介護の問題・トラブル
「高齢の家族が1人暮らしをしているので孤独死が心配…」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
ここでは、高齢者の孤独死が増えている原因や、未然に防ぐ対応策などについて詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読んでいただければ、孤独死を防ぐ方法が分かり、役立てることができます。家族の孤独死が心配な方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
● 【2022年】高齢者における孤独死の統計 ● 高齢者の孤独死が増えている原因 ● 高齢者の孤独死を未然に防ぐ対策4選 ● 高齢者における孤独死に関するよくある質問 |
【2022年】高齢者における孤独死の統計
総務省統計局の人口統計(※)によると、2021年9月15日現在の65歳以上の高齢者の人口は3,640万人であり、前年に比べ22万人増加したことで過去最多でした。
※出典:総務省統計局「No.129 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
高齢者の増加に伴い、高齢者の孤独死の問題も浮き彫りになっています。
そこで、高齢者の孤独死の統計をもう少し詳しくみていきましょう。
- 孤独死数
- 孤独死の男女比
- 孤独死の死因
上記の統計について詳しく解説していくので、確認してみましょう。
孤独死数
国土交通省の「死因別統計データ」によると、高齢者の孤独死は2003年時点で1,441人でしたが、徐々に増加傾向にあります。
2003年から2018年までの高齢者の孤独死数の推移は次の通りです。
年 | 人数 |
2003年 | 1,441人 |
2004年 | 1,650人 |
2005年 | 1,837人 |
2006年 | 1,889人 |
2007年 | 2,341人 |
2008年 | 2,205人 |
2009年 | 2,189人 |
2010年 | 2,908人 |
2011年 | 2,613人 |
2012年 | 2,727人 |
2013年 | 2,869人 |
2014年 | 2,885人 |
2015年 | 3,116人 |
2016年 | 3,175人 |
2017年 | 3,319人 |
2018年 | 3,867人 |
※出典:国土交通省「死因別統計データ」
2010年には2,908人に増加し、10年間でおよそ2倍になりました。さらに、2018年には3,867人まで増加しており、15年間の間におよそ2.6倍の増加率です。
したがって、孤独死を迎える高齢者が著しく増えていることが分かります。
孤独死の男女比
東京都監察医務院のデータによると、高齢者の孤独死の男女比は男性が圧倒的に多いと報告されています。年齢別にみた、高齢者の孤独死の男女比は次の通りです。
年齢 | 単身世帯の男性 | 単身世帯の女性 |
65~69歳 | 558人 | 98人 |
70~74歳 | 822人 | 205人 |
75~79歳 | 597人 | 255人 |
80~84歳 | 404人 | 361人 |
85歳以上 | 321人 | 586人 |
※出典:東京都監察医務院「令和2年度 年齢階級(5歳階級)、性・世帯分類別異状死数(自宅死亡)」
一般的に、退職後の男性は社会とのつながりを失うケースが多くあります。したがって、社会からの孤立が男性の孤独死の増加につながっているものと考えられるでしょう。
孤独死の死因
国土交通省の「死因別統計データ」によると、高齢者の孤独死の死因は半数以上が病死であることが分かっています。孤独死の死因に関する統計は次の通りです。
死因 | 人数 | 割合 |
病死 | 2114人 | 62.3% |
自殺 | 382人 | 11.3% |
事故死 | 60人 | 1.8% |
※出典:国土交通省「死因別統計データ」
高齢者の孤独死が増えている原因
高齢者の孤独死は増加傾向にあります。
特に、亡くなってから数日間放置されてしまうケースも少なくありません。高齢者の孤独死が増えている原因は次の通りです。
- 未婚や一人暮らしによる孤独
- 経済的な困窮
- 隣人や地域住民との交流がほとんどない
- 持病や健康管理が影響している
上記4つの原因について解説していきます。
未婚や一人暮らしによる孤独
未婚や1人暮らしの高齢者は、孤独死のリスクが高まります。
病気や怪我によって日常生活に支障をきたしても、頼れる人がいなければ、自分1人で対応しなければなりません。
また、誰かと一緒に暮らしていれば避けられるはずの緊急事態も、1人暮らしでは誰にも気付かれず、最悪のケースを迎えてしまう可能性があります。
経済的な困窮
経済的に困窮していると、生活水準が下がるので、健康リスクが増大します。
- 住居にエアコンがなく、熱中症や脱水症に陥りやすい
- 食生活が偏り、栄養不足を招く
- 季節に合った衣類や寝具がなく、体調を崩しやすい
また、通院に必要な費用を捻出することが難しくなります。結果として、体調不良でも通院できず、そのまま放置されてしまう場合も少なくありません。
したがって、必要な治療を受けられず自宅での病死につながります。
隣人や地域住民との交流がほとんどない
社会的に孤立していると、自宅にひきこもりがちの生活になります。
生きがいをなくして抑うつ状態に陥ったり、生活環境や健康状態の悪化を自力で改善できなかったりといった、「セルフネグレクト」という状態に陥りかねません。
持病や健康管理が影響している
日頃から持病のケアや健康管理が行えていないと、病死による孤独死のリスクが高くなります。
特に、持病の悪化や、アルコールの多量飲酒、筋力の低下は、突然死につながりやすいです。持病がある方や、健康管理が必要な方は、体調に変化がないか気を配りましょう。
高齢者の孤独死を未然に防ぐ対策4選
孤独死を防ぐには、家族と共に暮らすことが一番の予防策です。
しかし、家庭の事情により一人暮らしを余儀なくする方は少なくありません。高齢者の孤独死を未然に防ぐ対応は次の通りです。
- 家族がこまめな連絡を心がける
- 自治体の高齢者支援サービスを利用する
- 見守りサービスを利用する
- 介護施設への入居を検討する
上記4つの対応について、詳しく解説していきます。
家族がこまめな連絡を心がける
家族がこまめな連絡を心がけることで、体調不良や異変にいち早く気付けます。
近年では、スマートフォンを使いこなしている高齢者が多い傾向にあるので、LINEなどのツールを利用してメッセージを送り合うのがおすすめです。
自治体の高齢者支援サービスを利用する
多くの自治体にとって、高齢者の孤独死は深刻な社会問題です。
警察や民生委員、ボランティア、NPO法人といったさまざまな機関が協力して、見守り活動を行っています。自治体で行っている取り組みの例は次の通りです。
- 自治体の職員が電話や訪問によって安否確認を行う
- 警察、ゴミ収集の職員などが協力して安否確認を行う
- 配食といった高齢者支援サービスを活用して見守る
- 地域のコミュニティで、ふれあいや交流の場を設けて支援する
また、地域包括支援センターなどのホットラインは、近所同士で気軽に利用できる方法です。
「何日も洗濯物が干したままである」「郵便物や新聞が何日も溜まっている」といった異変を相談すると、職員が訪問し、安否確認を行います。
その他にも、「会話が噛み合わない」「季節にそぐわない衣類を着用している」といった認知症が疑われる言動について相談できる自治体もあります。
家族や近所の人のことで、気になる点や不安な点があれば、相談してみましょう。
見守りサービスを利用する
同居していなくても見守りサービスを利用することで、遠方でも家族の様子を知ることができます。
おすすめの見守りツールは次の通りです。
方法 | 詳細 |
自宅にカメラやセンサーを設置する | ● 動きを見守ることができる |
家電の見守りツールを活用する | ● 冷蔵庫の開閉やポットの湯沸かし機能をキャッチし、家族にメールが自動送信される
● Bluetoothを内蔵した電池型の機器により、リモコンのON、OFFで家族に通知が送られる |
スマートフォンの見守りアプリを導入する | ● 1日に数回画面に表示されるボタンをタップしてもらい、安否確認が行える |
いずれも導入は容易といえますが、高齢者にとっては「監視されている」「操作が難しそうなので自信がない」といった不信感や不安につながりかねません。
したがって、高齢者の気持ちに寄り添い、同意を得たうえでの導入を検討しましょう。
介護施設への入居を検討する
自宅での独居に不安を感じる場合、介護施設への入居を検討しましょう。
介護施設の中には、「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」など、介護の必要がない元気な方が入所できるものもあります。スタッフが常駐している介護施設なら、夜間や体調不良時でも迅速に対応してもらえるので安心です。
また、介護施設によっては、季節のイベントやアクティビティーが充実しています。社会的な孤立を防ぎ、他者とのかかわりによって、生き生きと暮らせるのも介護施設ならではの強みです。
高齢者における孤独死に関するよくある質問
「もしも家族が孤独死してしまったらどうすればいいの?」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
家族が孤独死してしまった場合は、さまざまな問題やトラブルが予想されるため、適切な対処法が求められます。
高齢者の孤独死に関する、よくある質問は次の通りです。
- 高齢者の孤立死が社会問題になっているって本当?
- 高齢者の孤独死によって起こりうる問題は?
- 高齢者の孤独死に対する地域の取り組みは?
上記3つの質問にお答えしていくので、疑問の解決にお役立てください。
高齢者の孤立死が社会問題になっているって本当?
高齢者の孤独死は増加傾向にあり、社会問題になっています。
孤独死が社会的に問題となっている理由は次の通りです。
- 賃貸住宅の場合、不動産価値が下がる
- 遺族や行政が行う後処理が大変
- 遺族に金銭的な負担がかかる
孤独死は助けを呼びたくても呼べない状況で、不安を感じながら亡くなる可能性があります。
しかし、周囲の人にとっても深刻なトラブルを残すうえ、慌ただしい中で葬儀の準備や後始末をしなければなりません。
また、死を悼む心の余裕を持てないまま、最期の別れを迎えないように、家族は生前に葬儀や相続の話し合いを進めておくことも大切です。
高齢者の孤独死によって起こりうる問題は?
高齢者が自宅で孤独死してしまい、しばらくの間放置された結果、家族が大変な思いをしてしまうケースがあります。
- 賃貸住宅に居住していた場合、賃貸人や管理会社から補償金を請求される可能性がある
- 次の入居者が事故物件に住むことになるので迷惑がかかる
- 清掃業者から特殊清掃による高額な費用を請求される可能性がある
遺された家族には、金銭的に大きな負担がかかりがちです。日頃からこまめな連絡や見守りサービスの活用を心がけ、孤独死を防ぎましょう。
高齢者の孤独死に対する地域の取り組みは?
町内会や地域コミュニティでは、地域の見守り員が独居の高齢者を見守り、訪問時に安否確認の取り組みを行っています。
地域における見守り員の役割は、孤立しやすい独居における高齢者の見守りです。
また、「最近見かけなくなった」「訪問しても応答がない」といった異変が生じた際は、必要に応じて自治体のホットラインに通報します。
自治体のみでは行き届かない、こまやかな配慮にも対応できるのが、地域の見守り員の強みです。
適切な対応策で周囲の孤独死を未然に防ごう
孤独死は1人暮らしをしている高齢者であれば、誰にでも起こりうる可能性があります。
経済的に困窮している方や、隣人や地域住民との交流がない方、健康リスクの高い方などは、特に注意が必要です。孤独死を未然に防ぐには、こまめな連絡や見守りツールの活用、自治体の高齢者支援サービスの導入などを検討してください。
また、一人暮らしの継続が難しいと判断した場合、介護施設への入所もおすすめです。孤独死は高齢者本人だけでなく、周囲の人にとっても痛ましく、社会問題となっています。
したがって、孤独死という事態を招かないように適切な対応策を取り入れましょう。