フレイルとは?位置付けや5つの基準・主な原因・対策を詳しく解説

介護中の生活

「フレイルってよく聞く言葉だけどどんなものなの?」と疑問に感じる方は多いです。

ここでは、フレイルの5つの基準や主な原因、対策などについて詳しく紹介していきます。

この記事を最後まで読み終えていただければ、フレイルの基準やその原因が分かり、適切な対処法に役立てられるでしょう。

フレイルについて詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

●  フレイルとは?

●  フレイルの5つの基準

●  フレイルの主な原因

●  フレイルの対策

フレイルとは?

フレイルとは、加齢に伴い、身体機能や認知機能の低下がみられる状態を指します。

そのため、高齢者はフレイルを発症しやすいので注意が必要です。

フレイルの具体的な位置づけについて紹介するので、確認してみましょう。

フレイルの位置付け

フレイルとは、2014年に日本老年医学会が提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」を日本語訳したものになります。

健康から要介護へ移行する中間の段階です。

高齢者のフレイルを放置すると、生活の質を落とすだけでなく、合併症を引き起こす可能性もあります。

フレイルは、適切な治療や予防をすることで、要介護状態に進むのを防ぐことが大切です。

フレイルの5つの基準

老年医学会によると、フレイルの5つの基準のうち、3項目に該当すると「フレイル」であると評価されます。1つか2つの場合は「プレフレイル(フレイルの前段階)」、いずれも該当しない場合は「ロバスト(健常者、頑強者)」です。

フレイルの5つの基準は次の通りになります。

  • 体重減少
  • 疲れやすい
  • 歩行速度の低下
  • 握力の低下
  • 身体活動量の低下

5つの基準について詳しく解説していくので、チェックしてみましょう。

体重減少

フレイルでは、意図せず、年間4.5kgまたは5%以上の体重減少がみられます。高齢者の体重減少は消耗性疾患や悪性腫瘍など、他の病気が隠れているケースもあるので、注意が必要です。

大きな体重減少があった際は、心や体に不調はないか、調べる必要があります。

疲れやすい

体が疲れやすくなったり、何をするにも面倒・億劫だったりする日が、週に3〜4日以上ある場合、フレイルかもしれません。

心の病気や身体の消耗をきたす病気、心肺機能の低下などが原因で起きることがあります。

また、近年の高齢者は複数の持病により、複数の内服薬を飲んでいる方が多いですが、複数の病院で処方された内服薬の効能がかぶっていたり、真逆だったりすると、不適切な状態に陥る可能性があります。

6種類以上の薬を服用している方は、かかりつけ医に相談し、内服薬の内容を確認しましょう。

歩行速度の低下

歩行速度の低下は、フレイルの高齢者の代表的な特徴です。

加齢に伴い、運動器の障害や心肺機能の低下、脳や神経の病気、貧血、消耗性疾患などが原因となっている場合があります。

筋力や運動機能の低下を伴うと、移動能力が障害されるため、歩行速度が低下しがちです。

握力の低下

高齢者は筋肉を使わないことによる衰え、病気や薬の影響による衰え、栄養不足による衰えを感じやすいです。筋力が低下することで、握力の低下につながります。

筋力や筋肉量の低下を特徴とする「サルコペニア」は、フレイルに含まれる状態として位置づけられています。

身体活動量の低下

高齢者はさまざまな要因で身体活動量の低下を引き起こします。

  • 精神的要因:意欲の低下や抑うつ状態
  • 身体的要因:移動能力の低下や病気
  • 社会的な要因:引っ越しや退職など付き合いの変化

他者との交流を面倒に感じ、自宅にひきこもる日が増えたり、活動する機会が減ったりする場合は注意しましょう。

フレイルの主な原因

フレイルは、加齢に伴う心身の変化や、社会的・環境的な要因の重なり合いによって、陥りやすいとされています。

フレイルの主な原因は次の通りです。

  • 動くことが少ない
  • 社会的に交流する機会が減る
  • 低栄養
  • 基礎代謝の低下

上記4つの原因について詳しく紹介していきます。

動くことが少ない

高齢者は、筋力や筋肉量の低下により、活動量が低下します。

エネルギー消費量の低下に伴い、食欲が湧かないので食事の摂取量が低下しがちです。

たんぱく質をはじめとした栄養不足が続くと、低栄養状態による全身状態の悪化を引き起こします。自宅に引きこもらないように、できるだけ活動的に過ごせるような支援が必要です。

社会的に交流する機会が減る

退職や引っ越しなどによって、社会的に交流する機会が減ります。社会的な交流による楽しみを感じにくくなり、友人や地域の交流を断ってしまう方も少なくありません。

心から楽しめる交流の場を持てるように、友人との交流や地域社会に馴染めるようなサポートを心掛けましょう。

低栄養

低栄養の状態が続くと、体重が減少し、筋力や筋肉量が減少します。疲れやすくなったり、意欲が低下するため、身体機能の低下や歩行スピードの低下につながります。

高齢者は嚥下能力や活動量の低下によって、食事摂取量が減りがちです。食べやすい食事形態や嗜好に合う食事内容であるか、確認しましょう。

基礎代謝の低下

加齢に伴い、筋力や筋肉量が低下することで懸念されるのが、基礎代謝量の低下です。

必要とするエネルギー量が低下し、食事摂取量の低下や低栄養を招きます。

できるだけ基礎代謝量が低下しないように、適度な運動や栄養豊富な食事で筋肉量の維持をはかりましょう。

フレイルの対策

フレイルは要介護状態に移行する途中の状態なので、放置していると要介護状態に進行してしまうおそれがあります。

フレイルに陥った高齢者に対して、適切な対策をとることで症状の悪化を防ぎましょう。

フレイルの対策は次の通りです。

  • 持病を悪化させない
  • 感染症にかからないよう予防する
  • 運動習慣を心がける
  • バランスの良い食事を取る

上記4つの対策について詳しく解説していくので、フレイル対策にお悩みの方はお役立てください。

持病を悪化させない

糖尿病や心臓病、腎臓病、呼吸器疾患、整形外科疾患など、慢性疾患の持病がある場合、持病のコントロールが大切です。

持病の治療がうまくいかず、さまざまな症状が現れると、活動量の低下や身体機能の低下につながります。医師や薬剤師と連携しながら、持病のコントロールをはかりましょう。

感染症にかからないよう予防する

高齢者は体力や免疫力が低下しているため、インフルエンザや肺炎といった感染症にかかりやすくなります。感染症の重症化で入院すると、全身状態が悪化して、寝たきりになってしまう方は少なくありません。

感染症の予防に有効な方法は次の通りです。

  • 適度な運動やバランスの良い食事を心掛ける
  • 手洗い・うがいなどによって清潔を保つ
  • インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを打つ
  • 誤嚥性肺炎の予防のために口腔ケアをする

普段から免疫力や体力を高めるための体づくりに努めましょう。

運動習慣を心がける

生活習慣病の予防や運動機能の維持のために、日常生活に適度な運動を取り入れましょう。

筋力や筋肉量は、適切な運動や栄養摂取によって、比較的短期間で取り戻しやすいとされています。特に足・腰の筋力を向上・維持させるのがおすすめです。

歩く時間や距離を伸ばしたり、ストレッチをしたりなど毎日続けられる方法で運動を始めましょう。

バランスの良い食事を取る

高齢者は食事摂取量が低下します。満腹感が得られても、身体の維持に必要な栄養が、充分に摂れていないことが多いです。

特に1人暮らしの場合、食事の品数の少なさや食べる食材の偏りによって、低栄養状態に陥りやすくなります。

運動機能の維持のためには、身体を作る栄養素である、たんぱく質やカルシウムが大切です。

さまざまな栄養素をバランスよく摂取し、低栄養状態を防ぎましょう。

フレイルを予防して健康的な生活を送ろう

フレイルは加齢に伴う、身体機能や認知機能の低下です。高齢者は活動量や基礎代謝の低下、低栄養などの要因によってフレイルに陥りやすいとされています。

5つの基準に当てはまる項目がある場合、特にフレイル対策が重要です。

持病のコントロールや適切な運動習慣、バランスの良い運動習慣などによって、フレイルの改善・予防を目指し、健康的な生活を送りましょう。