介護福祉SOS
実は、老人ホームでは事故や金銭面でのトラブルがよくあります。
入居者が高齢で体が思うように動かなかったり、認知症の症状があったりしてうまく意思疎通ができない場合から、事故や怪我をしてしまうことも多く、軽傷で済むものから重大なものまでさまざまです。
事故や金銭面でのトラブル、不平や不満がある場合に家族が取るべき行動は、きちんとした事実を苦情として伝えることです。
この記事では、老人ホームに多い苦情の実例や、申し出る方法を解説していきます。
■老人ホームに多い苦情の事例
それでは、老人ホームにはどんな苦情があるのでしょうか。
・転落や転倒による怪我があったが、施設側が過失を認めない
・脱水症状がみられるが、施設に相談しても改善が見られない
・施設利用料の総額だけしか知らされず、内訳を見せてもらえない
・「介護サービス費」が請求されるが、具体的な介護内容がわからない
・家の近くに老人ホームがあり、騒音がひどい
上記の具体的な事例を紹介していきます。
・転落や転倒による怪我があったが、施設側が過失を認めない
老人ホームでは、歩行中の転倒、ベッドや車いす・便座からの転落などが頻繁に発生しています。
少しの転倒でも骨折してしまい、そのまま寝たきりの状態になってしまう場合も。このような場合、施設側が過失を認めないというケースがよくあります。
・脱水症状がみられるが、施設に相談しても改善が見られない
高齢になると腎機能が低下してきます。そのため、季節を問わず脱水症状に陥りやすく、気付いた時には昏睡状態になってしまうこともあるため、注意が必要です。
家族が見て、水分が足りていないように感じ施設に相談しても、具体的に改善されているのかわからない場合もあります。
・施設利用料の総額だけしか知らされず、内訳を見せてもらえない
毎月施設利用料は請求されるものの、明細書まで見せてもらえないケースもあります。
高額な入居費がかかることも多い老人ホーム。
しっかりと内訳がわからなければ不信感につながってしまうでしょう。
・「介護サービス費」が請求されるが、具体的な介護内容がわからない
こちらも金銭トラブルの一例です。
「介護サービス費」として請求されるものの、具体的な介護内容がわからなければ、実際にサービスを受けているのか、確認ができません。これも不信感の元になります。
・家の近くに老人ホームがあり、騒音がひどい
老人ホームが近隣にあり、騒音がひどいという問題もトラブルの一つです。
近隣に老人ホームがあることで、送迎車が毎日のように通り、車のエンジン音や話し声などが家の中にまで聞こえる可能性があります。また、老人ホームの室外機や厨房など、設備の音が外に漏れているケースもあります。
このような場合、施設に苦情を入れても直接的な解決に繋がりにくいため、難しい問題といえます。
■老人ホームに苦情を申し出る方法
このように老人ホームに不満を感じていても、「苦情を言うことで入居者にとっては不利になり、かえって嫌な思いをするのでは」と躊躇してしまうこともあるでしょう。
しかし、入居者がより快適に生活できるようにするためにも、なるべく早く苦情を伝え安心できる環境を整えることが必要です。
重要事項説明書に「苦情連絡先」を記載してある場合が多いので、確認しておきましょう。
ここでは苦情を申し出る場所についてご紹介します。
・施設のホーム長やケアマネジャー、経営者
苦情を申し出る場合、まずは施設のホーム長やケアマネジャー、経営者へ相談します。
場合によっては録音し、証拠として残しておきましょう。
もし、事故に対する苦情の場合は、損害賠償について契約書に記載されているはずですので、必ず確認しましょう。
・地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、地域の高齢者の自立支援や尊厳の保持を目的として、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントをする場所です。
いわば、介護に関する地域の相談窓口です。
施設に入る前からお世話になって入るケアマネジャーがいれば、相談に乗ってもらいましょう。
・国民生活センターや全国の消費生活センター
あらゆる消費生活全般のトラブルに関する苦情や相談を受け付ける機関です。
介護トラブルについても例外ではなく、公正な立場で対応してくれます。
・法律事務所
ここまでの相談でどうしても解決できない場合や、法律による審判を望む場合は、弁護士に相談することになります。
ただ、時間だけでなく費用もかかり、裁判をして和解をした場合、出費の方が多くなるケースもあるので注意が必要です。
まずは社会福祉協議会の無料相談などを利用してみましょう。
・役所の苦情相談窓口
老人ホーム側に訴えても改善が見られない場合、役所の相談窓口に相談しましょう。
市区町村に苦情相談窓口、あるいは利用されているサービスを担当する課の窓口がありますので、そちらで事実を伝えましょう。苦情の内容に応じ、問題解決に動いてくれます。
中には、弁護士に専門的な相談ができるよう取り次いでくるところもあります。
連絡先は、重要事項説明書の「苦情窓口の連洛先」や、各役所のホームページを利用しましょう。
・国民健康保険団体連合会(国保連)
国民健康保険団体連合会(国保連)とは、国民健康保険の保険者である市区町村と国民健康組合が共同して、「国民健康事業を健全に運営する」という目的のためにできた組織です。
主に介護保険事業者への助言や指導、介護サービスに関する苦情処理を行います。入居者や家族は老人ホームに対して直接苦情を言いにくい人が多いので、相談を受け付けることにより、質の向上に努めています。
具体的な方法として、来所・電話・書面(苦情申立書)によって担当者が随時受け付けるというもの。
対象とする苦情は、以下の通りです。
1.介護保険上の指定サービスに関するもの
2.区市町村域を越えるもの
3.区市町村で取り扱うことが困難なもの
4.申立人が国民健康保険団体連合会での処理を希望するもの
上記4点にあてはまるかどうか、事前に確認しておきましょう。
■苦情の申し立ては本人か家族が行いましょう
苦情の申し立ては、基本的に本人もしくは家族が行います。
先述したように、苦情はまず老人ホームに伝えます。そこで改善されないときは、市区町村の苦情相談窓口などに申し立てましょう。問題解決に向けて働きかけてくれたり、弁護士に取り次いでくれたりする場合もあります。
また、介護保険事業者への助言や指導、介護サービスに関する苦情処理を行ってくれる国民健康保険団体連合会(国保連)」も心強い味方です。直接苦情を言いにくい人のために相談に乗ってサービスの向上に努めてくれます。
このようにさまざまな機関がありますので、本人や代理の家族が苦情の申し立てを行いましょう。
■各市町村の苦情相談窓口
各市町村の苦情相談窓口における福祉サービスを利用した際に、そのサービスに不満や苦情などがあるときは、先ずサービスを提供している事業者との話し合いで解決していくことが望まれます。
一方で、事業者との話し合いで解決できなかった場合や、直接苦情を言いづらい場合もあります。そのときは、「区市町村」が、その苦情の解決に対応。
地域の社会福祉協議会などが第三者の立場から、苦情解決に向けた調整を行うための専門相談窓口を設けているところもあります。相談は、苦情相談窓口、または利用されているサービスに係わる担当課(区市町村)で受け付けています。
・東京都
東京都での苦情・要望の伝え方にはいくつかの方法があります。
まず、利用者が事業者に直接要望する「当事者段階」の場合は以下の通り。
・担当者や苦情受付担当者(重要事項説明書などに記されています)に伝える
・利用者懇談会、投書箱、手紙などで伝える
・苦情解決のための「第三者委員」に相談する(置かれていない事業者もあります)
次に、福祉サービス制度の実施者を通じて相談・要望する場合は以下の通り。
・在宅サービスの場合、お住まいの区市町村に伝える
・入所施設利用の場合、施設入所時の住所地の区市町村に伝える
「当事者段階での対応に不満」「サービスの利用中では事業者には直接言えない」という際は、上記の方法で相談しましょう。
また、区市苦情対応機関は、区市によって「苦情の専門機関」も設置されています。区市の各福祉部署とは異なる立場から苦情に対応してくれます。
中立・公正な専門の委員による仲介や調査をする地域もあります。
受付対象範囲や解決方法などは区市により異なるので、事前確認が必要です。
・大阪府
大阪府では居宅サービス事業者、居宅介護支援事業者、介護保険施設、介護予防サービス事業の指定等を行う機関として、居宅サービス事業者等に対して指導の徹底を図ります。
さらに、当該苦情を迅速かつ適切に処理するため、関係機関に対する広域的・総合的な指導・調整を実施。指定基準違反等が疑われる場合には、都道府県又は保険者が調査を実施し、結果によっては事業者に対し指定取り消し等も可能です。
介護保険審査会を運営し、要介護認定又は要支援認定に関する処分や保険料等の保険給付に関する処分に不服がある場合等は、介護保険審査会で受け付けています。
また、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するための委員会(福祉サービス苦情解決委員会)を設置しています。
運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申し出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をします。その後、当該苦情にかかる事情を調査していき、苦情の申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情解決をあっせんしていきます。
・愛知県
愛知県では第一段階として、苦情受付窓口を通じて、事業者との間で解決するように促します。
しかし、お互い話し合ってみたものの、なかなか解決できない場合や苦情を言いたくても直接言えないようなケースも考えられます。そのような場合には、「運営適正化委員会」に相談を推奨しています。
その後、相談をよく聞き、相談者の意向を確かめたうえで、必要に応じて事情調査や解決に向けた手伝いを行います。ただし、この場合は相談者と事業者との双方の同意が必要。
なお、相談の内容が虐待や法令違反による苦情であった場合には、速やかに関係機関に通知します。
■まとめ
老人ホームに苦情を言いたいという思いを抱いたら、まずは早めに相談しましょう。
利用者側が躊躇せずに訴えていくことで、老人ホームの全体的なサービス向上にもつながります。
まずは老人ホームのホーム長やケアマネジャー、あるいは経営者に相談しましょう。
それでも解決しない場合は、紹介したような機関を利用しましょう。段階を踏んでいくことで解決策が見つかるはずです。不満や不信を解決して、安心して過ごせる環境を整えていきましょう。
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不満や不信を解決して、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。