介護と介助に違いはある?種類や介護士と介助士の違いも紹介

介護中の生活

「介護と介助の違いってどんなものなの?」と疑問に感じている人は多いのではないでしょうか。

ここでは、介護と介助の違いやそれぞれの種類、介護士と介助士の違いなどについて、詳しく紹介します。

この記事を最後まで読み終えていただければ、介護と介助の違いについて理解を深めることができます。

介護と介助の違いを知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

●  介護と介助に違いはある?

●  介護の種類

●  介助の種類

●  介護士と介助士の違い

●  介護と介助の違いに関するよくある質問

介護と介助に違いはある?

介護と介助は似た意味合いで使われることが多いですが、実際は同じものではありません。

介護と介助の違いは次の通りです。

  • 介護は自立させることが目的
  • 介助は日常生活のサポート

上記2つについて詳しく解説するので、確認してみましょう。

介護は自立させることが目的

介護とは、「自力で日常生活を送ることが困難な人に対して、生きていくのに必要な活動全般をサポートし、自立を目指す行為」です。

生活の質を向上させるために、身体介護、精神的援助、生活援助、社会的支援が挙げられます。

介助は日常生活のサポート

介助は、「介護を実現するためのサポート手段そのもの」です。

食事や排泄、入浴、更衣、移乗、歩行などを手助けする行動を指します。つまり、「介護」という大きな枠組みの中の1つに、「介助」が含まれているということになります。

介護の種類

介護にはいくつかの種類があり、種類ごとにサポートする内容が異なります。

介護の種類は次の通りです。

  • 身体介護
  • 生活援助
  • 精神的援助
  • 社会的支援

上記4つの種類について詳しく紹介していきます。

身体介護

身体介護とは、「要介護者の身体に直接触れて、日常生活に必要な動作をサポートする方法」です。

項目 概要
食事 食べ物を口に運ぶ、姿勢の調整、自助具の導入など
排泄 おむつ交換やトイレの介助、さしこみ便器や尿器の使用
入浴 洗髪や洗身、浴槽に入れる、入浴時の全身状態の観察など
更衣 衣類の着替え
移乗 ベッド・車いす間の移動
歩行 見守りや寄り添い、杖やシルバーカーの使用など

注意点として、自力で行うのに時間がかかってしまっても、介護者はすぐに手を出さないようにしましょう。

リハビリのために、自分でできることは自分で行うように促すことも大切です。

生活援助

生活援助とは、「要介護者の日常生活をサポートする方法」です。

項目 概要
炊事 買い出しや料理など
掃除 居室の掃除機がけやゴミ出しなど
洗濯 洗濯後の衣類を干したり畳む、アイロンがけ
その他 薬の受け取りやベッドメイキングなど

要介護者の生活の場は、その人にとって自分らしく過ごすための空間です。本人のこだわりや習慣に沿って、サポートするように心掛けてください。

精神的援助

精神的援助とは、「要介護者の抱えている悩みやストレスをケアし、サポートする方法」です。

  • 要介護者と積極的にコミュニケーションを取る
  • 不安や悩みに対して傾聴する
  • 要介護者が納得のいく最期を迎えるために、要介護者や家族の希望に配慮する

怪我や病気によって、思い通りに身の回りのことを行えない要介護者には、多大な精神的負担がかかります。介護者が安心して過ごすには、メンタル面のケアが欠かせません。

社会的支援

社会的支援とは、「要介護者が地域で過ごすうえで感じている不都合や悩みをサポートする方法」です。

  • ボランティアや地域コミュニティへの参加を呼びかける
  • 地域の催し物やイベントの情報を提供する

要介護者が地域の人々と良好な関係を築き、地域から孤立しないような支援も大切です。

介助の種類

介助は、要介護者が円滑に日常生活を送れるように、手助けするものです。

介助といってもいくつかの種類があり、種類ごとに応じてサポートの内容は異なります。

介助の種類は次の通りです。

  • 歩行介助
  • 食事介助
  • 更衣介助
  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • 移乗介助

上記6つの種類について、詳しく紹介していきます。

歩行介助

自力での歩行が難しい方が活動できるようにサポートします。

歩行介助にはいくつかの種類があり、要介護者の歩行能力に応じたものを選びましょう。

項目 概要
寄り添い歩行 介護者が要介護者の身体を支える
手引き歩行 介護者と要介護者が向き合い手を取って歩く
後ろからの歩行介助 要介護者の背後から脇を支える

また、歩行を支えるためにさまざまな補助具を使用している方も、転倒予防のためにサポートします。

補助具の種類 概要
要介護者の脇の下と肘を支える
歩行器 要介護者の背後から脇の下を支える
シルバーカー 要介護者の背後から脇の下を支える

長距離の歩行が難しい方の場合、途中で休憩を入れ、疲労による転倒や膝折れを防ぎましょう。

食事介助

自力で食事を取るのが難しい方をサポートします。

  • 食事前に口腔・嚥下体操を行い、だ液の分泌を促すことで誤嚥やむせこみを予防する
  • 食事中、要介護者の隣に座って食べ物を口に運んだり、食器を持てるように支えたりする
  • 食事しやすく誤嚥を予防できる姿勢に配慮する
  • 脱水を予防するため水分補給を促す

食べ物を飲み込む力が弱っている高齢者は誤嚥を起こしやすいので、介護者は注意深く見守り、必要時サポートすることが大切です。

更衣介助

自力で衣類の着替えを行えない方をサポートします。

  • 着替えやすく伸縮性のある衣類を用意する
  • できるだけ自分で着替えてもらい、必要に応じてサポートする

関節の拘縮にある要介護者の場合、無理に着替えさせようとすると怪我をするおそれがあります。しっかりと関節を支えて、要介護者の安全面に配慮した更衣を心掛けましょう。

排泄介助

排泄動作がうまくできない方をサポートします。

  • 要介護者の排泄ペースに合わせてトイレに誘導する
  • おむつや吸水パッドを交換する
  • 差し込み便器や尿器を使用して排泄を促す

排泄介助では、要介護者がどこまで1人で行えるのか、どの程度の介助を必要としているのか見極める必要があります。

要介護者に残されている機能を把握したうえで、適切な排泄介助を行ってください。

入浴介助

自力での入浴が難しい方をサポートします。

  • 洗髪や洗身によって全身の清潔を保つ
  • 入浴時に全身の状態を観察する
  • 入浴中、リラックスできる雰囲気づくりやコミュニケーションを心掛ける

入浴は、床が濡れていて滑りやすいので、要介護者が転倒しないように注意しましょう。

また、清潔を保てるだけでなく、リラクゼーション効果も得られるので、要介護者の安楽さに目を向けることも大切です。

移乗介助

起き上がりや立ち上がり、体位変換など、自力での体の移動が難しい方をサポートします。

  • ベッド・車いす間の移乗をサポートする
  • 長時間同じ姿勢をとることがないように、体の向きや位置、傾きなどを変える

また、立ち眩みやめまいなどにより体のバランスを崩してしまうと、転倒・転落のリスクが高まります。そのため、安全に移乗できるように要介護者の体を支えましょう。

特に半身麻痺の方の場合、介護者は麻痺側に立ち、車いすは麻痺がない側(健側)にセッティングします。

ただし、転倒を予防するために過剰な介助とならないように注意が必要です。要介護者の身体能力に応じた適切なサポートを心掛けてください。

介護士と介助士の違い

「介護士」と「介助士」と呼ばれる職種があり、仕事内容に違いがあります。

  • 介護士の仕事内容
  • 介助士の仕事内容

そこで、上記2点について詳しく紹介するので参考にしてみてください。

介護士の仕事内容

介護士とは、介護に関わる職業に就いている方を指します。

仕事内容 身体介護・生活援助・精神的援助・社会的支援など
メリット 資格を活かして働くことができる
資格を活かせる場所 介護施設や病院など

要介護者が必要としているさまざまなサポートを提供し、身の回りの環境を整える役割を担っています。

介助士の仕事内容

一方、介助士は介護の中でも介助に関わる場面で活躍する方を指します。

仕事内容 食事介助・排泄介助・入浴介助・更衣介助・移乗介助・歩行介助など
メリット 介護の資格がなくても介助に関する基礎的な知識や技術を身に着けることができる、介護士よりも取得するハードルが低い
資格を活かせる場所 社会貢献の場や自宅、企業など

介助士としての就職は難しいですが、介助に関する知識や技術を持ち合わせていることで、就職時に有利に働く場合があります。

要介護者の家族がいる場合、適切な対応をとることができるので安心です。介護士に比べると、介助士は取得するハードルが低く、より親しみやすい仕事であるといえます。

介護と介助の違いに関するよくある質問

「介護と介助に違いがあることが分かったけれど、もっと詳しく知りたい」と感じる方は少なくありません。

介護と介助の違いに関するよくある質問は次の通りです。

  • 介助にはどんな段階がある?
  • 介助のやりすぎが介護に繋がるのは本当?
  • 介護や介助にはどんな資格がある?

上記3つについて詳しくお答えしていきます。

介助にはどんな段階がある?

どの程度の介助を要する状態であるのか把握しやすくするために、介助を必要とする度合いを段階ごとに区分しています。

段階 概要
自立 身の回りのことを自分で行うことができる
一部介助 基本的な身の回りのことはできるが、一部に不安があるので見守りや誘導、支援が必要
半介助 何らかの手助けがあれば自分で行えることがある
全介助 手助けがあっても自分で行うことができない

介助度は生活全体のことを指すのではなく、特定の行動に対してのことを指します。

例えば、「軽度の麻痺があり、食事は自力で摂れる(自立)が、歩行や家事ではサポートが必要(一部介助)」といったケースです。

また、日常生活においてサポートが必要な一部介助・半介助の状態の場合、自立を促し、残された機能の維持・向上を目指しましょう。

介助のやりすぎが介護に繋がるのは本当?

過剰な介助は、要介護者の身体機能や活動能力の低下につながり、介護度が上がる原因になりかねません。

自分でできることは自分で行ってもらうように促し、自力では行えない部分に関してはサポートしましょう。

要介護者の自尊心や自己肯定感を保ちながら、身体機能や活動能力を保つことができます。要介護者に残されている機能の維持・向上のために、介護者は過剰な介助は控えましょう。

介護や介助にはどんな資格がある?

介護に関する資格には国家資格も含まれており、仕事内容や種類は多岐に渡ります。特に介護の現場で活躍している資格は次の通りです。

資格 仕事内容
介護職員初任者研修 要介護者の生活をサポート
護福祉士実務者研修 より実践的で質の高い介護サービスを提供する
介護福祉士 要介護者の生活のサポートや介護職員への指導も行う国家資格
介護支援専門員 ケアプランの作成・運用
介護事務 介護保険や介護に関する事務業務をこなす

「今後介護に関する仕事に就きたい」という方は、介護士の取得がおすすめです。

一方、介助に関する資格はいずれも民間資格です。

資格 仕事内容
サービス介助士 要介護者に安全な介助技術を提供する
准サービス介助士 介護の知識を深められる
防災介助士 災害に対応できる知識・技術を提供する
認知症介助士 認知症の方に対して適切に対応する

これまで介護に関わる機会が少なかった方でも、介助の資格を取得することで、社会貢献や自宅での介護に活かすことができます。

介護や介助に関する資格を取得したい方は、今後活躍したい場や目的にあったものを選びましょう。

まとめ:介助や介護の段階を見極めて生活の手助けをしよう

介護は「要介護者の自立した生活を目指すための行為そのもの」であり、介助は「介護の中に含まれている、自立支援のための手段」を指します。

要介護者の安全や安楽に配慮した介護・介助を行っていくことが大切です。ただし、適切な範囲での介助を心がけ、自立支援の機会を妨げてしまわないように注意してください。

要介護者の安全や安楽のために過剰な介助を行うと、要介護者の身体機能や活動能力の低下を招き、介護度が上がる原因になってしまうおそれがあるからです。

要介護者が周囲に必要としているサポートを見極め、残された機能の維持・向上を目指した関わりを心掛けましょう。