要介護認定とは?8つの区分や審査を受ける流れ、注意点を詳しく解説

高齢者の病気・症状

「最近、家族の体の動きがつらそう…何かサービスを入れた方がいいのかな」「家族が認知症と診断されたけど、要介護認定って受けた方がいいの?」

 

高齢の家族がいると、どのようにしたら介護保険サービスを受けられるのか、要介護認定に必要な手続きは何かと悩まれる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、介護保険サービスを受ける上で必要になる要介護認定について、そもそも要介護認定とは何かをお伝えした上で、要介護認定の手続きの流れや具体的な方法について、わかりやすく解説していきます。

 

【この記事でわかること】

●  要介護認定とは?

●  介護認定の区分とそれぞれの状態

●  要介護認定審査を受ける際の流れ

●  要介護認定の注意点3つ

 

要介護認定とは?

要介護認定とは、日常生活の中でどの程度介護が必要かを客観的に判断し、数値で表したものです。

 

介護保険サービスを受けるためには、要介護認定を受け、要支援もしくは要介護のどちらかに認定されなければなりません。

 

要介護認定では、介護を必要とする度合い(介護度)を査定し、その結果によって自立、要支援1〜2、要介護1〜5の8つの区分に対象者を分類します。

 

  • 要支援
  • 要介護

 

それでは、要支援・要介護とはどのような状態を指すのでしょうか。

 

要支援

要支援とは、基本的には一人で日常生活を送ることができますが、部分的に介護が必要な状態です。

 

要介護

要介護とは、立つ、歩くなどの運動機能、思考力・理解力といった認知機能に低下が見られ、結果として日常生活に支障が生じ、介護が必要となる状態です。

 

要介護認定の8つの区分

先に述べた通り、要介護認定を受けると、以下のいずれかに分類されます。

 

  • 自立
  • 要支援1
  • 要支援2
  • 要介護1
  • 要介護2
  • 要介護3
  • 要介護4
  • 要介護5

 

ここでは、以上の要介護認定の8つの区分について、それぞれがどういった状態を示すのか詳しく説明していきます。

 

自立

 

自立とは、一人で日常生活を送ることができ、特別な援助を必要としない状態を指します。

 

自立に認定された場合は、介護保険サービスを受けることはできません。

要支援1

要支援1は、日常生活での動きを担う能力がわずかに低下し、何らかの支援が必要となる状態です。

 

食事やトイレなどは一人で行えますが、屈んだ状態で行う掃除や高い所にある物を取るといった一部の動作に、見守りや支援を必要とします。

 

要支援2

要支援2は、日常生活での動きを担う能力が一部低下し、部分的な援助が必要となる状態です。

 

要支援1同様、食事やトイレなどは一人で行えますが、立ち上がったり歩いたりする際に、支えを必要とします。

 

要介護1

要介護1は、一人で行えることもありますが、身の回りのことで部分的に援助が必要となる状態です。

 

トイレや入浴に一部援助が必要となったり、立ち上がったり歩いたりする際にも支えが必要になります。

 

また、理解力の低下など、認知機能面でも能力の低下が目立ち始める段階です。

 

要介護2

要介護2は、食事やトイレ、入浴など、日常生活を送る上で多くのことに援助が必要となる状態です。

 

立ち上がったり歩いたりする際に支えを必要とする他、身だしなみを整えたり掃除をしたりといった生活全般に見守りや援助を必要とします。

 

要介護1同様、認知機能面の能力低下も見られる段階です。

 

要介護3

要介護3は、食事やトイレ、入浴をはじめ、日常生活において全面的に援助が必要となる状態です。

 

足腰はより不安定になり、自力で立ち上がることが難しく、車椅子での移動介助が必要になることもあります。

 

認知機能面の能力低下も進み、周囲の状況理解などに支障をきたすこともあるでしょう。

 

要介護4

 

要介護4は、日常生活において重度の介護を要する状態です。

 

立ち上がったり歩いたりすることは難しく、座っている姿勢を自力で保つことも難しくなってきます。

 

認知機能面の能力低下は更に進み、全般的な理解の低下が見られることもあるでしょう。

 

要介護5

 

要介護5は、日常生活のほぼ全てにおいて最重度の介護を要する状態です。

 

自力での起き上がりや姿勢の保持も難しく、多くの時間を寝たきりで過ごすようになります。

 

認知機能面の低下も著しく、意思の疎通や全般的な理解が困難となることもあるでしょう。

 

要介護認定の審査を受ける流れ

要介護認定を受け、介護保険サービスを使用するためには、以下の流れで公的な審査を受ける必要があります。

 

  • 審査に必要な書類を揃える
  • 市区町村か地域包括支援センターの窓口に申請する
  • 訪問調査を受ける
  • 主治医に意見書を作成してもらう
  • 一次判定・二次判定の審査を待つ
  • 結果が通知される

 

ここでは要介護認定審査の手続きについて、流れに沿って詳しく解説していきます。

 

審査に必要な書類を揃える

 

要介護認定を受けるために必要な書類は、以下の通りです。

 

  • 申請書
  • 介護保険被保険者証(65歳以上の場合)
  • 健康保険被保険者証(64歳以下の場合)
  • マイナンバー
  • 顔写真付き身分証明書

 

申請書は市区町村窓口での受け取りや市町村ホームページでのダウンロードで入手できます。

 

また、審査に必要となる書類は各市区町村によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

 

市区町村の窓口か地域包括支援センターに申請する

 

必要書類が揃ったら、自治体の窓口に申請します。

 

要介護認定の窓口は、お住まいの市区町村の『福祉課』、または地域包括支援センターです。自治体によって名称は異なりますが、役所の総合窓口に相談することで案内してくれます。

 

訪問調査を受ける

 

要介護認定の申請後は、役所や福祉法人の認定調査員による訪問調査が行われます。

訪問調査とは、認定調査員が実際に介護認定を受ける人の自宅を訪問し、心身の状態や日常生活、家族や住まいなどについて聞き取りをすることです。

訪問調査では以下の事柄について本人、家族から聞き取りを実施します。

 

  • 身体とその動作の様子
  • 日常生活とその介助の様子や状況
  • 意思の疎通など認知機能の様子
  • 物忘れなど心や行動の様子
  • 社会生活への適応状況
  • 医療を受けている状況

 

調査では、普段の様子や介護の状況を認定調査員に正確に伝えることが大切です。その場で焦らないように、あらかじめメモなどに上記の項目をまとめておくと良いでしょう。

 

主治医に意見書を作成してもらう

 

訪問調査後は、認定調査員から主治医へ意見書の作成を依頼します。医学的な観点から、どの程度介護が必要かを判定するためです。

 

主治医がいない場合は、市区町村が指定する医療機関への受診が必要となり、その後意見書が作成されます。

 

一次判定・二次判定の審査を待つ

訪問調査、主治医の意見書をもとに要介護認定の審査が実施されます。審査は二段階で行われ、一次判定、二次判定を経て、最終的な介護認定が下されます。

 

一次判定は、コンピューターによる判定です。主治医による意見書、訪問調査の内容をコンピューターに入力し、判定を行います。

 

二次判定は、専門家間で行われる会議です。一次判定の結果をもとに保健・医療・福祉の各分野の専門家が協議し、要介護認定の区分が決まります。

 

結果が通知される

 

上記の流れを経て、自立、要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定されます。結果の通知は、通常申請を行ってから約1ヶ月程です。

要介護認定の注意点3つ

 

介護認定を受け、要支援・要介護に認定されることによって初めて介護保険サービスを利用できるようになります。

 

しかし、サービスを利用していく中で、注意しておかなければならない点もいくつかあります。

 

  • 認定結果には有効期限がある
  • 要介護認定は更新が必要
  • 認定結果によって利用できる介護保険サービスが変わる

 

期限切れでサービスを受けられなくなってしまった、自己負担額が変わってしまったなどという事態にならないよう、一つずつ確認していきましょう。

認定結果には有効期限がある

認定結果は、新規は半年間、更新認定は1年間有効です。有効期限を過ぎるとサービスの利用ができなくなってしまうため、定期的に更新する必要があります。

 

要介護認定は更新が必要

 

更新する場合は、満了の前日から60日前までに必ず申請を行いましょう。更新の際も認定調査員による訪問調査があります。

認定結果によって利用できる介護保険サービスが変わる

 

要支援・要介護によって、利用できるサービスは異なります。

 

要支援で利用できるのは、介護予防サービスです。要介護状態になるのを予防し、状況の悪化を防ぐ目的で、マッサージやリハビリなどのサービスを利用できます。

 

要介護で利用できるのは、介護サービスです。介護サービスでは、日常生活を送る上で必要な介護や援助を受けることができます。

 

要介護認定に関するよくある質問

最後に、要介護認定に関するよくある質問について回答していきます。

 

ここまで要介護認定について解説してきましたが、「介護認定って手続きも複雑で、イメージするのが難しい」と感じる方も多いと思われます。

 

  • 本人が申請できない場合はどうすればいい?
  • 要支援2と要介護1は何が違う?
  • 認定調査結果に納得できない場合は?

 

よくある質問も確認しておくことで、要介護認定に対する複雑なイメージを少しでも減らしていきましょう。

 

本人が申請できない場合はどうすればいい?

 

入院や重度の認知症などの理由で本人が申請できない場合、代理人による手続きが可能です。

 

家族がいる場合は、家族が代わりに申請の手続きを行うことができます。

 

身寄りがないなどの理由で家族のサポートを受けられない場合は、地域包括支援センター、居宅介護支援業者、入居している介護保険施設のいずれかで、ケアマネージャーが申請の手続きをするのが一般的です。

 

要支援2と要介護1は何が違う?

 

要支援2と要介護1の違いは少しわかりにくいですが、基準は『認知症の疑いの有無』『状態変化の可能性』の2つです。

 

思考力や状況理解に支障をきたし、認知症が疑われる場合、要介護1に分類されます。また、医師により今後心身の状態が大きく変わる可能性があると判断された場合も、要介護1の分類となります。

 

したがって、この2つの基準の内どちらか1つでも当てはまれば、要介護1に認定されるのです。

 

認定調査結果に納得できない場合は?

 

認定調査の結果に納得できない場合、まずは市区町村の役所に相談しましょう。調査結果の理由について、教えてもらうことができます。

理由を訊いても納得できない場合は、各都道府県に設置されている『介護保険審査会』にその旨を申し立てることが可能です。

まとめ:要介護認定を知って今後の生活を考えよう

 

今回は要介護認定について解説しました。

 

介護認定の基準や手続きの流れを知っておくことで、今後もし介護保険サービスが必要となった場合、スムーズに申請手続きを行うことができます。

 

要介護認定を伴った今後の生活を考えるためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてください。