笑うことは認知症予防になる?
笑うことは認知症予防になる?

高齢者への支援のポイント

笑うことが心や体へ好影響を与えることは、すでに多くの研究によって証明されています。表情筋や腹筋などの筋肉を刺激し、免疫効果も高めてくれる「笑い」は、認知症予防にも効果的です。具体的にどんな効果があるのか、ご紹介します。

笑うことは脳に刺激を与えてくれる

「笑う」と一口に言っても、ただにっこりと笑うこともあれば、「アハハハ」と声を上げて笑うこともあるでしょう。口を大きく開けて、声を出しながら笑うと、無意識に腹式呼吸を行っています。このとき、血液中の酸素濃度が増えるだけでなく、血圧や心拍数が上がるため、血行が良くなっています。この結果、脳への酸素供給量が増え、集中力や記憶力といった脳の働きも活発的になるのです。笑うことは、脳に負担がかからないリラックスした状態のため、気分転換にも効果が見込めるでしょう。

また、怒ることでも心拍数が上がりますが、脳内の酸素を多く使ってしまうため、身体によくありません。怒ることの原因はストレスと言われており、「怒り」という感情は、そのストレスに対処するために発生します。必要な生理現象ですが、長時間続いてしまうと、精神や肉体を興奮状態においたままになるため、脳や心臓にダメージを与え続けることになるのです。可能な範囲で、「怒り」という感情をコントロールすることを意識しましょう。

笑う人と笑わない人の差とは

一人で過ごしているより、誰かと一緒にいた方が、笑う回数が多いと感じる方もいるでしょう。笑顔には、一緒にいる人と連鎖するという効果があり、相手に安心感を与えているようです。

大阪大学の大学院の研究によれば、認知機能の低下に大きな影響があることが分かりました。「ほとんど笑う機会がない人」と「ほぼ毎日笑う人」を比較したところ、「笑う機会がない人」の方が、認知機能が約2倍以上低下すると言われています。認知機能の低下は、認知症になる可能性が高くなるため、なるべく笑う機会を増やすようにしましょう。

笑いにはモルヒネ以上の効果がある

笑ったり、怒ったり、泣いたりといった感情が引き起こされると、脳内で神経伝達物質が分泌されます。笑うときに分泌される神経伝達物質は、ドーパミン、セロトニン、エンドルフィンの3つです。ドーパミンは意欲を高める効果があり、セロトニンやエンドルフィンは幸福感をもたらす物質とされています。また、エンドルフィンの鎮痛効果は、医療用麻酔として用いられるモルヒネに匹敵する効果があるのです。動物の実験ではエンドルフィンが、社会的安心感をもたらすとも言われています。

日常生活の中の笑いで認知症予防をしよう

上記で述べたように、「笑うこと」は心と体に良い効果があります。笑う機会が少ない場合、作り笑いであっても、笑顔は十分にプラスの効果があります。口角を上げるように意識して、笑顔を作ってみてください。表情筋を動かすことで脳に刺激が与えられます。落語を聞いたりコメディ映画の鑑賞したりすると、自然と笑いがこみ上げてくるでしょう。

また「笑いヨガ」もおすすめです。笑う動作とヨガの呼吸法を取り入れたもので、声を出しながら笑うことを指します。笑いに合わせて動きを付けることもありますが、ヨガ特有の難しいポーズはとりません。一番大事なことは、「笑う」という行動によって楽しい気分が引き起こされる点です。心身の健康のためにも、認知症の予防のためにも、笑うことを心がけてみてください。

認知症予防では、脳への刺激が重要とされています。笑顔は、脳に良い刺激を与えてくれますが、年齢が上がるとともに声を上げて笑うことは、少なくなる傾向があるそうです。面白いことや楽しいことを素直に感じて表情に表すと、ストレス発散にもつながります。普段の生活からたくさん笑うようにし、健康的に過ごせるようにしましょう。