老人ホームは年金だけで入居出来るのか
老人ホームの費用は年金で支払える?介護施設選びのポイントも解説

高齢者への支援のポイント

「老人ホームの費用は年金で支払えるの?」と不安に感じている人は少なくありません。

老人ホームの費用を年金で支払えるかどうかは、老後の生活を安心して過ごせるどうかに大きく影響します。

ここでは、老人ホームの費用は年金で支払えるのか、施設別の老人ホームの費用などを詳しく解説します。老人ホームへの入居時の費用が心配な人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

【この記事でわかること】

● 老人ホームの費用は年金だけで払える?

● 【公的施設】老人ホームでかかる費用

● 【民間施設】老人ホームでかかる費用

● 老人ホーム選びで費用を抑えるポイント

● 老人ホームの費用が年金だけで払えないときの対処法

老人ホームの費用は年金だけで払える?

老人ホームのなかには、入居時一時金のかからない施設や月々の費用がリーズナブルな施設があるので、年金のみで費用を賄うことは可能です。

ここでは、老人ホームの費用と受給できる年金額を以下の順番で解説します。

  • 厚生年金・国民年金の平均受給額
  • 老人ホームの費用相場

それぞれ見ていきましょう。

厚生年金・国民年金の平均受給額

「老人ホームへの入居を検討しているけれど貯金額が心配だ」という人は、実際に給付される年金額を把握しておきましょう。

年金は主に以下の2種類に分けられます。

  • 国民年金:日本に住む満20〜60歳の全ての人が加入
  • 厚生年金:会社員や公務員などが加入

厚生年金に加入している人は国民年金にも加入しているので、2種類とも受給できます。

厚生労働省の調査によると、厚生年金・国民年金の月々の平均受給額は以下の通りです。

年金の種類 令和元年度の平均受給額
厚生年金 144,268円
国民年金 56,049円

(厚生年金の受給権を要しない場合:52,437円)

※参考:令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省

具体的な加入額を知りたい人は、日本年金機構のホームページで試算できるため試してみましょう。

老人ホームの費用相場

地域別の老人ホームの費用相場は以下の表のとおりです。

地域 入居一時金の平均額 月額料金の平均額
全国 93万円程度 17万円程度
東京 400万円程度 25万円程度
大阪 64万円程度 15万円程度

東京の費用が全国の平均額より大幅に高い点に対し、大阪は平均額よりリーズナブルな費用に収まっています。

できるだけ費用負担を抑えたい場合、地域から選ぶことも1つの手段といえます。

【公的施設】老人ホームでかかる費用

公的施設とは、地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営している施設です。

公的施設は民間施設に比べて費用が安いので、人気が高い傾向にあります。

公的施設は介護・医療ケアの提供を中心としており、入居対象者は要介護者である場合がほとんどです。

ここでは、以下の公的施設に入居するとかかる費用を解説します。

公的施設の種類 施設の特徴
特別養護老人ホーム(特養) 要介護度3以上の人が入居でき、費用が安く人気が高い
介護老人保健施設(老健) 原則3ヶ月の短期入所で、入居時一時金がかからない
介護医療院 費用はやや高いが、手厚い介護・医療サービスを受けられる
ケアハウス 身寄りがない高齢者が対象で、ニーズに応じて一般型・介護型から選べる

上記4つの公的施設の費用を確認しましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は費用が安く終身で入居できるため、年金のみで費用を賄える介護施設を考える際に真っ先に挙げられる選択肢です。

特別養護老人ホームは入居時に一時金がかからず、初期費用も必要ありません。

特別養護老人ホームでかかる月々の費用のなかに居住費や食費、介護サービス費が含まれます。

厚生労働省の介護報酬の算定構造によると、入居中の1日あたりの基本利用料は以下の通りです。

居室のタイプ 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
多床室 573円 641円 712円 780円 847円
従来型個室 573円 641円 712円 780円 847円
ユニット型個室 652円 720円 793円 862円 929円
ユニット型個室的多床室 652円 720円 793円 862円 929円

※1単位あたり10円で算出

居室のタイプによって費用が異なるので、できるだけ費用を抑えたい人は多床室タイプがおすすめです。

基本利用料金以外に、施設ごとに”経口移行加算”や”看取り介護加算”、”褥瘡(じょくそう)マネジメント加算”などがかかります。

ただし、特別養護老人ホームは原則として要介護度3以上の認定が必要であり、入居までに数年かかる施設は少なくありません。

特別養護老人ホームは、要介護度3未満の人やできるだけ早く入居を決めたい人には不向きでしょう。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、リハビリが必要な人が短期間入所し、在宅復帰を目指すための施設です。

介護老人保健施設は、原則として入所期間が3ヶ月と定められているため、長期間の入居はできません。特別養護老人ホームと同様に初期費用が掛からず、月々の費用も安く済みます。

介護老人保健施設でかかる費用は施設によって差があるものの、9〜15万円程度が目安です。

入居希望先の施設に空きが出るまで介護老人保健施設への入居を選択するケースは少なくありません。

介護医療院

介護医療院は、手厚い介護・医療サービスを受けられる施設で、要介護認定を受けている人や認知症の人も入居可能です。

介護医療院は長期療養を前提としていて、看取りやターミナルにも対応しています。

介護医療院は従来型個室やユニット型個室などの居室タイプも幅広く、入居者のプライバシーにも配慮されています。

また、介護医療院には入居時の一時金も必要ありません。

ただし、介護・医療サービスが充実しているため、月々の費用が他の公的施設に比べて高く、相場は10〜20万円程度です。

月々の費用の主な内訳は、介護サービス費や居住費、食費、日常生活費が含まれます。

また、介護医療院は入居希望者が多いため、入居まで数年ほど待機しなければならない施設は少なくありません。

ケアハウス

ケアハウスは、身寄りのない高齢者を対象とした軽費老人ホームの1つです。

ケアハウスの入居時一時金は、0〜30万円程度とばらつきがあります。また、月々の利用料は9〜13万円程度が相場です。

費用は施設によって異なるものの、できるだけ費用を抑えたい人に適しているといえます。

また、ケアハウスは一般型・介護型の2種類に分けられます。

介護型の場合、要介護度に応じた定額の費用を支払えば、施設内で介護サービスが提供されます。一方、一般型は外部の事業者から必要な介護サービスを受けます。

そのため、介護サービスを利用する場合、介護型のほうが費用を抑えられるでしょう。ケアハウスは施設数が少なく、希望してからすぐに入居することが困難な点がデメリットとして挙げられます。

【民間施設】老人ホームでかかる費用

民間施設は民間企業が運営している施設で、サービスが充実している反面、費用が高い傾向にあります。

ただし、入居条件のハードルが低く、要介護認定を受けていなくても入居可能な施設が少なくありません。ここでは、以下の民間施設に入居した場合にかかる費用を解説します。

民間施設の種類 施設の特徴
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 入居対象者が幅広く、施設によって費用に差がある
住宅型有料老人ホーム 月々の費用は抑えられるが、介護サービスは外部の事業所を利用しなければならない
介護付き有料老人ホーム 要介護度に応じた定額の介護サービス費を支払うことで、必要な介護サービスを利用できる

上記3つの民間施設の費用をチェックしましょう。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー化された高齢者向けの賃貸住宅です。

入居対象者は施設によって異なり、要介護認定を受けていなくても60歳以上なら入居できる施設があります。

また、夫婦や兄弟など家族で2人部屋に入居することも可能です。サービス付き高齢者向け住宅の入居時一時金は0〜20万円程度、月々の費用は12〜20万円程度が相場です。

高級志向のラグジュアリーな施設では、さらに費用が高い場合が少なくありません。一般的な介護施設とは異なり、好きなタイミングで外出や外泊ができるので、自由度の高い生活を楽しめるでしょう。

施設内で介護サービスを受けたいなら介護型、必要に応じて外部の事業所を利用するのであれば一般型がおすすめです。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、レクリエーションが盛んに行われており、充実した生活を満喫できます。

費用は施設の規模や設備の充実度、地域によっても大きく異なります。住宅型有料老人ホームの入居時一時金は0〜21万円程度、月々の費用は10〜16万円程度が相場です。

できるだけ費用を抑えたい場合は、入居時一時金がかからない施設がよいでしょう。

また、介護サービスを希望する場合は外部の事業所と契約する必要があるため、自宅で利用していたサービスを継続できます。

介護サービスを利用する予定がない場合は、住宅型有料老人ホームで費用負担を抑えられます。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、要介護度に応じて定額費用を支払い介護サービスを利用する施設です。

入居時一時金は0〜600万円程度、月々の費用は16〜30万円程度が相場です。介護付き有料老人ホームの入居時一時金・月々の費用は、住宅型有料老人ホームに比べて高い傾向にあります。

月々の費用のなかには、居住費や食費、管理費などのほかに、介護サービス費が含まれています。

介護付き有料老人ホームのなかには、24時間にわたって介護サービスを提供し看取りまで対応する施設が多くあります。

介護付き有料老人ホームは要介護度が上がっても住み替えの必要がないため、長期間入居したい人に適しています。

老人ホーム選びで費用を抑えるポイント

老人ホームの入居費用を抑えたい人は、施設の条件にも目を向けましょう。

老人ホーム選びで費用を抑えるポイントは以下の通りです。

  • 都市部ではなく郊外の施設を選ぶ
  • 個室ではなく多床室を選ぶ
  • 築年数が古く駅から遠い施設を選ぶ

上記3つのポイントを解説していきます。

都市部ではなく郊外の施設を選ぶ

都市部ではなく郊外の施設を選ぶと入居費用の節約につながります。

老人ホームの費用は地域によって異なります。都市部は地価が高いので、老人ホームの賃料にあたる月々の費用も高い傾向にあります。

できるだけ月々の費用を安く抑えたいなら、都市部ではなく郊外の施設がおすすめです。

ただし、交通が不便な施設を選ぶと面会時に支障をきたすおそれがある点に注意が必要です。

個室ではなく多床室を選ぶ

費用を抑えたい場合は、個室ではなく多床室を選ぶことを検討するとよいでしょう。

最近では個室タイプの施設が増加しているものの、多床室タイプの施設も少なくありません。

多床室タイプは個室タイプに比べて居室面積が狭い一方で、料金が安く設定されている場合が一般的です。

ただし、多床室タイプでは同室者同士の生活音が聞こえてしまうので、プライバシーの確保が難しいというデメリットがあります。

神経質な人やプライバシーを確保したい人には不向きといえます。

築年数が古く駅から遠い施設を選ぶ

築年数が古く駅から遠い施設を選ぶと、費用を抑えられる場合があります。

築年数や駅歩、設備は老人ホームの費用に影響します。比較的築浅の施設や立地のよい施設は、月々の費用が高くつきやすいでしょう。

費用面が気になるのであれば、築年数が経っていて駅から距離のある施設を検討するとよいでしょう。

老人ホームの費用が年金だけで払えないときの対処法

老人ホームの費用が年金だけで払えないときの対処法は以下の通りです。

  • 家族でできることはなるべく行う
  • 生活保護を受ける
  • 負担を軽減する制度を活用する
  • 在宅介護サービスを利用する

上記4つの対処法を解説します。

家族でできることはなるべく行う

家族でできることはなるべく家族で行い利用する施設サービスを減らすと、費用を抑えられます。

老人ホームでは、賃料や管理費といった月々の費用、入居時の一時金、入居中の生活に必要な消耗品の費用などがかかります。

また、施設によっては通院時の付き添いサービスがあり、別途費用が必要です。

そのため、以下のような家族でできることをなるべく家族で行うと、施設サービスにかかる費用を抑えられます。

  • おむつや歯ブラシなどの消耗品を面会時に持参する
  • 通院にはできるだけ家族が付き添う
  • 訪問理美容室を利用せず理美容室へ連れて行って散髪する

家族の負担を軽減する目的で施設への入居を検討するケースは多いので、家族で行うことは無理のない範囲に留めましょう。

生活保護を受ける

年金による収入や財産が少ない人の場合、生活保護の受給も視野に入ります。

生活保護を受給している人でも入居できる老人ホームは増加傾向にあるため、生活保護を受けているからといって入居の可否を心配する必要はありません。

ただし、入居を希望している老人ホームにかかる月々の費用を、地域ごとに定められている生活保護費で賄える施設を選ぶ必要があります。

負担を軽減する制度を活用する

老人ホームへの入居にあたって経済的な負担が大きいと感じたら、介護保険サービスの助成制度の利用がおすすめです。

利用申請すると所得に応じた金額の助成が受けられるため、生活保護の申請前に検討してみましょう。代表的な制度は、主に以下の3種類です。

制度名 助成の内容
特定入所者介護サービス費 月々の利用料のうち、食費と居住費は所得に応じた限度額以下になる
高額介護サービス費 介護サービスの自己負担額の合計が限度額以上になっていた場合、払い戻しを受けられる
高額介護合算療養費 一世帯が年間に支払う医療費と介護費用の合計額が限度額を超えていた場合、払い戻しを受けられる

このほかにも、各自治体で独自に導入している制度があるので、役所の窓口に一度問い合わせてみましょう。

在宅介護サービスを利用する

介護が必要になった場合、施設への入居以外に在宅で過ごしながら介護サービスを利用する方法が選べます。在宅介護で利用できるサービスの例は、主に以下の通りです。

サービスの種類 具体的なサービス内容
訪問サービス 訪問介護や訪問看護、訪問入浴
通所サービス デイサービスやデイケアなど
宿泊サービス ショートステイ
複合型サービス 小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護

介護サービスは、要介護度に応じて介護保険の利用限度額が定められています。自己負担額の割合が1〜3割程度で済むので、介護費用負担を抑えることに役立つでしょう。

介護サービスを利用するには、要介護認定を受けてケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があるため、まずは要介護認定を申請しましょう。

老人ホームの費用は年金に頼りすぎないことが重要

老人ホームの費用は、施設によって異なります。

ただし、希望する施設の入居条件に当てはまらない場合は入居が困難なうえ、人気施設では数年待機しなければならないケースが少なくありません。

できるだけ費用を抑えたい人には、郊外の施設や比較的築年数が経過している施設などがおすすめです。

また、どうしても年金のみで入居費用を賄えない人は、生活保護の受給や減免制度の利用も視野に入れましょう。

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