高齢者への支援のポイント
介護職に就くとさまざまなことに意識を向けなければなりません。
食事や入浴のサポート、そして最も重要なのが「排泄介助」です。
身体が不自由な高齢者だと、1人で排泄するのが難しいと感じることが多々あります。
そこで本記事では、排泄介助のポイントや目的別の排泄介助の正しい手順などを紹介していきます。
そもそも排泄介助とは?
排泄介助とは、自分だけの力で排泄行為が難しい方のためにサポートしてあげるのが主な仕事です。
- 1人でトイレまで向かうのが難しい
- 排泄機能に障害を抱えている
上記のような方のために、その人ができないことだけをサポートします。
排泄介助といっても、全てを行うわけではありませんので注意が必要です。
- トイレ介助
- ポータブルトイレ介助
- おむつ介助
- 便器・尿器を使用する介助
ここでは上記の目的別ごとに合わせて、各排泄介助について紹介していきます。
トイレ介助
トイレ介助とは、対象者がトイレに行くまでを介助することです。
排泄機能自体は特に問題がなく、単に身体が不自由な方のためにトイレまでの道のりをサポートします。
ポータブルトイレ介助
一般的なトイレとは異なり、椅子と排泄用のバケツが一体となったものがポータブルトイレです。
ポータブルということで持ち運びが可能なので、トイレまで移動が困難な方は自室に設置していることもあります。
日中は介護職員がトイレに行く道のりまでサポートし、夜はポータブルトイレを使うという方もいます。
おむつ介助
尿意や便意を感じにくく、失禁してしまう方のためにおむつ介助をします。
履くだけでそのまま排泄できるので、吸水パッドやアウターを併用して使用することもあります。
便器・尿器を使用する介助
寝たきりの状況だと、自力で身体を起こすことが困難です。
そんな方のために、寝た状態でも排泄ができる容器が存在しています。
男性または女性によって容器の形状は異なり、使用後に洗浄や消毒をします。
排泄介助のポイント6つ
ここでは、排泄介助のポイントを解説していきます。
先述したように、排泄介助において全てのことをサポートする必要はありません。
排泄行為はプライバシーの1つでもあるので、介護職員であっても下の世話をされることに抵抗がある方も少なくありません。
- 自尊心を傷付けない
- 水分補給をこまめにしてもらう
- 排泄サイクルを把握する
- 自分でできることはやってもらう
- 利用者を急かしたり責めたりしない
- プライバシーを確保する
上記6つの排泄介助のポイントを紹介していきますので、適切な排泄介助の知識を深めましょう。
自尊心を傷付けない
先ほども触れた通り、たとえ介助であっても排泄のサポートをしてもらうことを嫌がる方もいます。少なからず快く思わないことの方が多いので、できる限り自尊心を傷付けないようにしましょう。
身体が不自由だったり、上手く排泄ができなかったりということもあります。
床に尿をこぼしてしまうこともあるので、嫌な顔をしたり責めたりするようなことは絶対にしてはいけません。
水分補給をこまめにしてもらう
トイレに行く回収を増やすことを目的に、定期的に水分補給してもらいましょう。
トイレの失敗が続いたりすると、トイレに行く回収を減らすために水分をとらなくなる方もいます。水分補給を減らすと脱水症状などの原因になります。
水分補給を拒む方には、リスクをしっかりと説明することが大切です。
排泄サイクルを把握する
- 入浴前の排泄
- 食事後の排泄
上記は、人によって排泄のサイクルが異なります。
対象者の排泄サイクルを把握することで、スムーズに介助が可能になります。
介護職員同士で連携が取りやすくなるので、排泄のサイクルは把握しておくのもおすすめです。
自分でできることはやってもらう
利用者が自分でできることまで無理に介助していたら、自尊心を傷付けるケースにつながります。
- トイレまでの道のりは自分で行ってもらう
- 逆に排泄以外のことをサポートする
上記のように、身体の機能があるうちに自分でできることをしてもらうことで、介助する側の負担も減らせます。
利用者を急かしたり責めたりしない
排泄がなかなかできない方は多いので、トイレに座ってから時間がかかっても急かすようなことはやめましょう。
プレッシャーを感じて余計に排泄ができなくなることもあり、「急かさせるかもしれない」という状況に陥り、次第に「トイレに行きたい」と言い出せなくなる方もいます。
急かさず気長に待ってあげるか、必要であれば腹部を優しくさすってあげるのがおすすめです。
プライバシーを確保する
排泄している様子を見られるのはプライバシーの心外です。
対象者が必要だと感じれば「手伝ってほしい」と伝えてくれます。
排泄が長引く方なら、トイレから離れて待つなどしましょう。
排泄介助の選び方4つ
排泄介助の選び方を押さえるためには、「できること」と「できないこと」の境界を把握することが前提です。
排泄介助のポイントでも紹介した通り、身体が機能しているうちに自分でできることをしてもらうことで介助する側は負担を軽減することが可能です。
ここでは、以下4つの選び方を紹介します。
- トイレまで歩ける場合
- 起き上がることができる場合
- 姿勢を変えることができる場合
- 寝たきりの場合
それぞれ介助方法によって適切な選び方があるので、チェックしていきましょう。
トイレまで歩ける場合
高齢者が自分の力でトイレまで行ける方は、一般的なトイレを使用してもらうようにしましょう。
ポータブルトイレの利用を当たり前にしてしまうと、歩くという動作が疎かになり筋力低下の原因となります。
自分でトイレまで行って排泄ができることを認識させ、自信につなげることが可能です。
起き上がることができる場合
横になっている状態から自力で起き上がることができても、歩行が難しいという方もいます。
その場合は、ポータブルトイレなどの利用がおすすめです。
ベッド近くに設置が可能なので、歩行を伴わずにすぐ排泄することが可能です。
姿勢を変えることができる場合
高齢者が自力で姿勢を変えることができるなら、先ほど紹介したポータブルトイレを利用するのがおすすめです。
姿勢は変えられるものの起き上がるのが難しい場合は、寝たままの状態でも排泄可能な便器や尿器を使用するのが最適です。
容器は高齢者本人が自分で持った方が、自尊心を傷付けなくて済みます。
寝たきりの場合
姿勢が変えられず、トイレまで歩行するのも難しい寝たきりの状態だと、先ほど紹介したポータブルトイレの利用は難しいといえます。
寝たきり状態であれば、寝たままの状態でも排泄可能な便器や尿器を使用するか、おむつを着用してもらうのがおすすめです。
【種類別】正しい排泄介助の手順
ここからは、正しい排泄介助の手順を種類別に解説します。
排泄介助によっては、排泄するまでの過程が必要になってきます。
- トイレ介助の手順
- ポータブルトイレ介助の手順
- おむつ介助の手順
- 便器を使用する介助の手順
- 尿器を使用する介助の手順
それぞれ正しい排泄介助の手順を踏まえて、適切なタイミングで排泄介助をしましょう。
トイレ介助の手順
トイレ介助では、まずトイレに行きたいかどうかの声かけを行います。
高齢者がトイレに行きたい場合は、トイレまでの道のりに障害物などがないか確認しましょう。
トイレに到着したら、可能な限り自分でできることは本人に任せてあげてください。
できないことは素早くサポートすることで、羞恥心を気遣えます。
排泄中は終わるまで外で待機し、排泄後は高齢者ができないことをサポートして終了です。
ポータブルトイレ介助の手順
ポータブルトイレも、基本的には通常のトイレと同じ手順になります。
異なる点としては、排泄する際に下腹部にタオルなどをかけてあげるとプライバシーを配慮できます。排泄後も通常のトイレと同じで、できないことだけをサポートしてあげます。
排泄したら手や指を消毒し、ベッドまで安全に戻しましょう。
ポータブルトイレは排泄したものがバケツに入っているので、排泄物をトイレに流してください。
バケツを洗浄液で洗浄し、排泄した部屋の床などをアルコールで消毒して終了です。
おむつ介助の手順
おむつは定期的に交換する必要があることを高齢者に伝えておきましょう。
おむつをスムーズに交換するためには、高齢者の協力が必要です。
腕を組んでもらい、新しいおむつとパッドを広げます。
おむつ交換する際は、動作1つ1つに声かけしながら進めていきます。
陰部をおしり拭きなどで清潔にし、皮膚に炎症などが起きていないか確認してから清潔なおむつを履かせてあげてください。
万が一かぶれなどができている場合は、塗り薬などを塗ってあげてから履かせます。
便器を使用する介助の手順
便器を使用する場合、仰向けの状態にしてお尻の下に便器を入れます。
排泄の様子が見えないようにお腹にタオルをかけることで、プライバシーへの配慮が可能です。
排泄を待って、排泄後は陰部をキレイにして排泄物をトイレに流します。
尿器を使用する介助の手順
尿器にはさまざまな素材が存在しているので、高齢者の好みのものを使用しましょう。
使用前は汚れや飛び跳ねを防止するために、容器の中にペーパーなどを敷くと安心です。
高齢者を仰向け(男性の場合は横向き)にして、容器を陰部にあてて排泄させます。
この時、容器は高齢者本人に持たせることでプライバシーに配慮できます。
排泄時はお腹あたりにタオルをかけて、排泄後は陰部を清潔にして容器に入った排泄物をトイレに流します。
排泄介助に関するよくある質問
最後に排泄介助に関するよくある質問を紹介していきます。
ここで紹介するよくある質問は、以下の通りです。
- トイレ介助のヒヤリハットの事例はどんなものがある?
- トイレ介助の際の転倒原因と防止対策は?
- トイレ介助の立位保持に使える福祉用具って何?
それぞれチェックしていきましょう。
トイレ介助のヒヤリハットの事例はどんなものがある?
トイレ介助時によくあるヒヤリハットとしては、以下がよくある事例です。
- 車移動からトイレに移動する際に、ドアに足が挟まった
- 目を離した隙に、高齢者が1人で清掃して転倒してしまった
- 床が濡れていて滑って転倒
上記のように、思わぬところに危険は隠れていたりするため、1つ1つ確認をしながらトイレ介助するようにしましょう。
介護職員同士でも密に連携を取り、少しでも回避できるように注意しましょう。
トイレ介助の際の転倒原因と防止対策は?
転落や転倒を防止するには、高齢者のことをよく観察するのが得策です。
例えば認知症患者をトイレ介助する場合、排泄時の体勢が不安定なことがほとんどです。
その場合は近くで見守ったり、排泄時に床が濡れていないかなどを確認したりすることで回避が可能です。
手すりやアームレストなどを活用するのもおすすめです。
トイレ介助の立位保持に使える福祉用具って何?
トイレ介助時の立位保持に使える福祉用具とは、手すりや車椅子のアームレストなどを指します。
支えがあると、介助する側も高齢者も気持ち的に安心できます。
まとめ:正しい排泄介助は生活の質の変化にもつながる
排泄介助のポイントや、目的別の排泄介助の正しい手順などを紹介してきました。
トイレ介助には目的別にさまざまな手順が存在しています。
高齢者に合わせてトイレ介助する方法が異なるため、さまざまな方法を覚えておくことで臨機応変に対応できるようになります。
配慮する部分はたくさんありますが、高齢者とのトラブルを回避することにもつながるのでしっかりとトイレ介助の方法を覚えておくようにしましょう。