高齢者への支援のポイント
介護サービスは必要な時にすぐに受けられるものではありません。
介護サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があるのです。
この記事では、要介護認定の区分から申請に必要な書類や手続きの流れまで、詳しく解説いたします。
要介護認定とは?
要介護認定は介護サービスを利用する際に必要になり、「どのような介護がどの程度、必要か」を判定するためのものです。
介護度によって受けられるサービスの内容が異なります。
介護保険サービスを利用する前に、まず要介護認定を受け、「要介護」または「要支援」の状態であると判定を受ける必要があるのです。
要介護認定までの2つのステップ
要介護認定は以下の2つのステップを経て判定されます。
まず、市区町村の担当者による聞き取り調査結果が行われます。
聞き取り調査は、「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会生活への適応」の5つの項目でチェックされます。
聞き取り調査結果の内容を基に、厚生労働省による共通のソフトを利用したコンピューターが介護にかかると想定される時間(要介護認定等基準時間)を推計して、7つのレベルの中から1次判定を出します
次に、1次判定結果や主治医の意見書を基に、保健・医療・福祉の学識経験者5名ほどで構成されている介護認定審査会が審査を行い、最終的な要介護度を判定するのです。
要介護認定の基準
それでは、要介護認定の基準を詳しくご紹介します。
前述のように、1次審査には客観的で公平な判断を行うためにコンピューターによる判定が導入されています。
介護にかかる時間の度合い「要介護認定等基準時間」と、聞き取り調査などの結果をもとに要支援1から要介護5まで判定されます。
「要介護認定等基準時間」による基準は以下の通りです。
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
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要支援2 | 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護1 | 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 (時間は要支援2と同じですが、心身状態の分類が要支援2とは異なります) |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
これらの「要介護認定等基準時間」と、聞き取り調査などの結果からコンピューターが区分を行います。
要介護度別に明確な定義はないものの、区分ごとの状態イメージは以下の通りです。
要支援1
生活の中の身の回りのほとんどを自分で行うことができ、部分的に介助が必要とされる状態。
排泄や食事は自分でできるものの、掃除や立ち上がり時に支えを必要とするときがあるなどです。
適切な介護サービスを受けることによって、要介護状態になるのを予防できると期待される段階です。
要支援2
要支援1よりも運動機能に若干の低下が見られ、部分的に介助が必要とされる状態。
要支援1と同じく、適切な介護サービスを受ければ、要介護状態になるのを予防できると考えられています。
要介護1
要支援2よりも運動機能や認知機能、思考力や理解力が低下し、部分的に介護が必要とされる状態。
排泄や食事はほとんど自分でできるものの、理解力が低下し問題行動がみられる状態などです。
要介護2
要介護1よりも日常生活能力や理解力が低下し、身の回りのことについて介護が必要な状態。
身だしなみや掃除など全体的に助けが必要で、排泄や食事をする際に見守りや手助けが必要な状態などです。
要介護3
食事や排せつなどが自分でできなくなり、ほぼ全面的に介護が必要な状態。
歩行や移動などが、一人でできない状態などです。
要介護4
要介護3よりも動作能力が低下し、日常生活全般に介護が必要な状態。
介護なしでは日常生活が困難で、多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられる状態などです。
要介護5
要介護状態において、最も重度な状態。
一人で日常生活を送ることがほぼできず、食事や排せつのほか、着替え、寝返り、歩行など、介護なしでは日常生活が送れず、意思の疎通も困難な状態などです。
申請に必要なものは?
申請には、主に以下のものが必要です。
- ・「介護保険要介護(要支援)認定申請書」
- 市区町村の窓口やWebサイトから入手でき、あらかじめ記入していくことも可能です。
- ・「介護保険被保険者証」
- 本人が第1号被保険者(65歳以上)の場合は必要です。
- ・「健康保険被保険者証」
- 本人が第2号被保険者(40~64歳)の場合のみ必要です。
- ・マイナンバーが確認できるもの
- 写しでも可能です。
- ・申請者の身元が確認できるもの
- 運転免許証、身体障害者手帳など。
- ・病院の診察券など、主治医の情報が確認できるもの
- 主治医の氏名や病院名、連絡先などの必要事項を提出すれば、市区町村が主治医に意見書の作成を依頼してくれます。
主治医がいない場合には、市区町村が指定する医師の下で診察を受け、その後、申請書に必要事項を記入する必要がありますので、早目に日頃から状態をわかってくれている主治医を決めておきましょう。
また、家族やケアマネジャーが代理で申請する場合には、委任状や印鑑、代理人の身元を確認できるものが必要になります。
要介護認定の手続きの流れ
要介護認定の申請から認定までの流れをご紹介します。
必要書類を提出する
市役所や区役所、あるいは町・村役場に必要書類を提出します。
受理後、介護保険被保険者証の代わりに介護保険資格者証が渡されます。
訪問調査を受ける
介護認定調査委員が自宅を訪れ、生活状況や心身の状況を確認し、特別な医療や介護の必要性についての調査を行います。
入院中でも、代理人を通じて申請は可能です。
介護認定調査委員が病院を訪問し自宅と同じように調査を行いますので、病院側にはあらかじめ伝えておくことが必要です。
家族も必ず同席しましょう。
1次判定
訪問調査結果をもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。
2次判定
1次判定の結果、主治医の意見書、訪問調査の特記事項などを基に、介護認定審査会が要介護認定区分の判定を行います。
認定結果の通知
申請から30日以内に、通知書と介護保険被保険者証が郵送されます。
通知書には判定された「要介護状態区分」や、「認定有効期間」など詳しい情報が記載されています。
認定の区分は、要支援・要介護の7つの分類のいずれか、もしくは非該当(自立)です。
「要支援1」以上の結果が出て初めて介護保険制度を利用できるようになります。
要介護認定の結果に不服があるときは?
要介護認定結果の通知が出たものの、「非該当(自立)」と判定され介護保険サービスを受けられなかったり、予想よりも要介護が低く判定されたりするケースもあるかもしれません。
このように、要介護認定の結果に納得できない場合の2つの対処法をご紹介します。
都道府県設置の「介護保険審査会」に不服の申し立てをする
不服の申し立てを行う場合、要介護認定の通知を受け取った翌日から60日以内であれば申し立てが可能です。
改めて調査を行うため、結果が出るまでには数ヵ月かかる場合もあります。
区分変更申請をする
区分変更申請とは、本来は今までの要介護の区分が変更したと判断した段階で行うものです。
しかし、この制度も認定結果に不服があった場合に活用することが可能です。
申請はいつでも可能で、30日以内に結果が通知されます。
ただし、申請しても希望の区分に認定されるとは限らないことは覚えておきましょう。
まとめ
介護サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。
お伝えしたように要介護認定を受けるためには必要書類や訪問調査などがあり、時間もかかります。
時間的に余裕のあるうちに市区町村に問い合わせ、詳しい申請手続きの流れや必要書類を確認しておくと安心です。