介護中の生活
介護の際に気を付けなければならないことのひとつに「食事」が挙げられます。要介護者にとって栄養のある食事は、健康的な生活を送るうえで欠かせません。それでは、介護中の食事には、どのような栄養を摂取する必要があるのでしょうか。
体力を保つためにタンパク質を
タンパク質は生きていく上で、絶対に必要なものです。タンパク質は血や肉となるため、不足すると体調不良だけではなく怪我をしやすい身体にもなってしまうのです。最近は高齢者の「低栄養」が進み、体重が落ちるだけではなく歩きにくく感じる人も増えてきています。
タンパク質の多くは、筋肉内に蓄えられています。タンパク質の摂取が低下して、身体に必要な分が不足すると筋肉内のタンパク質が使われてしまうのです。筋肉内のタンパク質が減少していくことで、筋肉量の減少や筋力低下に繋がります。その結果、運動機能や活動量が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
タンパク質不足の影響は、手足の活動だけに留まりません。食べることも噛むときは咬筋、飲みこむときは舌骨上筋群、舌骨下筋群などを使います。タンパク質不足による筋力低下は「食事」にも影響を及ぼすのです。タンパク質は体力の促進だけではなく、身体を動かすために必要な骨格筋を強くする働きがあることも覚えておきましょう。
タンパク質が不足すると免疫が下がる
タンパク質不足が及ぼすのは筋力低下だけではなく、体力や免疫力の低下にも繋がります。例えば、皮膚が弱くなり傷ができやすくなるだけではなく、治りにくくなります。また風邪や感染症にかかりやすくもなります。他にも低タンパク血症を起こしやすくなり、腹水や浮腫などを起こす人も珍しくありません。身体が浮腫やすい人などは、タンパク質が不足している可能性があるので注意しましょう。
身体機能の低下は「疲れやすさ」や「食事量が減る」などで気付く人もいます。年齢によって食べる量が少なくなっていくのは珍しくありません。中には年齢を気遣って、あえて食事量を減らしている人もいるでしょう。しかし、それが必要な栄養素を摂取できていない原因になっているかもしれません。自主的に食事量を減らしていた人は、なるべく元に戻しましょう。
良質なタンパク質を含んだ食べ物
タンパク質は様々な食品に含まれています。しかし、食べ物によって効果が変わってくるのはご存知でしょうか。卵や乳製品は身体の力を高めて骨を強くしてくれますが、肉や魚、大豆製品は血液や筋肉の元となってくれるのです。年齢を重ねると、ちょっとした食事で消化不良や胃もたれを起こします。そこで、高齢者の方がタンパク質を摂取するなら、卵や豆腐をおすすめします。卵や豆腐は、消化が良いだけではなく、良質なタンパク質も含んでいます。
特に卵は、完全栄養食と呼ばれるほどに栄養が豊富な食べ物です。ただし、コレステロールの増加につながる可能性もあるため、1日1つが適量と言われています。
タンパク質摂取量の目安は男女で異なる
タンパク質の摂取目安量は年齢や性別で異なってきます。
- 50歳~69歳の男性 ……… 101g
- 70歳以上の男性 …………… 91g
- 50歳~69歳の女性 …………78g
- 70歳以上の女性 …………… 72g
食事量が減っていた人は、いきなりこの量を摂取するのは難しいかもしれません。しかし、少しずつ食べる量を増やして、タンパク質を摂取していくようにしましょう。
年齢を重ねると、あっさりとした食べ物を好む傾向があります。あっさりとした食事でもタンパク質は摂取できますが、摂取目安量に届かない場合があります。そこで、食事のメニューにも工夫が必要です。
例えば「きゅうりの浅漬けと蒲鉾とわかめ入りうどん」よりも「豚肉と野菜入りうどんとフルーツヨーグルト」といった卵・乳製品を積極的に取り入れたメニューを考えてみてください。
タンパク質の必要性は年齢問わずですが、高齢者こそ積極的に摂取していくべきものです。栄養不足によって、要介護状態になる人も珍しくはありません。自分でできることは予防をしていき、快適な老後生活を送るようにしましょう。