高齢者の一人暮らしの問題と対策

高齢者への支援のポイント

「急病で倒れたりしていないかな?」
「孤立して家にこもりがちになっていないだろうか…」

同居ができないご家族にとって、親御さまが元気に暮らしているかは心配なポイントです。
しかし、同居が難しいご家庭や、同居を望まず現在の暮らしを大切にしている親御さまも多く、今後ますます一人暮らしの高齢者が増えることが予測されます。
そこで今回は、一人暮らしの高齢者が抱える問題と、それを遠くに暮らすご家族がサポートする方法についてご紹介します。

      目次
一人暮らしの高齢者の現状と問題
高齢者見守りサービス
地域サービス
・地域包括支援センター
・社会福祉協議会
・自治会・町内会
・民間のデイサービス
成年後見制度
火事には要注意

一人暮らしの高齢者の現状と問題

内閣府の高齢社会白書の発表によると、平成28(2016)年に国民の人口の約4分の1が65歳以上になりました。
2025年には国民の3人に1人が65歳を超え、5人に1人が75歳以上になると言われています。

65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあり、平成27(2015)年には男性約192万人、女性約400万人になりました。
これは65歳以上の人口のうち男性13.3%、女性21.1%を占めます。

では、高齢者の一人暮らしにはどんな問題が発生するのでしょうか?

高齢者は3つの大きな不安を持っていると言われています。
「お金」「健康」「孤独」です。
それらは下記のような大きな社会問題に繋がります。

孤独死

高齢者の一人暮らしで大きな問題になっているのが孤独死です。
孤独死とは誰にも看取られず、亡くなった後に発見されることです。
平成29(2017)年度の高齢者白書によると、孤独死を身近な問題と感じる割合は、60歳以上の高齢者のうち夫婦や親子で暮らす世帯は約1割しか孤独死を身近な問題として感じていなかったのに対し、一人暮らしの高齢者は4割以上が孤独死を身近な問題として感じているという結果が出ました。

生きがいの低下

生きがいの低下は社会からの孤立をもたらします。
老後の生きがいを見いだせず、家にこもりがちになりうつ傾向になる高齢者も少なくありません。
また、人と関わる機会が減ることは認知機能にも大きく影響を与えます。

認知症の進行

認知症は高齢者にとって大きな問題の1つです。
中でも高齢者の一人暮らしの場合、誰にも気づかれることなく認知症が進んでしまうケースが多々あります。
認知症の進行は、ご近所トラブルや自宅のゴミ屋敷化などの問題にも繋がります。

消費者被害

高齢者を狙った悪徳商法や詐欺被害は深刻な社会問題になっています。
国民生活センターによると、詐欺や悪徳商法は「お金」「健康」「孤独」の3つの不安を巧みに煽ることで、被害を拡大させていると言われています。

火事

東京消防庁の調査によると、平成31(2019)年1月1日~令和元(2019)年5月28日までの東京消防庁管内の火災のうち、過半数が高齢者の一人暮らし世帯や高齢者のみの世帯で起こっていることがわかりました。

高齢化が進む中でこれら問題への対策はますます求められています。
では、これらの問題に対して、ご家族はいったいどのような対策が取れるでしょうか?

離れていても安心!高齢者見守りサービス

見守りサービスとは?

孤独死や急病などの対策として、見守りサービスがあります。
見守りサービスとは、遠くに暮らす高齢者の健康状態や安否確認ができるサービスです。
「訪問型」「センサー型」「通報型」など、状況やライフスタイルに応じて様々な選択ができることが特徴です。
ここでは、代表的な3つのサービスを紹介します。

センサー型見守りサービス

センサー型見守りサービスは、センサーを設置して親御さまの生活状況を確認する見守りサービスです。
主に冷蔵庫やトイレ、寝室など、親御さまがいつも必ず使う場所にセンサーを取り付けます。
一定期間使用がなければご家族に連絡が届く、セキュリティが駆けつけるなど、プランに合わせたサービスを受けることができます。
「センサーを取り付けるのには抵抗が…」という場合には、スマートフォンのアプリや無線通信機を内蔵したポット、電気やガスの利用状況で安否確認ができるサービスなど、さまざまな見守り形態があります。

訪問型見守りサービス

訪問型見守りサービスとは、顔なじみのスタッフが高齢者の自宅を定期的に訪問し、安否確認をするサービスです。
訪問型の最大の特徴は、親御さまをただ見守るだけでなく、孤立の解消にも繋がることです。

「機械に頼るのには抵抗がある」
「人とのコミュニケーションが欲しい」

そんな時に役立つサービスといえます。
宅配業者や郵便局員が配達の際に安否確認するものや、安否確認と共にお食事を配膳するサービスもあります。

通報型見守りサービス

緊急時に役に立つのが通報型の見守りサービスです。
通報型見守りサービスでは、もしもの時に親御さまがボタンを押すだけでセキュリティサービスが駆け付けます。
ペンダント型のブザーを首から下げ、握るだけで通報可能なものもあります。

見守りサービスのメリット

さまざまなプランが用意されているので、ご自身やご家族さまに合った予算でサービスを選ぶことができるのが見守りサービスの大きなメリットです。
ホームセキュリティ会社から大手ガス会社、通信会社、宅配会社と、サービスを提供している企業は多岐に渡ります。
また、郵便局や一部地域の自治体も見守りサービスを提供しています。

認知症予防にも繋がる!高齢者を支える地域サービス

次に問題となるのが生活意欲の低下です。
いきいきと日々を楽しむ方がいる一方で、生きがいを見いだせず、うつ傾向や家にこもりがちになる高齢者も少なくありません。
人と関わる機会が減ることは認知症にも繋がります。
そこで、日常的に人との関わりを増やせる地域サービスをご紹介します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、地域に暮らす高齢者やそのご家族のための公的な総合相談窓口です。
社会福祉士や主任ケアマネジャー、看護師といった専門の職員が在籍しているので、介護や福祉に関する様々な相談に応じています。
また、介護予防ケアマネジメントや、高齢者虐待の早期発見・防止、後に説明します成年後見制度のご相談など、多角的に地域の高齢者を支えています。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、高齢者の孤立や子育てなど、地域の社会福祉に関する困りごとを協力しあって解決する民間団体です。
見守り声掛け訪問、世代間交流、老人クラブ、高齢者施設へのボランティアの紹介など、さまざまな取り組みを行っています。

自治会・町内会

地域住民との繋がりを作る方法の1つが、自治会や町内会への加入です。
市町村によっては、行政と住民が協力して一人暮らしの高齢者を見守るコミュニティを築いている場所もあります。
そういったコミュニティに参加することは日々の生活を楽しむ以外にも、自治会・町内会によっては災害時にいち早く安否確認をしてもらえるなど、住民同士の助け合いにも繋がります。

民間のデイサービス

デイサービスとは、日帰りで福祉施設に通う介護サービスのことです。
レクリエーションやお食事、ご入浴、機能訓練などを受けられます。
定期的に介護職員や他の利用者と交流することで、孤立を防げる他、認知症の予防なども期待できます。
デイサービスは要介護1~5の方が対象となります。
また、40~64歳までの方は、16種類の特定疾病により要介護となった方が対象です。

消費者トラブルを防ぐ!成年後見制度について

高齢になると、どんなにしっかりした方でも判断力が衰えはじめ、詐欺や不利益な契約など、さまざまな消費者トラブルに巻き込まれる危険性が高まります。
ここでは高齢者の一人暮らしをサポートする成年後見制度をご紹介します。

成年後見制度とは

成年後見制度とは判断力が不十分な高齢者に代わり、選ばれた後見人が金銭管理や契約などの支援を行う制度です。
また、高齢者の同意を得ずに結ばれた不利益な契約などを、後見人が後から取り消すことも可能です。
後見人には「任意後見制度」と「法廷後見制度」の2種類があります。

任意後見制度

判断力が低下する将来に備え、高齢者ご自身が任意後見契約を結んだ後見人のことです。
任意後見契約は公証人の作成する公正証書で結びます。
任意後見人は、高齢者ご本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が選任した「任意後見監督人」の監督の元で、契約や財産管理などを行うことができます。

手続き方法

公証人が作成する公正証書で任意後見契約を結ぶことで、任意後見人になることができます。
原則として、手続きは公証役場で行います。
お手続きの詳細はお近くの公証役場までお問合せ下さい。

法廷後見制度

では、既に判断能力が不十分な高齢者はどのようにサポートすれば良いのでしょうか?
そんな時に役立つのが法廷後見制度です。
法廷後見制度は家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、高齢者の判断能力や状況に応じて選択できるようになっています。

●後見
対象となる方 重度の認知症や知的障害などにより、判断能力が欠けていることが通常の状態の方

後見人は、対象となる方の利益を考えながら代理契約などをしたり、対象者の不利益になる契約を取り消したりすることができます。
(ただし、衣類や食料の購入など、日常生活に関する行為の取り消しはできません)
この制度を利用する場合、対象となる方は医師、税理士などの資格や、会社役員、公務員などの地位を失います。

●保佐
対象となる方 判断能力が著しく不十分で、日常生活に支障が出る方

対象となる方は借金や不動産の売却、相続権の承認や放棄などの民法13条1項にあたる法律行為(※)を行うとき、保佐人の同意が必要になります。
(後見と同じく、衣類や食料の購入など、日常生活に関する行為の取り消しはできません)
この制度を利用する場合、対象となる方は医師、税理士などの資格や、会社役員、公務員などの地位を失います。

●補助
対象となる方 日常生活に大きな支障はないものの、判断能力が不十分な方

借金など民法13条1項にあたる法律行為(※)について、申し立ての範囲内で、補助人には同意権や取消権、代理権が与えられます。
補助人の同意権・代理権の範囲は、当事者(本人、もしくは対象となる方の家族など)の申立ての範囲内で家庭裁判所の審判によって決まります。
(後見や保佐と同じく、衣類や食料の購入など、日常生活に関する行為の取り消しはできません)
この制度を利用しても、対象となる方は資格や地位などを失いません。

※民法13条1項にあたる法律行為
お金の貸し借り、借金や保証人になること、訴訟行為をすること、不動産の売却、相続の承認や放棄、家の新築・増築・改築などです。

手続き方法

高齢者ご本人のお住いの地域の家庭裁判所に、後見開始の審判等の申し立てをします。
審理期間が必要なため、申し立てから法廷後見制度の開始には、概ね4ヶ月以内の期間を要します。
さらに詳しくは、申し立てを行う家庭裁判所までお問合せください。

火事には要注意!

東京消防庁の調査によると、平成31(2019)年1月1日~令和元(2019)年5月28日までの東京消防庁管内の火災による死者のうち7割以上を高齢者が占める結果が出ています。
このうち過半数が、高齢者の一人暮らし世帯や高齢者のみの世帯で起こっています。

対策

主な出火原因には「たばこ」「ストーブ」「コンロ」「電源コード」が挙げられています。
コンロに関してはガスからIHに変えるなどの対策があります。
また、ご高齢のご家族さまの家を訪れた際には、以下の点についてよく注意して見ておくと良いでしょう。

・電源の周りにホコリが溜まっていないか
・電源コードの上に物が乗っていないか
・ストーブの周辺に燃えやすいものを置いていないか
・寝たばこ、飲酒しながらの喫煙をしていないか

まとめ

ご高齢のご家族さまの一人暮らしに不安は尽きません。
しかし、これらサービスや制度をうまく取り入れることで、離れて暮らしていても見守りやサポートをすることができます。
これを機にご家族で話し合い、必要に応じたサービスや制度を活用するのはいかがでしょうか。