介護中の生活
「家族の介護をしているけれど、このまま介護うつになってしまわないか心配…」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
ここでは介護うつの原因や症状、介護うつになりやすい人の特徴などについて詳しく紹介します。この記事を最後まで読み終えていただければ、介護うつの不安を解消できます。
介護うつへの不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
● 介護うつの原因とは? ● 介護うつの5つの症状 ● 介護うつになりやすい人の特徴 ● 介護うつになった時の3つの対処法 ● 介護うつにならないための4つの対策方法 |
介護うつの原因とは?
介護うつとは、介護によるストレスや疲労が原因で発症する「うつ病」です。
介護うつに陥ると、適切な介護が行うのが難しくなってしまい、介護者・要介護者共に辛い状況に置かれてしまうおそれがあります。介護うつに陥りがちな原因は次の通りです。
- 精神的負担
- 身体的負担
- 経済的負担
- 協力者・相談者がいない
上記4つの原因について詳しく解説していきます。
精神的負担
介護中は、疲労やストレスを感じる場面が多いです。慢性的にストレスがかかっている状態が長期間続くと、次第に心身の不調が起こるようになります。
- 介護中心の生活で自分の時間を持てない
- 介護が長期化して、「いつまで続くのか分からない」と不安や孤独を感じる
- 認知症の方から暴言や暴力を受け、虚しさに襲われる
- 仕事の疲労と介護のストレスが重なる
- 頻繁に仕事を休まなければならない場合、同僚に対して申し訳なさを感じる
精神的に負担がかかっていると、介護うつを発症しやすく、症状も悪化しやすいです。精神的な限界を感じる前に、周囲に手助けを求めましょう。
身体的負担
仕事や介護による身体的疲労が重なり、慢性化した状態が継続すると、体に負担が蓄積してしまいます。
特に要介護者の介護度が高い場合、入浴や排泄の介助など、介護者の身体的な負担が大きくなりがちです。
また、女性の介護者は更年期に差し掛かると、女性ホルモンのバランスが崩れ、自律神経の乱れによる頭痛やめまい、腰痛、ほてりといった身体的不調を感じやすくなります。
介護の負担だけでなく、慢性的な疲労やホルモンバランスの変化による不調が重なると、介護うつの原因になりかねません。
経済的負担
要介護者の状態や介護度によっては、介護者が退職しなければならず、経済的に困窮してしまうケースがあります。
また、介護サービス費用も全額自己負担ではないとはいえ、家計が厳しくなってしまう原因です。
支出を減らすために外出を控えると、地域や社会から疎遠になり、不安感が強まります。さらに収入源が絶たれ、介護費用が捻出できないと、必要な介護サービスを利用できません。
介護者の負担が増え、介護うつを発症してしまう可能性が高くなるので注意が必要です。
協力者・相談者がいない
地域や身内に頼れる人がいないと、介護者は孤立した状態で悩みや不安を抱えたまま介護を行わなければなりません。
問題を解決できず、1人で背負わなければならないので、精神的に追い詰められてしまいます。
介護中の悩みや不安を打ち明け、協力を求めることで、介護者の負担を減らしましょう。
介護うつの5つの症状
介護うつは自覚症状がないまま、症状が進行・悪化しやすいです。
早期に発見し、適切に対処するには、介護うつによって起こりがちな症状について把握しておく必要があります。
そこで、介護うつで起こる症状は次の通りです。
- 睡眠障害
- 思考障害
- 食欲不振
- 疲労感や倦怠感
- 不安や焦燥感に襲われる
上記5つの症状について詳しく紹介するので、あてはまる症状がないか確認してみましょう。
睡眠障害
介護うつを発症すると、自律神経の乱れに伴い、睡眠リズムも乱れます。
睡眠障害で起こりがちな症状は次の通りです。
- 疲れているのに眠れない
- 眠っている途中で目が覚める
- 早朝に目が覚める
睡眠の質が低下し、充分な睡眠時間が確保できないことで、疲労感や心身の不調を招くおそれがあります。
思考障害
思考障害とは、気分の落ち込みや、周囲の出来事への興味・関心が薄れて消極的になることです。
思考がまとまらなくなり、集中力に欠けるので、正常に物事の判断ができなくなる場合もあります。介護だけでなく、仕事に影響を及ぼしてしまうかもしれません。
食欲不振
介護うつを発症すると、食欲が低下することが多いです。
以下のような症状が出てきたら、介護うつによる食欲不振のサインといえます。
- 食べたくないが無理やり食事を摂っている
- 食事を口に入れても味を感じにくい
- お菓子など甘いものを過剰に食べすぎて体重が増加する
栄養バランスが崩れると、体調を崩しやすくなるので注意が必要です。
疲労感や倦怠感
充分に睡眠を取っているにもかかわらず、ちょっとした動作で疲労感や怠さを感じてしまうのであれば、介護うつかもしれません。
介護うつは、慢性的な肩こりや頭痛、怠さを引き起こします。疲労感や体のだるさから動くのが億劫になり、無気力な状態が続いたら介護うつを疑いましょう。
不安や焦燥感に襲われる
原因や理由のない不安・焦りを感じるので、気持ちが落ち着かなくなります。
常に何かに追われているような気持ちが生じ、周囲に相談してもイライラや焦りがおさまりません。神経質になり、物音に過敏に反応してしまう場合もあります。
身の回りへの不安感が強まって、日常生活に支障をきたすようであれば、できるだけ早く専門的な治療を受けましょう。
介護うつになりやすい人の特徴
介護うつは介護者であれば、多くの人が発症する可能性があります。なかでも、特に介護うつになりやすい人の特徴は次の通りです。
- 真面目
- 完璧主義
- 責任感が強い
- 相談できる人が周りにいない
- 1人で考え込んでしまう
上記5つの特徴について詳しく紹介するので、参考にしてください。
真面目
真面目な方は、自分自身のことを疎かにして、介護を優先します。
介護がうまくいかなくなってしまうと、自分自身を責めることが多いです。したがって、ストレスを感じやすいので、心のバランスが崩れやすくなります。
自分の理想通りの介護を追求しすぎるのではなく、適度な手抜きを心掛けましょう。
完璧主義
完璧主義な方は、自分に厳しいので、介護への理想やハードルが高いです。
思い通りの介護が行えないと、イライラしたり、自責の念が生まれて強いストレスを感じたりします。
また、完璧にこなそうと思うあまり、自分自身のことを後回しにしてしまうことも多いです。認知症の方への介護は、必ずしも完璧にこなせるとは限りません。
ケアの拒否によって協力が得られず、予定通りのスケジュールで進めることができないケースも多いです。
「完璧主義である」という自覚のある方は、几帳面に介護し過ぎないようにしましょう。
責任感が強い
責任感が強い方は、辛い状況や問題を自分1人で抱え込みがちです。
周囲に助けを求めたり、自分の本心を打ち明けたりするのが難しいので、無意識のうちに自分自身を追い詰めてしまうことがあります。
また、疲れても休息を取ろうとせず、疲労が蓄積しやすいのも特徴です。
特に、「介護は家族である自分が行わなければならない」「家族には最期まで介護をする義務がある」といった強い思いから、介護うつを発症しやすくなるので注意しましょう。
相談できる人が周りにいない
身近に相談できる人がいないと、介護者の抱える負担が大きくなるので、自分を追い詰めてしまいます。
辛い状況であっても周囲に助けを求められないので、介護うつを発症しやすくなります。
友人や家族、ケアマネージャーなど、周囲の人に相談するように心掛けてください。
1人で考え込んでしまう
1人で介護の悩みを抱え込んでしまう方は、弱音を吐いたり、周囲に助けを求めたりするのが得意ではありません。
介護の協力者や相談相手がいないと、負担が全てかかってしまい、精神的に追い詰められてしまいます。
介護うつを発症しても、周囲に気づかれにくく、症状が悪化しやすいので注意が必要です。
介護うつになった時の3つの対処法
介護者は誰でも介護うつを起こす可能性があります。
しかし、介護うつになってしまった際は、適切な対処法をとることで改善できるので、安心してください。
介護うつになった時のおすすめの対処法は次の通りです。
- 助けを求める
- 病院でカウンセリングを受ける
- 休職して心と身体を休める
上記3つの対処法について詳しく解説していきます。
助けを求める
介護者が1人で負担を抱えるのではなく、家族や地域の人などにも助けを求めましょう。介護の協力を頼めれば、負担を軽減できるので、心身に溜まった疲労やストレスの軽減を目指せます。
また、担当のケアマネージャーや、地域包括支援センターなどに相談するのもおすすめです。
負担の軽減に役立つ介護サービスについて、手続きの方法や内容など、情報を提供してもらえます。
病院でカウンセリングを受ける
介護うつの症状がみられた場合、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
早いタイミングで治療を開始することで、比較的軽度なうちに介護うつから回復することが可能です。
自覚症状が乏しいからといって放置していると、悪化して深刻な状態に陥り、回復までに長期間かかる場合もあります。
また、特にカウンセリングで周囲に打ち明けにくい不安や悩みを話すことで、症状の改善や悪化予防の効果が期待できます。
長期間苦しみや辛さに悩むことがないように、医師による適切な診断と治療を受けてください。
休職して心と身体を休める
仕事と介護の両立による疲労を回復するためには、休職を選ぶのも大切なことです。
介護を必要とする家族がいる方は、介護休業を取得できます。介護休業とは、「2週間以上にわたって介護が必要な家族のために、通算93日まで休みを取得できる制度」です。
「3回まで分割して取得してもよい」とされています。
介護休業を取得できる方の条件は次の通りです。
- 雇用形態に関わらず、現在の職場に入社してから1年以上経っている
- 介護休業の取得予定日から93日経過後、6カ月以内に労働契約が満了しない
基本的に介護休業中は無給ですが、一定の条件を満たしていれば、給付金の受け取りも可能です。職場に介護休業を取得できるか、問い合わせてみましょう。
介護うつにならないための4つの対策方法
介護うつは症状の改善も可能ですが、できるだけ介護うつにならないように気をつけることもできます。
そこで、介護うつにならないための4つの対策方法は次の通りです。
- 悩みを相談できる環境を作る
- 睡眠や食事をしっかりとる
- 自身のストレスを把握する
- リフレッシュする時間を作る
上記4つの対策方法について詳しく紹介していきます。
悩みを相談できる環境を作る
介護は協力者が多いほど、介護者の負担を減らすことができます。
そのため、家族や友人などに悩みを相談し、介護者1人に負担がかかりすぎないように分担しましょう。ケアマネージャーや地域包括支援センターに、相談をするのもおすすめです。
また、家族や友人が近くに住んでいない場合でも、自分から積極的に連絡を取り、助けや協力を求めることで、介護うつを回避できます。
睡眠や食事をしっかりとる
栄養バランスの整った食事や、良質な睡眠を心掛けることで、心身の不調の改善が期待できます。
幸せを感じて気持ちの安定にもつながるので、好きなものや美味しいものを食べるように心掛けてください。
特に睡眠は、脳や体を休息させて、疲労回復に役立ちます。
「充分な食事時間や睡眠時間を確保するのが難しい」という方は、家族に協力を求めたり、介護サービスを活用したりしましょう。
自身のストレスを把握する
介護者は、現在自分がストレスを感じていることや、ストレスを感じやすい場面を把握しておきましょう。
ストレスのかかりやすい状況を避けたり、ストレスを解消できる方法を見つけたりできます。
介護うつにならないためには、自分自身と向き合うことも大切です。
リフレッシュする時間を作る
介護者は、介護を優先して自分のことを後回しにすることがないように、旅行や買い物、映画鑑賞といった自分の楽しみの時間を持ちましょう。
短時間でも介護から離れる時間ができると、ストレスが解消され、心の余裕が生まれます。
自分自身を大切にし、好きなことを楽しめるリフレッシュの時間は大切です。
介護に追われて自分の時間を持てなくなると、楽しみや生きがいを感じられません。
うまく気分転換をはかりながら、介護に取り組んでいきましょう。
まとめ:介護うつにならないように対策方法を理解しておこう
介護は長期化しやすく、心身や経済面での負担が大きいので、介護者は誰でも介護うつを発症する可能性があります。
真面目な性格の方や責任感の強い方など、介護うつになりやすい人の特徴に当てはまる方は、特に注意が必要です。
食欲不振や睡眠障害、疲労感など、異変を感じたらできるだけ早いタイミングで休息をとってください。
また、1人で負担を抱えるのではなく、家族や周囲の人を頼ることも大切です。介護者は介護を優先させがちですが、介護うつにならないように心身のケアも行いましょう。