポートする介護方法を指します。

ユニットケアでは、介護施設内に入居者のプライバシーが守られる「個室」と、他の入居者や介護スタッフと交流するための「居間」があることが大きな特徴です。

基本的に介護スタッフは固定されるため入居者との信頼関係を築きやすく、従来型と比較して柔軟な対応が可能となっています。

では、なぜユニットケアが注目されているのでしょうか。

効率優先から個別ケアが求められる時代へ

国内に介護施設が広まった1960年代には大家族も一般的でしたが、最近では家族一人一人が独立した部屋を持つなど、生活様式が大きく変化しています。こうしたことから、介護施設でも「効率優先」から「尊厳のある個別ケア」が重視されるようになってきました。
そして、こうした考えのもとに浸透しつつあるのがユニットケアです。実際に、新たに建設されるでは、介護施設ユニットケア型を導入する施設増えつつあります。

従来型とユニットケア型の違い

次に、従来型の介護施設と、ユニットケア型の介護施設との違いについてご説明します。

「個室」と「居間」がある

ユニットケア型施設の最大の特徴は、「個室」と「居間」の両方があることです。

居住空間として個室を設けることで、一人でリラックスする時間や場所を確保できるほか、たとえば脱着衣やおむつの交換など他の入居者の視線を気にせず行えるなど、入居者の「個人の尊厳」を守ることにもつながります。

一方で、共用スペースを設けることで、入居者同士や介護スタッフとの交流が生まれやすくなるというメリットがあります。

よく知った介護スタッフがサポートしてくれる

ユニットケア型の施設では、居間を囲うように10室以下の入居者の個室が配置されています。そして、介護スタッフは一つのユニットごとに決まった人が配置されます。

介護スタッフが固定されることで入居者の人となりを把握でき、一人ひとりの状況にあわせたケアを行いやすくなり、入居者の動向やわずかな体調の変化にも気づきやすくなります。

ユニットケアのメリット・デメリット

メリット1.一人ひとりの状況に合わせた個別ケアができる

決まった介護スタッフが入居者の介護にあたることができるため、一人ひとりの状況に合わせた「個別ケア」が可能です。

従来型とは違い、ユニットケアでは入居者の尊厳を保つことを重視しています。

メリット2.ほかの入居者とコミュニケーションが取りやすい

ユニットケアでは「個室」でプライバシーを確保しながらも、ほかの入居者やスタッフと交流するための「居間」があるため、コミュニケーションが取りやすいのも大きなメリットです。

また、毎日同じメンバーと顔を合わせるため、信頼関係を築きやすくなります。

メリット3.プライベートを確保できる

日々の介護には、脱着衣、おむつの交換などプライバシーに関わる場面も多々あります。
そんなときも、ユニットケアではすべて個室で行えるため、プライバシーも確保できます。

また、入居者によっては「今日は1人でじっくり音楽を聴きながら本を読んで過ごしたい」などの時もあるでしょう。そんな場合にも、室があることで、プライベートの時間と空間が確保でき、その人らしく過ごすことができます。

メリット4.施設内での感染リスクを低減できる

高齢者にとって感染症は非常に怖いものです。万が一、施設内で感染症やインフルエンザなどが発症した場合、従来型の多床室では施設内感染のリスクが高くなります。

一方、個室のあるユニットケアでは個室で過ごすことができるため、感染リスク低減につながります。

デメリット1.従来型と比較して費用が割高

一方、デメリットもみていきましょう。まず、ユニットケア施設は従来型の施設と比較して、建設コストがかかります。また、個室での生活になるため、光熱費の負担も大きくなり、入居者が負担する費用が割高になるというデメリットがあります。

デメリット2. 人によっては孤立感を感じることも

ほかの入居者やスタッフと交流するための「居間」があるものの、日々の生活は「個室」で行います。そのため、常に誰かと一緒にいたいと考えるような入居者の場合、個室にいることで孤立感を感じてしまうことがあります。

グループケアとユニットケアの違い

ユニットケアに近い存在として、グループケアというものがあります。
ここではグループケアとユニットケアの違いについて詳しく説明します。

グループケアの方が、比較的入居しやすい

グループケアもユニットケアと同様、少人数のグループ単位で生活するスタイルのことを指します。
定員基準などはないため、グループケアの方が比較的入居しやすいといえます。

グループケアの方が、入居費用が抑えられる

グループケアは建物の構造・設備に関わらず、グループ分けして介護サービスを行うため、施設のリフォームなどが必要ありません。そのため、ユニットケアに比べて入居費用が抑えられる傾向にあります。

ユニットケアの方が、プライバシーが守られている

グループケアでは個室があるわけではないため、ユニットケアの方が、プライバシーが守られているといえるでしょう。

ユニットケアの課題

ここまで紹介してきたように、ユニットケアにはさまざまな利点があります。一方で、普及するまでにはまだまだ課題も残されています。

課題1. 施設の用意に時間がかかる

国を挙げてユニットケアが推進されていますが、従来の特別養護老人ホームがユニットケアに移行する場合、間取りや設備を改修する必要があります。具体的には、個室や居間が必要になるため、場合によってはリフォームや建て替えが求められるケースも出てきます。

そのため、ユニットケアを導入する施設はまだ施設全体の3割程度というのが現状です。

課題2.費用がかかる

複数で住居費用や光熱費を割っていた従来の多床室と比べ、ユニットケアは個室になることから、入居者の月々の負担も大きくなります。

収入や年金の受給額によって一部減免措置はあるものの、これら諸費用は介護保険の適用範囲外です。そのため金銭的に余裕のない入居者やその家族にとっては、大きな負担になってしまいます。

課題3.介護の質にばらつきが出る可能性がある

ユニットケアの特徴として、決まった介護スタッフによる介護が受けられるという点が挙げられます。

少人数ならではの手厚いケアを受けられるというメリットもあるものの、経験の浅い職員がユニットリーダーに就いた場合などに介護の質の低下が懸念され、介護の質にばらつきが出る可能性も考えられます。

ユニットケアはさまざまな介護施設で提供されている

高齢者の尊厳を守るケアとしてユニットケアは注目されており、特別養護老人ホームでもユニットケアの整備が推奨されています。

また、認知症の方のケアを行うグループホームでは、基本的に全てユニットケアとなっています。

認知症の方や介護度の重い方にも、一人ひとりの状況に合わせた介護ができるため、介護老人保健施設(老健)や有料老人ホームでもユニットケアを導入するところが増えてきており、今後も増えていくと考えられます。

認知症の方や介護度の重い方ならばユニットケアがおすすめ

ユニットケアでは、少人数でいつも同じメンバーで同じ介護スタッフによる介護が受けられます。この環境は認知症の方にとって気持ちの安定につながります。

また、寝たきりの方にとっても、介護スタッフがすぐそばにいて居間から人の話し声が聞こえる家のような環境は安心感が持て、孤独感を和らげる一助になるでしょう。

そのため、ユニットケアは認知症の方や介護度の重い方におすすめです。

一方で、介護を多く必要としない自立心の高い入居者の中には、ユニットケア特有の濃い人間関係を苦手に感じる方もいるため、入居者の希望に合わせた施設探しが重要といえます。

まとめ

ユニットケアは、「尊厳のある個別ケア」という理想を実現したかたちといえます。

しかし、誰にとってもユニットケアが最適ということではなく、介護度や性格により最適な介護施設は異なります。

仮に施設選びで迷った場合には、「ユニット型特養」などのショートステイを利用して確認してみるのも良いかもしれません。いろいろな施設を見学した上で、入居者が自分らしくいきいきと過ごせる介護スタイルを選びましょう。