老人ホームの人間関係トラブル、どう対処する?

介護の問題・トラブル

人が集まる場所では人間関係のトラブルはつきものです。
一般的に人は年齢を重ねると頑固になっていくといわれており、老人ホームでは人間関係のトラブルが起こりやすいとされています。

この記事では、老人ホームでの人間関係トラブルの具体例や原因、対処法についてご紹介します。

人間関係トラブルはどんなものがあるか

老人ホームで起きる人間関係のトラブルは多岐に渡ります。
ほかの入居者から陰口を言われたり、仲間外れにされたりするケースだけでなく、金銭の貸し借り、恋愛関係のもつれ、家庭環境への嫉妬からくる問題行動などです。

また、認知症の入居者がいる場合は、進行するにつれ幻覚や妄想などの症状が生じ、他の入居者を泥棒扱いしたり、他人の部屋に勝手に侵入して物を持ち去ったり、暴言や暴力をはたらいてしまうこともあります。

トラブルの原因は?

人間関係のトラブルの原因を突き詰めると、入居者のつらさや寂しさが根幹にあるとされています。
今まで一緒に住んでいた家族と急に離れて生活することになったり、慣れ親しんだ土地とは違う地域の施設に入居することになったり、配偶者と死別したり、社会的立場を失ったり、孤独感や喪失感を抱えている入居者はたくさんいます。
このような寂しさが人間関係のトラブルを招く行動を引き起こす原因とも考えられています。

また、生活習慣や社会的地位による生活環境の違いもあり、考え方が異なるのは当然です。
異なる考え方を受け入れられず、言い争いになったり敵意を持ったりすることもあります。

入居者同士のトラブルを回避するポイント

人生の終末期を過ごすことになるケースが多い老人ホーム。穏やかな日々を過ごして欲しいものです。
ここでは、入居者同士のトラブルをできるだけ回避するためのポイントをお伝えします。

家族ができるトラブル回避策

入居者と介護職員の関係性が良いかどうかチェックする

まずは老人ホームに入居する前に、トラブルが発生してしまいそうな施設を避けることが重要です。
入居者と介護職員の関係性が良いかどうかに着目して見学しましょう。
職員が入居者の話にしっかり傾聴できているか、入居者が穏やかな表情で気持ちよく過ごしているかなど、コミュニケーションの質が重要です。体験入居などを利用するとよりわかりやすくなります。

入居者同士のトラブル事例について職員に質問する

人間関係のトラブルが起こった場合に事態が大きくなってしまう施設と、事態が大きくなる前に対処できている施設があります。

この違いは入居者への「見守りの目」です。
入居者同士の小さないざこざや、わずかな心理状況の変化にも気づき、スタッフ同士で情報共有ができている施設は、事態が大きくなる前に対処をしています。
それを見分けるためには、見学の際に、入居者同士のトラブル事例について職員に質問してみましょう。
質問をした際に、具体的な事例とその時の施設の対処方法についてしっかり説明ができる施設は、その都度、職員間で情報共有されているでしょう。
一方、隠ぺいしたり、返答が曖昧だったりする場合は、施設として人間関係のトラブルに関心が薄い可能性があります。

また、スタッフの認知症の入居者への理解度や介護力が高ければ、トラブルの未然防止へと繋がります。
認知症介護の研修の有無や、認知症のトラブル事例・対処方法なども確認しておきましょう。

頻繁に施設に行く

そして人間関係のトラブルを未然に防ぐために家族がすぐにできることは、「できるだけ施設に通い、入居者の話を聞くこと」です。
頻繁に家族が訪ねてくる入居者と自分を比較してしまい、寂しさから意地悪な行動を取ってしまうことがあるからです。

また、頻繁に施設に通っていると、いじめに合っていそうな様子にもすぐに気づけます。
後ほど詳しくお伝えしますが、変化に気づいた場合は、すぐに施設に伝えましょう。
本人に聞いた話を感情抜きで客観的に伝え、施設側に調査と対処を依頼し、一緒に解決していく姿勢が重要です。

入居者本人の性格について情報共有しておく

入居前には、本人の性格について出来る限り伝えておくのが大切です。
人に対する好き嫌いが多い・些細な事で怒りやすいなど、トラブルを起こしやすい性格の場合には事前に伝えておくと、食事時の席や部屋の配置なども配慮してくれる可能性があります。

トラブルが発生したときはどうする?施設側はどんな対応をしてくれる?

どれだけ事前に注意していたとしても、人間関係のトラブルを完全に防ぐことはできません。
ここでは、老人ホームでトラブルに巻き込まれてしまった場合の対処法についてご紹介します。

トラブルが発生した時、家族ができること

人間関係のトラブルに巻き込まれてしまった場合は、すぐに信頼できる職員や施設長などに相談しましょう。
施設側は異変に気付いていたとしても、様子を見ている可能性もあります。
家族からの相談があることで、施設側も何かしら行動を起こしてくれるでしょう。

「相談することで入居者が肩身の狭い思いをしてしまうのではないか」と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、事態が大きくなって本人が傷つき、帰宅願望が強くなってしまう前に相談し、早めに対処してもらうことが重要です。

家族が本人の気持ちに寄り添い、客観的に事実のみを伝えることで、施設側も仲裁に入りやすくなります。

施設側ができること

人間関係のトラブルが起こってしまった場合、施設側ができることは当事者同士の距離をとることです。
食事やレクリエーションの際の座席配置や、入浴の時間をずらして当事者が合わないように工夫してくれることが多いようです。
また、状況によっては、どちらかの部屋を変更する場合もあるので、施設側に確認してみても良いでしょう。

施設側の対応に納得できない場合は?

人間関係のトラブルを施設に相談しても、時間的に余裕が無かったり、そもそも関心が低かったりする場合には、十分な対応が期待できない時もあります。

もし、施設の対応に満足できない場合は、市区町村の介護保険課の担当窓口や都道府県の国民健康保険団体連合会に相談することが可能です。
相談する場所については契約書や重要事項説明書に「苦情相談窓口」として記載されていることが多いため、契約前にしっかりと確認しておきましょう。

他の施設への住み替えも考えるべきなのか

家族が入居者本人の気持ちに寄り添い話を聞いたり、施設側がしっかりと対応してくれたりしたとしても、入居者の気持ちが深く傷つくことには変わりありません。
このままその施設に入居する人もいれば、気持ちが沈んでしまって穏やかに暮らすことができなくなる場合もあるでしょう。
このように本人の心身状態の悪化が激しくなるなどの影響が見られる場合には、ほかの施設へ住み替えることも考えざるを得ません。

ただ、若い人にとっても引っ越しは環境の変化が大きいものです。
適応能力が衰えている高齢者にとって、環境の変化によるストレスはかなり大きなものになってしまいます。心身の負担を考えるとできる限り転居はせず、事態を収めるのが望ましいでしょう。

まとめ

どれだけ注意したとしても、老人ホームにおける人間関係トラブルは大なり小なりあると思っていた方が良いでしょう。
入居者の小さな変化を見逃さず、いかに早い段階で対処をしていくかが重要です。
そのためにも、入居したからといって安心して施設側にすべてを任せてしまうのではなく、施設と家族が問題解決に向けて協力する必要があります。

まず、家族がすぐにできることは、施設に頻繁に訪問して様子を確認しておくことです。
訪問した際には、入居者はもちろん施設のスタッフと積極的にコミュニケーションを取り、日ごろから関係性を深めておくのが重要です。

入居者本人が施設での生活の質を高めて穏やかな時間を過ごすためには、家族と施設のサポートが必要不可欠ということを覚えておきましょう。