高齢者への支援のポイント
高齢者が注意しなければならない病気として、貧血が挙げられます。通常の症状とは異なっているため、特徴や注意点などについて理解しておくようにしましょう。原因や治療法、予防方法についてご紹介します。
高齢者の貧血は通常の貧血と違う
貧血というと、血液を作る際に必要な鉄が不足する、鉄欠乏性貧血があります。若い年代の貧血の多くは、鉄分不足が原因となっています。高齢者の貧血も、鉄不足が原因の方もいらっしゃるでしょう。しかし、鉄は十分にあるのに、体内でうまく利用できない貧血が増えてくるのです。これが原因で、悪性腫瘍や感染症、膠原(こうげん)病などの症状が出てくる場合もあります。
また、赤血球を作り出す骨髄の病気が原因で、貧血になってしまう可能性があります。高齢者の場合は、貧血の原因が鉄不足とは限りません。気になる方は、お近くの病院で診察を受けるようにしてください。
高齢者の貧血の症状と原因
一般的な貧血では、動悸や息切れ、倦怠感、疲れやすいといった症状が挙げられます。めまいが起こることもありますが、短時間で急激に出血している場合に限られています。高齢者の場合は、行動や動作が緩慢であることも多いため、貧血の症状が出ていることに気づきにくいです。また、認知症などを患っている場合は、胸の痛み、食欲不振などといった症状が出ることもあります。高齢者の場合、原因は主に以下の4つが考えられます。
- 1、鉄欠乏性貧血
- 栄養不足や持続性の出血によって鉄分が不足することで起こります。高齢者の場合、胃がんや大腸がんなどの病気を引き起こす可能性があるため、検査を進められることもあるでしょう。
- 2、慢性炎症性疾患によるもの
- この場合は、体の状態が悪く、鉄が十分にあっても血液をスムーズに作れないことが原因です。悪性腫瘍、感染症、膠原病などによる貧血が該当しますが、なかでも悪性腫瘍によるものが一番多いと言われています。
- 3、骨髄性疾患によるもの
- 骨髄異型性症候群や再生不良性貧血があります。骨髄異型性症候群は、高齢者に多くみられる骨髄の病気の一つです。また、再生不良性貧血は、薬や放射線が原因で発症する場合もあります。どちらの病気も骨髄に異常があり、血液の生成が正常にできないため、貧血になってしまうのです。
- 4、老人性貧血
- 上記のような病気が原因ではなく、原因不明のときに、この診断をされる場合があります。原因として、以下の二つが考えられます。
- 加齢に伴って、赤血球を産生する機能の低下
- (赤血球を刺激する)ホルモンに対する感受性の低下
原因別の治療法
治療法は貧血の原因によって異なり、それぞれに合ったものを行う必要があります。それぞれの治療法をみていきましょう。
- 【鉄欠乏性の場合】
- 鉄剤の補充を重点的に行う
- 【慢性炎症性疾患の場合】
- 悪性腫瘍や感染症、膠原病などの疾患の治療を優先し、病気の改善を行う
- 【骨髄疾患の場合】
- 造血細胞の移植、抗がん剤による治療、輸血などの治療を行う
- 【老人性貧血の場合】
- 定期的に診察を行い、進行がなければ治療の必要はない
高齢者の場合、野菜や豆腐などさっぱりとした食事が好ましいという方も増えるでしょう。野菜や大豆製品は、植物性タンパク質の摂取が可能です。しかし、それだけでは栄養不足になり、鉄分を補うことができません。肉や魚などもバランスよく食べ、動物性タンパク質を積極的に摂ることが予防に繋がります。
高齢者貧血にならないための予防
食事から鉄分を補充することだけでなく、適度な運動も貧血の予防法です。運動不足になりがちな高齢者は、お腹も空きにくく、食事量が減ってしまいます。多くの栄養を摂るためには、運動を習慣にし、「1日3食」食べることが大事です。1日30分以上歩くなどの運動を定期的に行うようにしましょう。
高齢者の場合、若い方とは異なる原因で、貧血を発症することが多くなります。原因を明確にし、適切な治療をすることが大切です。食事では、豆腐や野菜だけでなく動物性タンパク質を摂りことを心がけましょう。また、定期的に体を動かす習慣をつけるようにしてください。