介護におけるヒヤリハット報告書の書き方5選!事例や記入例も詳しく解説

高齢者への支援のポイント

介護の現場では、いつ何が起こるか分かりません。日常で普段意識して生活をしていても、思わぬところで事故が起きてしまうこともあり得ます。

このような状況を「ヒヤリハット」と呼び、入居者に対して配慮した取り組みが必要になってきます。そのためには、ヒヤリハット報告書の作成が重要です。

そこで今回は、介護におけるヒヤリハット報告書の書き方を5選紹介していきます。ヒヤリハットの事例や記入例も詳しく解説していくので、それぞれチェックしていきましょう。

そもそもヒヤリハットとは?

ヒヤリハットとは、重大な事故とまではいかなかったものの、ケガなどに繫がる危険な事故が起こったことを指します。

介護の最中に一瞬目を離した隙に、職員が「ヒヤッ!」「ハッ!」としてしまったという体験が文字通りヒヤリハットです。

ヒヤリハットが起きる原因

ヒヤリハットが起きてしまう主な原因は、大きく分けて以下3つが挙げられます。

1.入居者本人の原因
2.生活環境の原因
3.介護職員などの支援者側の原因

入居者の中には、身体が不自由な方や認知症を患っている方などさまざまであり、事故の多くは転倒や転落がほとんどです。

また、入居者だけに限らず生活環境や支援者側にも原因があります。

生活環境では段差があったり、介護ベッドの高さが合っていなかったりなどが挙げられます。

支援者側では日々の業務に追われると、集中力の低下などから事故につながる可能性が考えられます。

ヒヤリハット報告書を書く目的

ヒヤリハット報告書を書く目的としては、今後の安全確保という点です

事故が起こりそうな原因を明らかにして事例を元に検証を行い、支援者側で共有をすることで事故を未然に防ぐために必要となります。

介護におけるヒヤリハット報告書の書き方5選

ヒヤリハットは、以下のポイントを前提に報告書を書く必要があります。

  • いつ
  • どこで
  • だれが

上記のポイントを踏まえた上で、以下の書き方を紹介していきます。

・5W1Hを用いて端的に記載する
・客観的事実に基づいて記載する
・直接的・間接的な原因を両方とも記載する
・専門用語を避けて丁寧に記載する
・対策は具体的に記載する

それぞれチェックしていきましょう。

5W1Hを用いて端的に記載する

ヒヤリハット報告書は、5W1Hを意識して記載しましょう。

5W1Hとは

項目
Who(誰が) 介護職員の名前
When(いつ) ヒヤリハットを体験した日時
Where(どこで) ヒヤリハットを体験した場所
Why(原因) 事故につながりそうな原因
How(対策) 事故を防ぐための対策

表にして記載すると、ひと目で共有できるので非常におすすめです。

客観的事実に基づいて記載する

見たり聞いたりしたその時の状況を、ありのままに記載しましょう。
ただし、私情を取り入れて記載しないようにしてください。

私情を含んだ報告書はただの日記になるので、根拠ある報告書を作成する場合は客観的事実に基づいて記載することをおすすめします。

直接的・間接的な原因を両方とも記載する

ヒヤリハットは、原因を特定するのが重要です。
本人の不注意や作業手順など、間接的な原因も記載するのが理想です。

専門用語を避けて丁寧に記載する

ヒヤリハットは、誰が読んでも分かるように記載する必要があります。

そのため、介護職員同士しか分からないような専門用語を極力控えて記載するようにしましょう。

入居者のご家族にも見せることを前提に記載すると、分かりやすく共有できます。

対策は具体的に記載する

原因を特定したら、再発防止に取り組む必要があります。

例えば、介護ベッドが原因なら「ベッドの高さを調節する」などが挙げられます。

作業時の手順に不備があるのなら、再度検証して手順書を改正しましょう。
対策は今後のためにも重要なことなので、具体的に記載することが大切です。

介護におけるヒヤリハット報告書の事例と記入例

ここでは、介護におけるヒヤリハット報告書の事例と記入例について紹介していきます。
ヒヤリハットの例文などを挙げているので、ぜひ参考にしてみてください。

ヒヤリハットの事例

まずは、介護におけるヒヤリハットの事例を、『介護事故事例集』をもとに紹介
します。

【ケースA】

ご利用者の後ろから声をかけたら転倒してしまった!

※引用元:介護事故事例集

【ケースB】

食事介助中、一旦落ち着いたむせ込みが、激しくなった!

※引用元:介護事故事例集

【ケースC】

ご利用者が、送迎車のステップを踏みはずし転倒!

※引用元:介護事故事例集

ヒヤリハット報告書の記入例

次に、先述したヒヤリハットの事例における報告書の記入例を紹介します。

【ケースAの記入例】

項目
Who(誰が) 介護職員A
When(いつ) 令和4年2月1日
Where(どこで) A棟1階トイレ付近の廊下
Why(原因) ふらつきがあったAさんに後ろから声をかけてしまい、振り返った拍子に転倒
How(対策) 常に転倒の恐れがあると認識して行動する

【ケースBの記入例】

項目
Who(誰が) 介護職員B
When(いつ) 令和4年3月15日
Where(どこで) Bさんのベッド
Why(原因) 食事介護中にむせてしまい、落ち着いたと判断して食事を再開
さらにむせ込みを激しくさせてしまった
How(対策) 食事介護中は、常に誤嚥リスクを意識する

【ケースCの記入例】

項目
Who(誰が) 介護職員C
When(いつ) 令和4年7月6日
Where(どこで) デイサービスの送迎車からの乗降時
Why(原因) 利用者が家族に気を取られ、ステップを踏み外してしまった
How(対策) 利用者を見て、声かけをしてから介助をする

介護現場でヒヤリハット報告書を浸透させるポイント2つ

介護現場でヒヤリハット報告書を浸透させるには、以下2つのポイントを押させておきましょう。

  • 自分が率先してヒヤリハット報告を心がける
  • ヒヤリハット報告書の簡単なテンプレートを作成する
    • それぞれチェックしていきましょう。

      自分が率先してヒヤリハット報告を心がける

      ヒヤリハットを共有するには、自分が率先して報告をするよう心がけましょう。
      率先して報告することで、上司が全体共有してくれることも少なくありません。

      ヒヤリハット報告書の簡単なテンプレートを作成する

      報告書で何を書いたらいいのか分からないという方のためにも、ヒヤリハット報告書の簡単なテンプレートを作成することをおすすめします。

      フォーマットがなければ、「報告書の作成が面倒だ」と感じてしまう方もいます。
      事故を防ぐ大切な報告書なので、簡単なテンプレートを作成するのはおすすめです。

      ヒヤリハット報告書の書き方に関するよくある質問

      最後にヒヤリハット報告書の書き方に関するよくある質問を紹介していきます。

      • 介護現場でヒヤリハットを減らすにはどうすればいい?
      • ヒヤリハット報告書にイラストは必要?
      • ヒヤリハット報告書の「インシデント」って何?
        • それぞれチェックしていきましょう。

          介護現場でヒヤリハットを減らすにはどうすればいい?

          ヒヤリハットを減らすためには介護職員同士、日々連携をするのが1番です。

          ヒヤリハットが起こりやすい原因の認識をすり合わせておき、再度事故が起きないように注意深く介護を行うようにするのが大切です。

          ヒヤリハット報告書にイラストは必要?

          ヒヤリハット報告書のイラストは、必ず描く必要はありません。
          ただし、具体性を持たせるにはイラストがあった方がより明確に共有することが可能です。

          ヒヤリハット報告書の「インシデント」って何?

          ヒヤリハット報告書の「インシデント」とは、1つの用語です。

          患者に対して誤った医療行為などが行われる前に発見、あるいは既に実施されたものの結果として影響が出なかったことを指します。

          レベル0〜3aという医療事故などのレベル区分に分かれており、レベル3b・4・5になると「アクシデント」とみなされヒヤリハットの域を超えます。

          まとめ:報告書の書き方を理解してヒヤリハットを防ごう

          ここまで、介護におけるヒヤリハット報告書の書き方や、ヒヤリハットの事例や記入例も詳しく解説してきました。

          ヒヤリハットの共有は、今後も介護の現場で大いに活躍してくれます。
          紹介した報告書の書き方などを参考に、書き方を理解してヒヤリハットを防ぎましょう。