アルコールの節制が認知症予防に
アルコールの節制が認知症予防に

高齢者への支援のポイント


アルコール型認知症とは

高齢化とともに認知症の問題もクローズアップされていますが、脳血管障害やアルツハイマーのように認知症にもいくつか種類があります。そのひとつに、アルコール型認知症があります。これは文字通り、長年の飲酒習慣によって発症する認知症のことです。

アルコールには、脳を萎縮する作用があることが知られており、習慣的に多くの飲酒量があると、認知症を発症しやすくなることが指摘されています。近年調査も進んでおり、飲酒量が多くなればなるほど、脳萎縮も顕著になることがわかりました。記憶や学習機能は加齢とともに低下しますが、アルコール摂取することで低下ペースを促進することも動物実験により証明されています。

ただし少量や中程度の飲酒であれば、アルコール型認知症のリスクは顕著なほどには高くありません。むしろ、研究によっては、適度な飲酒は認知症予防の効果も期待できるとされるものもあるのです。

さらに、大量飲酒をしていても、断酒から一定期間が経てば脳萎縮の改善も認められる報告もあります。いずれにせよ、ただ単にアルコールが悪いわけではなく、「上手な付き合い方」が重要といえるでしょう。

アルコールのコントロールが重要

アルコール型認知症は、断酒をすれば症状改善の可能性があります。上述のように飲酒の期間が長くなればなるほど、脳萎縮はひどくなりますので、多めの飲酒量での習慣が根付いている方であれば、早めのコントロールが予防のためにもおすすめです。

また、お酒をコントロールするためには、単純に量を調整すれば良いというわけではありません。それはお酒を飲むきっかけややめられない原因を解決することが大切なケースもあるため。例えば、日々多量に飲む人は、ストレスを過度にため込んでいるケースもあります。ストレス発散や気晴らしに飲み始めて、だんだん摂取量が増えてしまうことが調査によっても明らかになっているため、注意しなければなりません。

ストレスではない他の原因もあり、よく知られる例では不眠が挙げられます。寝つきの悪い方のなかにはお酒に含まれる睡眠作用を頼ってしまう方いるのです。ところがこのような方法を採っていると、アルコールに体が慣れてしまい、元通りなかなか眠れなくなってしまいます。これにより、よりお酒の量が増えてしまいます。本人も知らず知らずのうちにアルコールに依存してしまうため、あまりに晩酌が多いと感じたら、他の手立てやサポートが必要な状態といえます。

アルコールに頼らない方法としては、睡眠の場合には入浴が挙げられます。体温が下がることに起因して眠気は起きるため、眠る前にお風呂に入って体を温めて、少しずつ体温が下がっていく状態が作れれば眠りにつきやすくなります。その他には適度に運動をして体を疲れさせて眠りやすい環境を作るのもいいでしょう。

アルコール型認知症への対処

アルコール型認知症の場合、他の認知症と比べると、記憶障害や周囲の状況がわからなくなる見当識障害を発症することが多いです。その他には歩行が不安定になる、意欲を失うなどの症状もみられます。このような症状はアルツハイマー型などでもみられますが、徐々に進行していくのが基本です。ところがアルコール型認知症の場合、急激に悪化するのが特徴となっています。

もし、家族でこのような症状がにわかに出てきたのであれば、医療機関に受診してもらうことが先決です。原因特定の際にアルコールが挙げられれば摂取量のコントロールが求められるでしょう。

アルコール型認知症の患者の方のなかには、攻撃的になり介護している家族に暴力をふるうケースもみられ、問題となっています。このままでは、家族だけで対処をするのは難しくなってしまうため、公的なサービスの検討も選択肢です。治療にかかる費用や相談には、介護保険の利用も可能ですから検討してみましょう。市町村役場の福祉相談窓口に行って症状を伝えれば、適切な方法を提案してくれるはずです。

これからは高齢者人口が増えるため、独居老人も増加すると予測されています。こうした方のなかにはアルコールを飲むことで問題を起こしてしまうような方もいるかもしれません。そのようなときには民生委員に報告することで解決を目指せます。地域包括支援センターの職員が対策を講じ、適切な対処をしてくれるでしょう。一方で、寂しくなって飲酒をしてしまうようなことを防ぐためにも、できる限り孤立させないことも地域社会を考えるうえで大切な観点であることも覚えておきましょう。