年々増加する「老老介護」「認認介護」。 原因や問題点、対応策を教えます!

介護の問題・トラブル

昨今、高齢化や核家族化が急速に進んでおり、社会全体の課題となっているのが「介護問題」です。

その中でも高齢者同士による「老老介護」や、介護者・被介護者ともに認知症を発症してしまう「認認介護」は深刻な問題です。

この記事では、老老介護と認認介護の問題点、今後の対策について解説していきます。

年々増加する「老老介護」「認認介護」とは

老老介護とは

「老老介護」とは、介護者と被介護者がどちらも65歳以上のことを指します。
たとえば、「73歳の妻を75歳の夫が介護している」「65歳の子供が80歳の親を介護している」などです。

2013(平成25)年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査によりますと、在宅介護している世帯の51.2%が老老介護の状態にあるという結果が出ました。

また、介護者と被介護者がどちらも75歳を超えている場合は、「超老老介護」といわれており、在宅介護している世帯の約3割が超老老介護の状態にあるという結果もあります。

日本では高齢化が年々進み、4人に1人が高齢者という状況です。

それに伴い、老老介護・超老老介護も増加しているのが現実です。

認認介護とは

認認介護とは、認知症の要介護者を認知症の介護者が介護していることを指します。

高齢化が進む山口県で2010(平成22)年に行われた調査によりますと、県内で在宅介護を行っている世帯の10.4%が認認介護状態という結果になりました。

介護が必要になる原因は、認知症が1位です。

この結果からも、老老介護が認認介護に移行していくのは珍しくないことがわかります。

自分が認知症であるという自覚が無いままに介護を続けている人もいると考えられ、はっきりした実態はわかっていません。

老老介護・認認介護が増加している原因

なぜ、老老介護や認認介護が増加しているのでしょうか。ここで、その原因を探っていきましょう。

平均寿命と健康寿命の差があるため

食生活の充実や医療の進歩により、日本人の平均寿命は年々延びています。

平均寿命が延びる一方で、介護なしで日常生活送ることができる「健康寿命」との差が目立つようにもなりました。

つまり、健康寿命と平均寿命の差が「要介護期間」と考えられます。

厚生労働省・国立社会保障人口問題研究所の発表によりますと、2010(平成22)年時点の日本人男性の平均寿命は79.55歳、健康寿命は70.42歳。女性は平均寿命が86.30歳で健康寿命が73.62歳という結果になりました。

従って、男性の要介護期間は9.13年、女性は12.68年という結果になり、男女ともに平均10年前後の要介護状態があるということがわかりました。

介護が始まったときには60代前半だったとしても、いつの間にか老老介護に差しかかっていたり、施設に入居する順番を待っている間に認知症が進んでしまったりするケースなどがあります。

核家族化

昨今では子ども世帯が都市部に出ることも多く、核家族化が進んでいます。

遠方に住んで仕事や子育てを抱えている子どもに助けを求められず、老老介護を余儀なくされるケースや、子どもも気づかない間に徐々に介護が必要になっているケースなどもあります。

また、子どもの世話になるのを「情けない」と考えてしまい、高齢の配偶者に介護してもらいたいと願う人も多いようです。

未婚者の増加

近年、成人しても未婚のまま親と同居して中高年になる人も増えてきています。

老老介護は高齢の夫婦2人暮らしを想像するかもしれませんが、たとえば76歳の未婚の息子が96歳の母親を介護するというように、2世代で同居をしていても起こり得ます。

日本は長寿国であるが故に、子どもも介護が必要になるケースも出てきているのです。

金銭的な理由

高齢者の中には、金銭的な余裕がない場合もあります。

施設に入居するにも、訪問型の介護サービスを利用するにも当然お金はかかります。

介護が必要になっても、お金がなければ年金を受給しながら自宅で介護生活を余儀なくされてしまうのです。

老老介護・認認介護の対策

老老介護と認認介護が増加傾向にある中で、介護者が一人で悩みを抱え込まないようにするためには、どのような対策をすれば良いのでしょうか。

家族・親戚に頼る

介護されることに抵抗があるからといって、共倒れや引きこもりなどの深刻な状態になってから急に頼ると、家族にもより大きな影響を与えてしまいます。

できるだけ初期のうちから、家族や親戚に現状を伝えて頼るようにしましょう。

また、親の介護を担う人も兄弟や親戚に早めの段階から事情を話し、体力的や金銭的な負担を一人で抱え込まないように注意しましょう。

介護サービスについて調べる

行政では介護生活の助けとなる介護保険制度や介護サービスが数多くあります。

知らないからといって本来受けられるはずの支援を利用せず、金銭・体力・精神的に限界になってしまうのはもったいないことです。

お住まいの地域の「地域包括支援センター」に連絡をして、申請しなければならないことや利用できるサービスなどについて教えてもらいましょう。

地域のイベントに参加する

いつのまにか認知症を発症している高齢者を2人きりにさせてしまうことが、認認介護が起こる一番の原因といわれています。

最近では、健康状態について気軽に話したり相談できたりする「認知症カフェ」などが、地域単位でよく開催されています。

元気なうちからそのような場所に行っておくことで友人もでき、さまざまな地域情報を得られます。

一度、自治体や地域包括支援センターに問い合わせてみても良いでしょう。

小まめにかかりつけ医へ行く

老老介護の場合、病院も介護者の体調を気にかけてくれることも多いです。

少しでも違和感があるときは病院へ行きましょう。

定期的に病院で医師や看護師とコミュニケーションを取っていると、もし介護者が認知症を発症した場合でも早期に発見してもらえ、適切な対応を受けられます。

老老介護・認認介護がもたらすリスク

老老介護や認認介護は介護者に想像以上の負担がかかります。老老介護・認認介護がもたらすリスクを見ていきましょう。

老老介護がもたらすリスク

介護者が高齢になればなるほど体力は衰え、腰痛や骨折を引き起こす可能性が高くなります。
そのほかにも精神的に追い詰められてしまい、虐待行為に結びつくことも考えられます。

老老介護にはこのように「共倒れ」状態になるリスクがあるのです。

また、強いストレスは認知症を引き起こす原因になるともいわれています。
介護者が認知症になれば外出もままならなくなり、社会とのつながりが希薄になり2人で閉じこもってしまう可能性も考えられます。

このように孤独を抱えた老老介護であればあるほど認認介護に陥りやすいとされています。

認認介護がもたらすリスク

認認介護で起こり得るのは、認知症の介護者が必要な服薬・食事・排せつの必要な世話をしたかどうかを忘れてしまうことです。
気付かないうちに低栄養や脱水状態に陥り、危険な状態になってしまうこともあります。

また、お金の管理も難しくなるために悪徳商法や詐欺の被害にあってしまったり、火の不始末や、緊急事態の対応などが難しくなったりするなどのリスクがあります。

老老介護や超老老介護は、介護する側が精神的に追い詰められてしまい「介護うつ」になり、自殺や虐待などにつながることも多いのが現実です。

老老介護・認認介護を楽にするためのサービス

昨今、高齢化が急速に進んでいることへの対応策として「地域包括ケアシステム」の構築が進んでいます。

介護のよろず相談所として、全国の自治体に「地域包括支援センター」設置されています。

不安を感じたら深刻な状態になる前に、気軽に最寄りの地域包括支援センターに相談しましょう。

介護保険制度では、市区町村の役所の窓口で要介護認定を申請し、要介護度の認定を受け、サービスを利用するためのプランを立てられれば、介護保険サービスが受けられます。

比較的安い費用で利用できる「デイケア」「デイサービス」があり、家庭の状況によれば、優先的に入所させてくれる施設もあります。

介護者が体力的にも精神的にも追い詰められてしまわないように、介護サービスをうまく活用しましょう。

まとめ

老老介護や認認介護は、周囲の人に状況を把握してもらうことから始まります。

高齢化や核家族化が進んだ現代では、家族だけでなく他人や行政の助けを借りてこそ、健全な介護を行うことができるのです。

深刻な状況に陥る前に家族・行政とチームになって、介護・被介護者ともに安心できる生活を送るようにしましょう。