介護事故で多い誤嚥問題の対策
介護事故で多い誤嚥問題の対策

高齢者への支援のポイント


誤嚥とはどのようなもの?

高齢者の介護を行っているときに起こる事故のなかで、しばしば報告されているものに、誤嚥(ごえん)があります。通常私たちが食事をする際、食べ物は口からのど、食道を通って胃に落ちていきます。ところがこの作業が高齢者の方ではスムーズにいかなくなることがあり、事故につながってしまうのです。

誤嚥とは、食道から胃ではなく、気管から肺に食べ物が行ってしまうことを指します。このような状態を放置していると、誤嚥性肺炎という病気を引き起こします。実はこの病気、高齢者にとっては命にかかわりかねない深刻な症状です。平成27年の人口動態調査のなかで肺炎は死亡原因の3位になっていますがこのなかの一部は誤嚥性肺炎によるものとされます。

実際に、肺炎を死因とする方の年齢でみると、75歳以上が全体の実に9割を占めます。加えて高齢者の肺炎の原因をみると、誤嚥性肺炎が7割以上を占めます。このようなデータをみると、誤嚥がいかに高齢者にとって危ない問題であるかがおわかりでしょう。

誤嚥は、「飲み込み」の問題のため、食事をしているときに起こるものと感じられる方も多いかもしれません。確かに食事中に事故が発生するケースも多いですが、眠っている間に発症することも時折あります。介護をする人は眠っているときに高齢者が苦しんでいないかどうかチェックするとともに、口のなかに何か入っていないか注意することが必要です。

食べ物の種類に注意

誤嚥はうまく食べ物を飲み込めないために起こります。もし普通の食事だと食べづらそうにしていれば、少し調理方法を変えてみるのがおすすめです。食べ物のなかでも汁物など水分を多く含むものが気道に落ちやすいので要注意です。解決法としては、とろみをつけることが挙げられ、実際にこのような介護食品も出ています。とろみをつけても食べづらそう、むせることがよく発生するのであれば、ゼリーそのもので水分補給する方法も検討しましょう。

嚥下障害を起こしていると、他にも食べにくさを感じる食材があります。例えば粘り気が比較的強く、口のなかに残りやすいもの、水分が少なくてぱさぱさした食感のもの、硬すぎてなかなか噛み切れないものなどです。このようなものは、避けてしまいがちですが栄養バランスの面からは摂取が望ましいものもあるため、手間はかかってしまいますが細かく刻んだり、ミキサーでつぶしたりなどの対策が求められます。

誤嚥が起きた場合の対処法

誤嚥が発生した場合、高齢者はチョークサインと呼ばれる変化を見せます。これは窒息することでのどに手を当てる動作です。その他には息をするのが苦しそう、手足をバタバタさせるなどの変化もあります。この場合、まず声を出すことができるかチェックしましょう。もし出せないようであれば、異物をすぐに取り除くことです。

口を大きく開けさせ、異物が見えれば指を使って取り出します。このとき腕を下にして横を向かせる側臥位にします。こうすることで異物が気管のより奥に入ることを防げます。奥深くに異物が入って指では取り出せない場合には、ハイムリッヒ法を試してみることが推奨されます。これは、背後から高齢者のお腹に両腕を回して、胸骨とへその間を斜め上に向かって強く両手で圧迫する方法です。これにより、気管に入りこんでしまった異物も外に吐き出させることが可能です。

それ以外の方法としては、手をおわん型にして付け根のところで肩甲骨の間を強くたたくことも挙げられます。座っているときには、頭を胸の位置よりも低くかがませ、胸に手を当てさせます。また寝ているときには気道を確保するために側臥位が望ましいです。

こういった方法で異物を吐き出させられれば、問題ありませんが医療関係者ではない身内の方では、うまくいかないことも想定されます。特に、奥に詰まってしまった場合には一刻を争うケースも考えられますので、誤嚥事故が発生した場合、吐き出せるかどうかを試しながら、周りの人などに頼んで救急車を呼んでもらうようにしてください。