介護中の生活
排泄の援助が必要な人にとって、切っても切り離せないのがオムツ交換です。
しかし、どのようなオムツを使用したら良いのか、どうやってオムツ交換をするのかは介護の経験がないとイメージが困難となります。
そこで今回は、そもそもどういった状態の人に介護オムツが必要なのか、オムツ交換の具体的な手順や注意点について、詳しくお伝えしていきます。
【この記事でわかること】
● そもそも介護オムツが必要な人とは ● オムツ交換をする際の準備4つ ● オムツ交換の具体的な手順とポイント ● オムツ交換の注意点4つ |
そもそも介護オムツが必要な人とは?
介護オムツが必要な人とは、何らかの理由で排泄に問題を抱えている人です。
排尿障害などの病気や年齢による排泄機能の低下、トイレへの移動の困難さ、認知機能の低下による排泄行動の変化など、オムツを必要とする理由は多岐に渡ります。
- トイレへの移動が難しい人
- 移動時の不安や失禁のリスクがある人
- 介護オムツの提案は慎重に行う
ここではどのような場合に介護オムツの使用を検討するのか、具体的にお伝えしていきます。
トイレへの移動が難しい人
トイレへの移動が難しい人は、オムツ交換が必要です。
足腰の動きが不安定になった結果、歩行が困難な人や立ったままの姿勢を保てない人は、オムツの使用を検討する必要があります。
また、認知機能の低下によって、トイレの場所を認識するのが困難になったり、そもそも排泄すること自体を忘れてしまったりする場合もオムツの使用検討が必要です。
移動時の不安や失禁のリスクがある人
移動時の不安や失禁のリスクがある人も、オムツ交換が必要です。
高齢になると、膀胱内に尿を溜めておく機能が低下します。そのため、トイレに行きたいと思っても間に合わず、尿漏れや失禁といった尿トラブルに繋がるケースもあるので注意しましょう。
尿漏れや失禁のリスクがある人も、オムツや尿取りパットの使用を検討する必要があります。
介護オムツの提案は慎重に行う
オムツ交換を相手に提案する際は、できる限り本人の意思を尊重しながら、羞恥心に配慮したオムツの選択を促しましょう。
年齢に関わらず、排泄の援助をされるということは羞恥心を伴うものです。
トイレへ行くのが難しいから、失禁する可能性があるからといった理由だけで、安易にオムツの提案をするのは控えた方が良いでしょう。
例えば、尿漏れ程度であれば、下着に尿取りパットを当てるだけで対処できる場合もあります。
介護のオムツ交換をする際のポイント4つ
ここでは、オムツ交換をする際のポイントを解説していきます。
先にも述べた通り、排泄の援助、特にオムツ交換をされることは、介護される人にとって羞恥心を伴います。
そのため、本人の負担をできるだけ軽減しスムーズに交換できるよう、あらかじめ必要なものを準備し、適切に行うことが大切です。
- スムーズに行えるように必要なものを確認する
- 体格に合ったオムツを選ぶ
- 排尿記録から適切なサイズの尿取りパットを選ぶ
- 周囲への配慮を行う
上記4点を詳しく解説します。
スムーズに行えるように必要なものを準備する
オムツ交換をスムーズに行うために、必要なものを準備することが大切です。
- 新しいオムツ
- 尿取りパット
- トイレットペーパー、または介護用おしりふき
- 新聞紙、またはビニール袋
基本的には上記を準備しましょう。
オムツを使用している人は、排泄物が陰部に当たっている時間が長くなるため、尿路感染やオムツかぶれなどの皮膚トラブルのリスクが高くなります。そのため、1日1回は陰部洗浄を行い、陰部を清潔にすることが大切です。
陰部洗浄を行う際は、上記の物品に加え、以下の物も同時に準備します。
- 40~41℃のお湯
- 陰部洗浄用のボトル
- ボディソープ
- 軟膏(必要な場合)
必要物品はすぐに取り出せるよう、ひとまとめにしておくのがおすすめです。
体格に合ったオムツを選ぶ
使用するオムツは、本人のおしりの大きさなど体格に合ったものを選ぶようにしましょう。
体格に合わないオムツを装着すると、きつい場合は締め付けによる皮膚トラブル、逆に大き過ぎる場合は緩みによる尿や便の漏れが発生し、介護する方もされる方もデメリットによる影響を受けます。
目安は、オムツのテープ止めをしたとき、お腹とオムツの間に手のひらが入る程度のサイズです。可能であれば購入前にウエスト、おしりのサイズを測っておくと、失敗が少ないでしょう。
排尿記録から適切なサイズの尿とりパットを選ぶ
尿取りパットは、尿量やパットの交換頻度に合わせて、適切な大きさのものを選びます。
尿取りパットもオムツ同様、小さいとパットが尿を吸い切れずに尿漏れの原因になります。反対に大き過ぎると交換頻度が下がってしまい、オムツかぶれなどの皮膚トラブルにつながる恐れがあります。
適切なサイズの尿取りパットを選択するために、排尿記録を付けてみましょう。記録を付ける際は、以下の項目をノートなどにメモしてください。
- 排尿時間
- 排尿量
- 漏れがあった場合の時間
- 1日の排尿回数
まずは2、3日で構いません。記録を取ってみると、どれくらいの間隔で、どれくらいの尿量があるかがわかります。記録を参考に、交換のタイミングや尿取りパットの大きさを検討しましょう。
周囲への配慮を行う
おむつ交換の際は、周囲への配慮も怠ってはいけません。
オムツ交換の際、介護する方もされる方も気になるのが「におい」です。双方にとっての精神的な負担にもなるため、できるだけ対策しておくと良いでしょう。
においへの具体的な対策は、以下の通りです。
- こまめに尿取りパットやオムツを取り替える
- 交換の際、陰部洗浄やおしり拭きで清潔にする
- オムツ専用のビニール袋を使用する
- 密閉式のゴミ箱を使用する
- 交換後は換気を行う
芳香剤を置くのも一つの方法ですが、排泄物のにおいと混ざり、逆に不快になる場合もあるため、注意が必要です。使用する場合は、介護用のものを選ぶと良いでしょう。
介護のオムツ交換の手順
必要なものが準備できたら、以下の手順でオムツ交換を行っていきます。
- オムツと尿取りパットを足元に準備する
- 使用済みのオムツを入れるためのビニール袋や新聞紙を準備する
- ベッドの高さを上げ、使い捨て手袋を着ける
- 本人にオムツ交換する旨を伝える
- 下半身の衣類を除去する
- オムツを開け、陰部を清潔にする
- 横向きにして肛門部分を清潔にする
- 古いオムツを丸めて新しいオムツを当てる
- 体を反対の横向きにし、古いオムツを抜き取る
- オムツを正しい位置に調整してテープ止めをする
- 片付けをして本人にオムツ交換が終わった旨を伝える
オムツ交換をスムーズに行うためのポイントを手順に沿って解説していきます。
オムツと尿取りパットを足元に準備する
まず、新しいオムツと尿取りパットを広げて重ねます。
オムツと尿取りパットは前後の向きが決まっているため、正しくセットしましょう。2つを重ねたら、ベッドの足元の方に置いておきます。
また、陰部を拭くときに使用するトイレットペーパーやおしり拭きも近くに置いておきましょう。陰部洗浄をする場合は、お湯を入れたボトルやボディソープも近くに準備しておいてください。
使用済みのオムツを入れるためのビニール袋や新聞紙を準備する
使用済みのオムツをスムーズに片付けられるよう、あらかじめビニール袋を開いて床に置いておきます。新聞紙で包む場合も同様に、床に広げておきましょう。
ベッドの高さを上げて使い捨て手袋を着ける
介護する人の腰の高さまでベッドを上げます。
低すぎたり高すぎたりすると腰痛につながるため、適切な高さで介助しましょう。
本人にオムツ交換する旨を伝える
準備ができたら、介助される本人にこれからオムツ交換をすることを伝えます。声掛けをせずにいきなりオムツ交換をしようとすると、拒否や混乱につながる可能性もあります。一つ一つの動作ごとに“今何をしているか”を伝えることが大切です。
下半身の衣類を除去する
ズボンを履いている場合は膝の辺りまでしっかり下げましょう。
スカートの場合は腰までたくし上げます。使用済みのオムツを片付ける際に汚染を広げないようにするために、衣類はおしりの周りから遠ざけておきましょう。
オムツを開けて陰部を清潔にする
オムツを開け、尿がパット内に出ているのを確認したら、トイレットペーパーやおしり拭きを使って陰部の汚れを優しく拭き取ります。
女性の場合、必ず前から後ろへ(尿道側から肛門の方へ)拭くようにしましょう。後ろから前へ拭くと、大腸菌が尿道へ入り、尿路感染のリスクが上がってしまいます。
この際、尿の色や量、皮膚の状態をよく観察しておくことも大切です。
陰部洗浄をする場合は、汚れた尿取りパットを取り除き、陰部洗浄用ボトルのお湯を陰部にかけます。十分に濡らしたら、泡立てたボディソープで優しく洗ってください。洗い終えたら泡はしっかりと流しましょう。泡が残っていると、皮膚トラブルの一因になってしまいます。
横向きにして肛門部分を清潔にする
介護者が立っている方に本人の体の正面を向け、横向きの姿勢にしてから、肛門周囲の汚れを拭き取ります。陰部洗浄をする場合、上記の手順と同様に肛門周囲も洗いましょう。
古いオムツを丸めて新しいオムツを当てる
横向きの状態のまま、古いオムツの汚れた部分が内側になるように手前に丸めます。そして、準備しておいた新しいオムツの半分を、古いオムツの下に入れ込みましょう。
この際、古いオムツに特に汚染がなければ、取り替えるのは尿取りパットだけでも大丈夫です。ただし、汚染がなくても、1日の内最低1回はオムツを交換する必要があります。
体を反対の横向きにして古いオムツを抜き取る
本人が腰を上げることができる場合は仰向けに戻り、古いオムツを抜き取った上で、新しいオムツの位置を調整します。
腰上げが困難な場合は、少しだけで良いので先程とは反対の横向きになってもらい、古いオムツを抜き取り、新しいオムツを介助者側へ引っ張り出しましょう。
オムツを正しい位置に調整してテープ止めをする
本人のお腹の中心に、オムツ、尿取りパットの中心が来るよう位置を調整したら、両脚の付け根にギャザーを沿わせるようにして、オムツを閉じます。
テープ止めをする際は、きつく締め付けないよう手のひらが入る程度のゆとりを持たせましょう。また、テープ止めは平行にするのではなく、クロスするように止めるとフィット性が高まります。
オムツの装着が終わったら、下半身の衣類を元に戻します。
片付けをして本人にオムツ交換が終わった旨を伝える
あらかじめ準備しておいたビニール袋または新聞紙に、古いオムツ、陰部を拭いたペーパー、手袋をまとめ、片付けを行います。ベッドの高さや掛け物も元に戻しましょう。
そして、本人にオムツ交換が終わった旨を伝え、協力してくれたことを労ってあげてください。
介護のオムツ交換の注意点4つ
ここからは今までの手順に加え、オムツ交換をする際の注意点について解説します。
- オムツ交換が終わったら必ず換気する
- シーツやパジャマが汚れていないか確認する
- 使用後のオムツは袋に入れて空気を抜かず廃棄する
- 手洗いと消毒を忘れず行う
上記4点を順番に見ていきましょう。
オムツ交換が終わったら必ず換気する
オムツ交換が終わったら、窓を開け空気を入れ替えましょう。先にも述べた通り、においは排泄の援助をする上で切り離せないものです。
季節にもよりますが、5〜15分程換気することが望ましいです。
シーツやパジャマが汚れていないか確認する
交換を終えたらシーツやパジャマが汚れていないかをしっかり確認するようにしましょう。
オムツ交換や陰部洗浄を行う際に「ついうっかりシーツやパジャマを汚してしまった」というのはよくあることです。
また、手袋をこまめに替える、オムツの汚れた部分を内側に丸めるといった点も、周囲に汚れを広げないための重要なポイントです。
使用後のオムツは袋に入れて空気を抜かず廃棄する
オムツをしていた本人が感染症にかかっていた場合、オムツを入れたビニール袋の空気を抜くことで感染を広げてしまうおそれがあります。
少しでもゴミの「かさ」を減らそうと空気を抜きたくなりますが、そのまましっかりと口を縛って廃棄するようにしましょう。
手洗いと消毒を忘れず行う
感染症を防ぐため、オムツ交換が終わったら必ず石鹸による十分な手洗いと消毒を行いましょう。
いくら使い捨て手袋をしていても、完全に汚染を防げるわけではありません。手袋自体に小さな穴が開いていて、そこから手が汚染されるという可能性もあるので注意しましょう。
介護のオムツ交換に関するよくある質問
最後に、介護のオムツ交換に関するよくある質問を紹介します。
- オムツの横漏れ対策は?
- オムツの重ね使用の効果はある?
- 寝ている間にオムツ交換してもいい?
上記3点をそれぞれ回答していきます。
オムツの横漏れ対策は?
横漏れしてしまう理由は色々と考えられますが、多くはオムツがしっかりフィットしていないことが原因です。
オムツのサイズは大きすぎないか、お腹まわりのきつさは適切か、脚の付け根にギャザーは沿っているかといったポイントを確認しながら、オムツを当ててみましょう。
また、あらかじめ防水シーツを敷いておくことも、横漏れしてしまった場合にシーツ交換の手間が軽減されるためおすすめです。
オムツの重ね使用の効果はある?
漏れを心配するあまり、過剰にオムツや尿取りパットを重ねると、オムツ内は更にムレやすくなってしまいます。ムレは本人にとって不快なだけでなく、皮膚トラブルの原因にもなるため、重ね使用はおすすめできません。
どうしても漏れが心配だという場合は、尿取りパットの大きさを変える、長時間使用に特化したパットを使うといった対策が必要です。
寝ている間にオムツ交換してもいい?
結論から言うと、寝ている間のオムツ交換はやむを得ないでしょう。寝ているからといって長時間オムツ交換をせずに放置すると、尿路感染や皮膚トラブルの原因になるためです。
しかし、寝ているところを起こされオムツ交換をされるという状況は、介護を受ける側からすると安眠を妨げられるということになります。
寝ている際のオムツ交換は、本人の負担を最小限にするためにも、手早くスムーズに行うようにしましょう。
まとめ:介護のオムツ交換の手順を知ってスムーズにオムツ替えを行おう
今回は、介護オムツの交換の手順やポイントについてお伝えしました。
先にも述べた通り、オムツ交換は羞恥心を伴い、介護する方もされる方も負担となる援助です。
少しでも双方の負担を減らすために、手順やポイントをしっかりと押さえ、スムーズに行うことが大切です。是非今回の内容を参考に、実践してみてください。