
介護中の生活
「高齢で寝たきりになって毎日お風呂に入れないけれど、できるだけ清潔を保ってあげたい」とお悩みではありませんか?
ここでは、清拭の目的や手順、注意点について詳しく解説します。
この記事を最後まで読み終えていただければ、毎日入浴ができなくても、清拭によって体の清潔を保つ方法について分かります。
清拭の方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
● 清拭の目的 ● 清拭を行うための準備 ● 清拭の手順 ● 清拭を行う際の6つの注意点 ● 清拭に関するよくある質問 |
そもそも清拭の目的とは?
清拭とは、温かい蒸しタオルなどで体を拭き、清潔を保つことです。
体調不良などによって、入浴ができない場合、感染や褥瘡を防ぐことができます。
清拭の具体的な目的は次の通りです。
・入浴できない時に清潔を保つ
・身体の異常を確認できる機会がある
・血液循環を促進し褥瘡を予防する
・リラックス効果・安眠効果がある
ここでは、上記4つについて詳しく解説していきます。
入浴できない時に清潔を保つ
清潔を保つのに最も効率が良い方法は入浴です。
しかし、体調が優れない方や、寝たきりの方では、入浴が難しい場合があります。清拭ならベッド上で行えるので、入浴ができなくても全身の清潔を保つことができます。
身体の異常を確認できる機会がある
寝たきりの方は、全身を動かす機会がないため、関節が固まってしまいます。さらに、清潔が維持されにくいため、皮膚のトラブルも起こりがちです。
そのような場合は清拭によって、関節や皮膚の状態など、全身の状態を確認できます。
血液循環を促進し褥瘡を予防する
寝たきりの方は、体の一部が圧迫されて血液の循環が悪くなるため、褥瘡になるリスクが高くなります。
そのため、清拭による刺激で全身の血液の循環を促し、褥瘡を予防できる効果が期待できます。
また、すでに褥瘡ができている場合でも、清拭によって清潔を保つことで、感染や傷の悪化が予防できます。
リラックス効果・安眠効果がある
温かい蒸しタオルで身体を拭くことで、全身がさっぱりし、リラックス効果が得られます。
筋肉のこわばりが和らいだり、程よい疲労感を得られたりするので、安眠効果が期待できます。
清拭を行うための準備
清拭の必要物品とポイントは次の通りです。
必要物品 | 用途・ポイント |
バスタオル | 羞恥心に配慮して体を隠すために使用。体が冷えないように保温もできる。 |
フェイスタオル | 顔を拭く |
身体用タオル | 腕や身体を拭く |
バケツ(洗面器)と湯 | 50~55度の湯を準備する |
陰部用のタオルもしくはガーゼ | 陰部の清潔を保つために使用 |
陰部洗浄用のボトルと湯 | 陰部を洗い流すため使用。火傷しないように湯の温度は人肌程度。 |
石鹸 | 陰部を洗う時に使う |
手袋とビニールエプロン | 感染予防のために使う |
着替え | 清拭後に着替える新しい衣類 |
保湿剤や塗り薬 | 必要に応じて保湿剤や、医師から処方されている塗り薬を使う |
スムーズに清拭を行うには、あらかじめ上記のような必要物品を準備しておきましょう。
服を脱がせてから、必要物品の準備不足があると、長時間待たせてしまったり、体を冷やしたりと、負担を与えてしまいます。
清拭の手順
清拭は、上半身→下半身→陰部の順番で行います。
具体的な手順は次の通りです。
・手順1:清拭を行うことを伝え了承を得る
・手順2:顔・首の清拭
・手順3:腕の清拭
・手順4:身体の清拭
・手順5:足の清拭
・手順6:背中の清拭
・手順7:陰部の清拭
ここでは、上記7つの手順について、それぞれ詳しく解説していきます。
手順1:清拭を行うことを伝え了承を得る
清拭を行う前に、本人の意思や体調を確認し、承諾を得ましょう。
寒さを感じないように、部屋の温度は22〜24度くらいに保ちます。羞恥心やプライバシーに配慮して、カーテンや扉は閉めてください。
介護者は、エプロンと手袋を装着しましょう。
手順2:顔・首の清拭
承諾を得て準備が整い次第、顔と首から始めます。
フェイスタオルを湯に浸し、絞った後、タオルが熱すぎないか自分の腕の内側に当てて確認してください。
顔・首は、「額からこめかみ→目頭から目尻→頬から口角→首→耳」の順に拭いていきます。
目やにが固まっている時は、強くこすらず、蒸しタオルで蒸してふやかしてからふき取りましょう。タオルは毎回拭く面を変えて、同じ面を2回使わないようにしましょう。
手順3:腕の清拭
手首から腕の付け根に向かって拭きます。
指の間やわきの下、ひじの内側は汚れが残りやすいので、特に丁寧に拭きましょう。
手順4:身体の清拭
身体用のタオルを湯に浸して絞ったら、顔同様、タオルの温度を確認します。
身体は「鎖骨の上を内側から外側→鎖骨の下側を外側から内側→胸→乳房の下→お腹の真ん中と側面」の順で拭きましょう。
胸は円を描くように拭くのがポイントです。
特に女性の場合、乳房の下は汚れがたまりやすいです。乳房を持ち上げるようにして、乳房の下までしっかりと汚れをふき取ります。
お腹は「の」の字を書くように拭きましょう。腸の動きを刺激することで、便秘解消効果が期待できます。
手順5:足の清拭
身体用のタオルを湯に浸して絞ったら、タオルの温度を確認しましょう。足首から太ももに向かって拭きます。
指の間、足の甲、ひざの後ろは汚れが残りやすいので、丁寧にふき取ります。
かかとは褥瘡ができやすい部分のため、優しく触れる程度に拭きましょう。もし赤くなっている場合、触れる程度にとどめ、刺激を与えないように注意が必要です。
手順6:背中の清拭
身体用のタオルを湯に浸して絞ったら、タオルの温度を確認します。
寒さを感じさせないように、タオルで覆ったまま背中を拭きましょう。寝たきりの状態が続いていると、背中は褥瘡ができやすいため、丁寧に優しく拭いて血行を促します。
温かい蒸しタオルを背中に20秒ほど押し当てると、体が温まり、リラックス効果が得られるのでおすすめです。
手順7:陰部の清拭
陰部を拭くときは、陰部用に用意したタオルやガーゼを使います。陰部は男性と女性では拭き方が異なります。
・男性の場合:「陰茎→陰のう→肛門」の順に拭き、陰茎の包皮を伸ばし、汚れをふき取る
・女性の場合:「恥骨→肛門」の順に拭き、大陰唇・小陰唇を丁寧に拭き取る |
汚れが多い場合、よく泡立てた石鹸で優しく洗い、陰部洗浄ボトルのぬるま湯で洗い流しましょう。
清拭を行う際の6つの注意点
高齢者や寝たきりの方は体力が低下しており、体への負担もかかりやすいです。
そのため、清拭を行う際は、注意しなければならない点があります。
・体調に問題が無い時に行う
・本人のプライバシーを確保する
・力加減を本人に確認しながら進める
・体が冷えないように注意する
・食前食後1時間以内の清拭は避ける
・事前にトイレを済ませておく
上記6つについて詳しく解説していきます。
体調に問題が無い時に行う
清拭は体力を消耗するので、体調に問題がないときに行います。清拭を行う前に体調や、血圧の変動がないか確認しましょう。
本人のプライバシーを確保する
胸や陰部の清拭は、恥ずかしいと感じる部分です。バスタオルで隠すなど、プライバシーに配慮しましょう。
力加減を本人に確認しながら進める
清拭の際は、力加減に気を付けましょう。
拭くことに集中しすぎると、力がこもりやすくなってしまいますが、摩擦によって皮膚を傷付けてしまいます。ただし、力加減の好みは人それぞれ異なります。
力加減を見極めるためには、実際に拭きながら本人に声をかけて確認しましょう。
体が冷えないように注意する
清拭中は薄着であったり、肌の露出が増えたりするので、寒さを感じやすいです。部屋の温度は、22~24度となるように調整します。
また、できるだけバスタオルをかけて、できるだけ肌の露出を少なくしましょう。
食前食後1時間以内の清拭は避ける
血糖値や血圧の変動が起こりやすいです。
したがって、食前食後1時間の清拭は避けましょう。
事前にトイレを済ませておく
清拭の途中でトイレに行きたくなってしまうと、尿意や便意に意識が集中してしまいます。
そのため、清拭によるリラックス効果やさっぱりした感じが得られにくくなります。
トイレのために席を外すと、待っている間に湯の温度が冷めてしまい、湯を準備し直さなければなりません。したがって、あらかじめトイレを済ませておきましょう。
清拭に関するよくある質問
最後に、清拭に関するよくある質問に回答していきます。
清拭の手順や注意点を把握しておかなければ、清潔が保てなかったり、時間がかかりすぎて寒さを感じさせたりしてしまいます。
しかし、清拭は普段から行い慣れているものではないので、不安や疑問を感じがちです。
・清拭で本人に拭いてもらう場所はある?
・清拭を行う場合はどんな声かけをすればいい?
・清拭をスムーズに行うためのタオルのたたみ方は?
そこで、上記の3つについて、詳しくお答えしていきます。
清拭で本人に拭いてもらう場所はある?
本人の体調に問題がなければ、本人の手の届く範囲はできるだけ本人に拭いてもらうようにしましょう。
自分で拭くことで、関節や筋肉を動かすので、ちょうどよいリハビリの一環になります。背中や、汚れが落ちきらない部分は、声をかけて援助しましょう。
また、陰部はデリケートゾーンなので、羞恥心に配慮して自分で拭いてもらうと良いです。
清拭を行う場合はどんな声かけをすればいい?
清拭は無言で行うのではなく、適切な声掛けをしながら行う必要があります。清拭での声掛けのポイントは次の通りです。
【清拭を行う前】
「体調はいかがですか」「これからお身体を拭いてもよろしいですか」と、体調や清拭の承諾を確認する。 【清拭をしている途中】 「力加減はどうですか」「寒くないですか」「体調にお変わりはないですか」とリラックスできる雰囲気づくりに努める 【清拭後】 「お身体はさっぱりしましたか」「お疲れではありませんか」と気分や疲労感を確認する |
清拭は行う前から行った後まで、常に体調不良の変化に気遣いましょう。
また、充分な声掛けで体調や本人の意思を尊重することで、清拭後の満足感の高さにつながります。
清拭をスムーズに行うためのタオルのたたみ方は?
タオルは三つ折りにして、さらに半分にたたみます。できるだけ小さくたたむのがポイントです。
タオルの面積が大きいとタオルの温度が端からすぐに冷えてしまい、清拭の際に冷たいと感じる原因になります。
また、タオルの端が当たると余分な摩擦が生じてしまうので、本人の身体に当たらないように注意しましょう。
まとめ:本人に気を遣いながら清拭を行おう
清拭は、毎日入浴できない高齢者や寝たきりの方でも、清潔を保つことができます。リラックス効果が得られて気分転換にもつながるので、体調が良い日は積極的に行いましょう。
介護者にとっても、皮膚トラブルの有無や体調の変化に気付いたり、コミュニケーションを取れたりと、メリットが多いです。
ただし、体力の消耗が激しく、疲労感や体調不良の原因にもつながります。適切な声掛けで本人の意思や体調を尊重しながら、清拭を行ってください。