認知症の要介護者の旅行
認知症の要介護者の旅行

高齢者への支援のポイント


旅行は認知症に有効?

旅行が認知症の進行を食い止める効果があるのではないかとみられており、日本でも大学や旅行会社などで研究を行う動きもみられます。

そのプレ調査も行われおり、60歳以上の高齢者45人を対象に幸福感と旅行の関係に関するアンケートを実施しました。この調査で過去5年間の旅行回数が多ければ多いほど人生への失望感が低くなり、人生を肯定的にとらえていることがわかりました。また、現地でいろいろな人々と交流したいと思っている人は、人生に対して高い満足感を得ていて、ポジティブにとらえられる傾向もみられます。旅先の文化や歴史に触れることによって、これから先の困難にも自分で立ち向かえる自信が強くなることもわかりました。このような結果をみると、旅行前から後に至るまで脳に対する効果が長く続くことがうかがえます。

認知症で要介護度が高いと「旅行させたくても難しい」と感じる方もいるでしょう。しかし、近年は介護旅行というプランもあって、スタッフが旅のサポートをする企画も出てきています。その他にもちょっとした心がけで旅行を十分無理なく満喫することができますので覚えておきましょう。

旅行の計画を立てる

要介護の方と一緒に旅行をする「介護旅行」が注目を集めています。なかでも、認知症の方には旅行によって、症状の進行を食い止めるなどの効果が期待できるともいわれており、関心度が高いです。ただし、旅行ならどこでも良い、というわけではなく介護の一環として旅行するのであれば旅行先や持ち物に注意が必要です。

もし、認知症の方の介護旅行を計画するのであれば、思い出の場所を訪れるプランがおすすめだといわれています。認知症の方は新しい記憶を維持できない半面、昔の思い出は残っているケースも多いのがその理由です。昔の記憶をさかのぼることによって脳が刺激を受けるのも、認知症患者に対して好影響と指摘されています。

過去訪れたことのある場所、新婚旅行など人生のターニングポイントで行ったことのあるところなら、そのときの思い出がよみがえってくるかもしれません。特に、新婚旅行で訪れた場所に再び足を運ぶのは、夫婦での旅行におすすめです。

一方で、初めて訪れるようなところは要注意。アクセス方法や風土の違いに戸惑ってしまい、気づかれもあって、旅行を楽しめなくなってしまうかもしれません。一度訪れて勝手がわかるようなところのほうが、お互いに安心できます。

また、旅行の計画を立てるときには、時間的に余裕を持たせることも大事です。高齢になると体力も当時と比べれば落ちてしまっていますから、前と同じ旅程では難しいケースもあるでしょう。休憩をこまめにとるような計画を立ててください。ごはん処はもちろん、喫茶店や館内で座れる場所が確保できるスポットなどを意識的に盛り込みましょう。

持ち物に何が大事?

旅行中の持ち物は、認知症に対するケアも考えると結構な量になってしまうのでは、と心配する方もいるかもしれません。しかし、国内を旅するのであれば、近くにお店があるようなところも多いですし、現地調達も視野に考えれば荷物は軽くできるでしょう。例えば、紙パンツやおむつのようなものは現地で購入できることも多いです。

一方で、万が一のことも踏まえて、普段から飲んでいるお薬があれば、それはもちろん、健康保険証やとんぷくといったものも確実に持参しましょう。服装については、健常者の旅行と大きく変わりません。動きやすい恰好を考え、靴は履きなれたものを準備することが大切です。

また、旅行代理店や宿泊先と予めコンタクトを取っておくことも大切です。糖尿病などの持病があれば、食事などについて相談をしておきましょう。宿泊先によっては、高齢者向けの食事を別に提供しているところもあります。なかにはミキサーを料理人に預けると、介護食にしてくれるところもあるので聞いてみるのも良いかもしれません。