尿道カテーテル患者の在宅介護
尿道カテーテル患者の在宅介護

高齢者への支援のポイント


尿道カテーテルが必要な理由

膀胱(ぼうこう)や腎臓に何らかの問題が生じると、自力で排尿できなくなることがあります。すると膀胱にどんどん尿が排出されずに溜まってしまい、膀胱の病気や腎不全といった病気を引き起こす恐れがあります。このような場合に取られる処置として、尿道カテーテル法があります。尿道にカテーテルを入れることで、膀胱に尿が溜まったら体外に出すことが可能です。

尿道カテーテルはしばらくすると症状が回復して使用が必要でなくなるケースもあります。しかし現実問題、なかなか尿道カテーテルを抜けないのが実情。というのも泌尿器科の外来で抜いて尿が出るかどうかわずかな時間で確認しなければならないからです。入院してしばらく様子をみる方法もありますが、そうなると医療費もかさんでしまいます。

しかも在宅医療や在宅介護を受けている人の場合、カテーテルを抜いても動けないとおむつなどが必要です。おむつの交換も大変ですから、そのまま留置している高齢者も少なからずみられます。

尿が紫になるのは?

在宅介護している家族から尿道カテーテルに関する相談が介護施設や医療機関に持ち込まれますが、なかでも多く寄せられるのが「尿の色が紫っぽくなっているけれども大丈夫か?」というもの。尿は通常無色から黄色ですから、紫色の尿が出てくると同居人の家族のように特段の知識がないと驚かれるかもしれません。実際にこの状態は通常はみられないもので「紫バッグ尿症候群」という症状によるものです。

尿のなかに細菌が混じっている場合、尿に含まれるインジカンという物質がこの細菌によって分解されます。この過程のなかで青色のインディゴブルーと赤色のインジルビンという2つの物質に分けられます。いずれも水には溶けないものですが、一方でプラスチックやポリマーには溶ける性質を持っているのが特徴。その結果、尿バッグやカテーテルに沈着してしまい、尿が紫色っぽくなるのです。

紫バッグ尿症候群を発症すると、はっきりした紫色の尿になるため驚かれる方も多いですが、紫バッグ尿症候群だけであれば別に今すぐ何らかの処置をする必要はありません。しかし、この紫バッグ尿症候群にかかっている高齢者の方のなかには、水分摂取が少なく便秘気味で寝たきりの方に多くみられる傾向があります。ですので適度に水分摂取を促して、排便コントロールを行うように心がけること必要なケースもありますから、介護中にこうした症状がみられれば主治医とよく相談しましょう。

膀胱瘻という選択肢も

尿道カテーテルはこのように一部の高齢者の方にとっては重要な器具ではありますが、使用を続けていると詰まりを起こしやすくなるのが難点です。定期的に交換をする必要があり、たいていは2~4週間に1回のペースで交換することになるでしょう。

また、尿道カテーテルにより尿路感染症を起こしやすくなります。悪化すると、血液に乗って全身に細菌が散らばる敗血症を引き起こす可能性も高まるため注意しなければなりません。

尿道からのカテーテルを避ける方法として膀胱瘻(ぼうこうろう)があります。これは、恥骨の上に膀胱に向かって直接針を刺し、そこにカテーテルを入れる手法。膀胱瘻の処置をすることで、男性の場合陰茎の周辺における合併症のリスクを軽減できるのがメリットです。また、カテーテルを装着し続けると尿道の途中にある精液の出る箇所もふさいでしまいます。すると精巣上体炎のリスクも出てくるのですが、膀胱瘻にすればこのような危険性も軽減できます。

膀胱瘻を作るとなると大掛かりな治療というイメージを持つ人もいるでしょう。しかし局所麻酔だけで比較的軽微な施術です。ただし女性の場合、尿道カテーテルのトラブルは男性と比較すると多くありません。審美的な観点もあり、抵抗を感じる方もいるため、本人や医師とよく相談しましょう。