介護中の生活
「転倒リスクが高い人への歩行介助は事故が怖くて苦手…」とお悩みではありませんか?
ここでは、歩行介助の種類と手順、注意点、転倒防止のためのポイントについて詳しく解説します。
この記事を最後まで読み終えていただけたら、歩行介助への不安を解消し、安全な移動をサポートできます。
安全な歩行介助について知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも歩行介助とは?
歩行介助とは、病気や加齢に伴い、身体機能が低下してしまった人に対して、自分の足で歩けるようにサポートすることです。
自力で歩くと、ふらつきなどにより転倒するリスクが高いため、安全に移動できるように支える必要があります。
歩行介助の種類と手順
要介助者の身体機能や体の状態に応じて、介助者の立つ位置は変わります。
介助者が押さえておきたい歩行介助の種類は5つです。
・見守り歩行介助
・寄り添い歩行介助
・手引き歩行介助
・階段の歩行介助
・補助器具を用いた歩行介助
上記5つの手順について詳しく説明していきます。
見守り歩行介助
自分で歩けるけれど、転倒リスクのあるという人には見守り歩行介助を行い、ななめ後ろで付き添います。
ただ一緒に歩くのではなく、要介助者がふらついてしまった際、すぐに支えて対応できるように注意深く様子を観察しましょう。
寄り添い歩行介助
介助者が要介助者の利き手や麻痺側とは逆側の隣に立つのが寄り添い歩行介助の特徴です。
右利きの要介助者の場合、左手で要介助者の左手を握り、右手は腰やわきの下を支えましょう。
片麻痺があっても支えれば、長い距離を歩けるという人におすすめです。
手引き歩行介助
手引き歩行介助は、介助者と要介助者がお互いに向き合って、両手を取って歩きます。介助者は後ろ向きになり、進行方向の様子を把握できないため、短い距離の移動に向いています。
また、歩行障害が重度の人でも、前後への転倒を防ぐことができます。
階段の歩行介助
階段の歩行介助では、介助者の立つ位置がポイントです。
登る際は要介助者のななめ後ろ、降りる際はななめ前に立ちます。
また、重心をかけるのは麻痺のない方の足です。登る際は麻痺のない方の足から先に出し、降りる際は麻痺のある方の足を先に出すように声をかけましょう。
階段の昇降は、転倒した際に大けがにつながる可能性が高いので、平地よりも注意深く介助を行わなければなりません。
補助器具を用いた歩行介助
歩行器などの補助器具を使っている際は、介助者がななめ後ろに立ちます。
バランスが崩れた時に素早く支えられるように、要介助者のわきの下に軽く手を添えましょう。
歩行介助を行う際の注意点
安全な歩行介助のためには、環境の整備や要介助者の服装などにも気を遣う必要があります。
・障害物に注意する
・服装の種類に注意する
・靴の種類に注意する
・休憩を取る
・補助器具のメンテナンスを怠らない
そこで、歩行介助を行う際の注意点5つについて、詳しく解説していきます。
障害物に注意する
歩行介助を必要とする要介助者の多くは、筋力が低下しているため、室内の段差や電気の配線、カーペットのふちなどを乗り越えられずにつまずいてしまうことがあります。
小さな段差でも、転倒事故につながる危険性が高まります。
足元に障害物となるものはないか移動の際に確認し、動かせるものであれば端によけておきましょう。
また、普段からよく通る場所は、なるべく物は置かないように徹底するとより安心です。
服装の種類に注意する
ウエスト周りがゆるくて移動の途中でずり落ちてきてしまったり、裾が長かったりすると、裾を踏んで転倒する危険性が高いです。
また、スムーズに歩きにくいので、集中して歩くことができません。
要介助者のウエストのサイズに合っており、裾が長すぎないズボンを履くようにしましょう。
靴の種類に注意する
スリッパやサンダルは着脱がしやすいので、好んで履きたがる高齢者は多いです。
しかし、簡単に脱げたり、滑りやすかったりするため、転倒の危険性が高まります。足のサイズに合っており、踵のあるしっかりとした靴を選びましょう。
休憩を取る
筋力や歩く能力が低下している高齢者は、少し歩くだけでも疲れやすいです。歩行介助中、目的地まで一気に歩ききるのではなく、途中で休憩を挟めば、疲労による転倒事故を防げます。
また、座って休憩した後、立ち上がる際にふらつきがみられる場合があるので注意が必要です。
ゆっくりと立ちあがるように声をかけつつ、介助者は要介助者を支えられるようにそばにいてあげましょう。
助器具のメンテナンスを怠らない
要介助者の多くは、安全に移動するために杖や歩行器といった補助器具を使っています。補助器具のメンテナンスを怠ると、劣化や故障によって、転倒事故につながる危険性が高まります。
月に1回程度は、定期的に補助器具の劣化や故障の有無などを確認しましょう。
歩行介助で転倒防止するためのポイント4つ
歩行介助中の転倒リスクはゼロではありません。
しかし、あらかじめ危険を予測して行動することで、避けられる事故も多いです。
歩行介助で転倒を防止するためのポイントは4つあります。
・介助する人の身体状態を把握する
・歩行と歩幅を合わせる
・足元を常に確認する
・周囲の環境も把握しておく
そこで、上記4つを中心に詳しく解説していきます。
介助する人の身体状態を把握する
介助者の体の状態を把握することで、どんな転倒リスクがあるのか予測することができます。
【身体状態による転倒リスク例】
・片麻痺の場合:麻痺側に転倒しやすい
・大腿骨頭部の骨折の既往歴がある場合:患側に転倒しやすい
・移動中、膝折れしやすい場合:急に尻もちをつく
介助者は、転倒しやすい側に立つことを徹底し、疲労しきるほど歩かせないように注意しましょう。
歩行と歩幅を合わせる
歩行介助は、介助者主導ではなく、要介助者の視点に立つことが大切です。無理に急いで歩かせようとすると、バランスを崩して転倒したり、ストレスに感じたりするかもしれません。
要介助者が安全に自分の足で歩けるように、歩幅を合わせて、ゆっくり一歩ずつ進みましょう。
足元を常に確認する
安全な歩行には、足の裏をしっかり地面に接地させ、足の裏全体に重心をかけることが大切です。
しかし、足の裏がしっかりと接地できていないと、重心をかけられず、ふらつきやすくなります。そのため、要介助者の足の裏が安定して接地しているか、怠らずに確認しましょう。
もし、足の裏の接地が不安定になっている場合、転倒しやすい状態なので体を支えてあげてください。
周囲の環境も把握しておく
介助される側は足元に気をとられてしまうので、介助者が周辺の状況や環境に気を配る必要があります。屋外では段差が多く、道路やマンホールは雨が降って濡れていると滑りやすくなり、とても危険です。
自転車や車との接触事故を防止するため、狭い歩道や交通量の多い道路では、介助者が車道側に立ちます。
道路の状態や車の交通量などはあらかじめ把握しておきましょう。
歩行介助に関するよくある質問
歩行介助をするにあたって、正しい知識やスキルが備わっていないと転倒リスクが高まります。
歩行介助に関するよくある質問は3つです。
・歩行介助の際にズボンを持つのは危険?
・歩行介助の際の要介助者に対する立ち位置は?
・片麻痺でも杖なしで歩ける方の歩行介助はどうする?
そこで、上記3つについて詳しく解説していきます。
歩行介助の際にズボンを持つのは危険?
歩行介助中、転倒予防のためだからといってズボンを持たないようにしましょう。
ズボンを持つことで、要介助者の下着が食い込んで不快な思いをさせてしまったり、足の動きを邪魔して歩きにくくなったりします。
転倒が心配という場合は、腰に手を添えましょう。
歩行介助の際の要介助者に対する立ち位置は?
介助者が立つのは、基本的には要介助者のななめ後ろです。
しかし、介助の仕方や、要介助者の身体の状態によって変わります。バランスを崩しても転倒することがないように、素早く支えられるポジションを意識しましょう。
片麻痺でも杖なしで歩ける方の歩行介助はどうする?
杖を使用していない片麻痺の場合、麻痺側に立ちます。
軽度であっても、片麻痺があれば歩きにくかったり、力が入りにくかったりするので、麻痺側に転倒するリスクは上がります。
ほとんど麻痺がなければ見守り歩行、ふらつきの崩れが気になれば付き添い歩行を選びましょう。
まとめ:歩行介助の際は正しい方法を理解して行おう
歩く機会が失われると、高齢者の筋力や歩く能力はさらに低下してしまいます。
高齢者が自分の足で歩く能力をできるだけ長く保ち、自立した生活を続けるためには、できるだけ自分で歩くことが大切です。
高齢者の身体の状態や歩く能力に応じて、柔軟に歩行介助の種類や方法を選ぶ必要があります。
介助者は安全で正しい歩行介助の方法について知り、転倒事故防止に努めながら、高齢者の自立した生活をサポートしましょう。