介護保険と医療保険の違いとは?優先度や併用できるケースを詳しく解説

介護保険まるわかり

「介護保険と医療保険があるけれど、どちらを使うの?」

上記のようなお悩みを抱えている人は多いと思われます。

介護保険と医療保険の違いや、優先度、併用できるケースなど詳しい仕組みを知ることで、スムーズに利用することができます。

この記事を最後まで読み終えていただければ、「自分や家族が利用できる保険制度はどちらなのか」が分かります。

利用できる保険制度の違いにお悩みの方は、参考にしてください。

【この記事でわかること】

●  介護保険・医療保険の違い

●  介護保険と医療保険の優先度の違い

●  介護保険と医療保険が併用できる3つのケース

●  介護保険と医療保険を併用する際の注意点

そもそも介護保険・医療保険とは?

家族や自分が病気、もしくは介護を必要とする状態になった際、利用できる保険制度の仕組みについて知っておくことで、スムーズに手続きを行えます。

利用できる保険制度は、主に2種類あります。

・介護保険

・医療保険

ここでは、介護保険と医療保険の詳しい内容についてご紹介します。

介護保険

介護保険とは、40歳以上の日本国民が加入する保険です。65歳以上を第一号被保険者、40~64歳を第二号被保険者として区分します。

介護保険を利用するには、介護認定を受ける必要があります。

医療保険

医療保険は、年齢を問わず、日本国民であれば全員加入する保険です。「国民皆保険制度」といって、「すべての人が公的な医療保険に加入しなければならない」と定められています。

医療保険に加入することで、怪我や病気の際に1〜3割の医療費負担で、治療を受けられます。

ただし、加入する医療保険は、職業に応じて種類が異なるので注意が必要です。

介護保険と医療保険の違い

介護保険や医療保険は、好きな方を自由に選べるというわけではなく、条件や状態に応じて、適切なものを利用できます。

そこで、介護保険と医療保険の違いは次の3つです。

・利用できる人の条件が異なる

・サービスの内容が違う

・利用限度額の有無

上記3つについて詳しく解説していきます!

利用できる人の条件が異なる

介護保険と医療保険はどちらも公的な保険ですが、利用できる人の条件が異なります。

介護保険を利用できる条件の人は次の通りです。

・65歳以上で要介護認定を受けた人

・40歳から64歳で厚生労働省が定めた16種類の特定疾病にかかり、要介護認定を受けた人

そのため、介護保険を利用するには、要介護認定を受けていなければなりません。

一方、医療保険を利用できる条件の人は次の通りです。

・医療保険に加入している40歳未満の人とその家族

・40歳~64歳の人で特定疾病にかかっていない人

・65歳以上でまだ要介護認定を受けていない人

医療保険は、病気や怪我をしている人が、適切な治療を受ける際に、医療費の助成を受けられるというものです。

介護保険よりも利用のハードルが低く、日常生活との関わりが深いため、身近な公的保険制度といえます。

サービスの内容が違う

介護保険と医療保険では、サービスを必要としている対象者がそれぞれ違うので、サービスの内容も違います。

介護保険で受けられるサービスは次の通りです。

【要支援認定で受けられるサービス】

訪問 ・介護予防・生活支援サービス事業の訪問型サービス(ホームヘルプサービス)

・介護予防訪問入浴介護

・介護予防訪問看護

・介護予防訪問リハビリテーション

・介護予防居宅療養管理指導

通所 ・介護予防・生活支援サービス事業の通所型サービス(デイサービス)

・介護予防通所リハビリテーション(デイケア)

短期入所 ・介護予防短期入所生活介護(福祉系ショートステイ)

・介護予防短期入所療養介護(医療系ショートステイ)

在宅に近い生活を支援 ・介護予防特定施設入居者生活介護
在宅生活支援 ・介護予防福祉用具貸与

・介護予防福祉用具購入費の支給

・介護予防住宅改修費の支給

地域密着型介護予防サービス ・介護予防認知症対応型通所介護(デイサービス)

・介護予防小規模多機能型居宅介護

・介護予防認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)

要支援では、要介護とならないように今の状態を維持・改善していくことが大切となります。

そのため、できない部分を支援し、できる部分を促すサービスが提供されます。

【要支援認定で受けられるサービス】

訪問 ・訪問介護(ホームヘルプサービス)

・訪問入浴介護

・訪問看護

・訪問リハビリテーション

・居宅療養管理指導

通所 ・通所介護(デイサービス)

・通所リハビリテーション(デイケア)

短期入所 ・短期入所生活介護(福祉系ショートステイ)

・短期入所療養介護(医療系ショートステイ)

在宅に近い生活を支援 ・特定施設入居者生活介護
在宅生活支援 ・福祉用具貸与

・福祉用具購入費の支給

・住宅改修費の支給

施設入所 ・介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)

・介護老人保健施設

・介護療養型医療施設

・介護医療院

地域密着型サービス ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

・夜間対応型訪問介護

・地域密着型通所介護(デイサービス)

・認知症対応型通所介護(デイサービス)

・小規模多機能型居宅介護

・認知症対応型共同生活介護 (認知症高齢者グループホーム)

・地域密着型特定施設入居者生活介護

・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 (小規模特別養護老人ホーム)

・看護小規模多機能型居宅介護

介護度が上がるにつれて、同居家族の介護の負担感が増したり、独居が難しくなったりするので、施設入所を検討する場合が多くなります。

そのため、要介護認定では、施設入所や地域密着型サービスが充実しており、地域でその人らしく生活できるように支援しています。

一方、医療保険で受けられるサービスは次の通りです。

療養の給付 病気や怪我で治療を受ける時、医療費が1~3割負担
高額療養費 1カ月の医療費が所得に応じた限度額を超えた場合、一定の自己負担額で医療を受けられる
保険外併用療養費 高度な治療を受けた時
移送費 緊急時などに移送された時
傷病手当金 病気や怪我の療養で仕事を休んだ時
出産育児一時金・出産手当金 出産した際に一律42万円給付される
埋葬料 死亡した時

医療保険では、怪我や病気を治療する際の医療費を全額負担する必要がありません。

また、仕事を休まなければならなくなった際、生活費の一部を保障してくれます。

利用限度額の有無

介護保険では、介護サービスを利用した際の自己負担額が1〜3割程度です。

ただし、利用限度額があるので、全てのサービスを1〜3割負担で利用できるというわけではありません。利用限度額を超えた分は、自己負担する必要があります。

一方、医療保険では、金額の制限がなく、一律1〜3割の自己負担額で済みます。

また、高額な医療サービスを受けた場合、自己負担額が増えてしまうので、「高額療養制度」が利用できます。高額療養制度では、1か月の間の医療費の支払いが自己負担限度額を超えてしまった際、申告することで超えた分の差額が払い戻されます。

自己負担額は所得に応じて異なるので、高額療養制度の利用を検討する際は、自己負担額を確認しておきましょう。

介護保険と医療保険の優先度の違い

介護保険と医療保険は、どちらの利用条件にも当てはまる場合がありますが、原則として介護保険が優先されます。

ただし、介護・医療場面に応じて、介護保険と医療保険の優先度が変わるので注意が必要です。

・訪問診療

・訪問看護

・訪問介護

・往診

・居宅療養管理指導

上記5つについて詳しく解説していくので、参考にしてください。

訪問診療

訪問診療を利用できるのは医療保険です。病院まで通院できない場合、医師が自宅まで定期的に訪問し、診察や薬の処方、療養・健康相談を行います。

訪問看護

訪問看護では、介護保険・医療保険のどちらの保険も利用可能です。ただし、利用する保険によって、1回の利用時間や1か月の利用回数に制限があるので注意しましょう。

訪問介護

訪問介護は、要支援・要介護認定を受けている場合に利用できるサービスです。訪問介護では原則医療行為が行われず、買い物への付き添いや炊事、洗濯といった生活援助を行います。

ただし、要件を満たした介護職員は痰の吸引や経験栄養の処置といった一部の医療行為を行えます。

往診

往診は、医療保険の利用で受けられます。訪問診療とは異なり、依頼があった際に医師が自宅を訪問するサービスです。

居宅療養管理指導

居宅療養管理指導は、介護保険が適用されます。

医師や看護師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などの専門家が自宅を訪問し、健康管理の指導やアドバイスを行います。

治療が行われないため、医療保険の適用とはなりません。

介護保険と医療保険が併用できる3つのケース

介護保険と医療保険は、原則的に併用はできません。

しかし、必ずしもどちらか一方しか利用できないということはなく、同時に利用できるのは次の場合です。

・診断名が異なるケース

・同じ診断名でも時期が異なるケース

・特定の難病に該当されるケース

そこで、上記3つのケースにおける併用の可否などを詳しく解説します。

診断名が異なるケース

別の診断名を受けた場合、それぞれの保険の適応でサービスを利用できます。

たとえば、介護保険の利用でリハビリを受けていた人が、新たに別の疾患であると分かり、リハビリが必要であると診断されれば、医療保険を利用したリハビリを受けられます。

同じ診断名でも時期が異なるケース

診断名が同じ場合、介護保険と医療保険を併用しての利用はできません。

しかし、利用する月が変わると認められる場合があります。

特定の難病に該当されるケース

厚生労働省が定める特定疾病(末期がん、多発性硬化症、重症筋無力症など19種類)の人、呼吸器疾患の急激な悪化などで治療が必要な人は、医療保険が利用可能です。

つまり、命にかかわる重症度・緊急度の高い病気の人は、介護保険と医療保険を併用できます。

そのため、要介護認定を受けて、後から末期がんであることが判明した場合、ホームヘルパーなどの介護サービスを受けながら、訪問看護・訪問診療といったサービスも受けられるということです。

介護保険と医療保険を併用する際の注意点

介護保険と医療保険を併用する際は注意点を把握しておきましょう。

・保障内容の重複で片方の保障しか受けられない場合がある

・保障内容が手厚くなるが保険料が高くなる恐れがある

上記2つについて詳しく解説していきます。

保障内容の重複で片方の保障しか受けられない場合がある

民間の医療保険と介護保険では、併用が可能です。ただし、同時加入で保障内容が重複していると、片方の保障しか受けられない場合があります。

加入して保険料を支払っているのに保障が受けられないと、月々の保険料に無駄が出てしまいます。

民間の医療保険に加入している、もしくはこれから加入しようと検討中の方は、保障内容が介護保険と重複していないか確認しましょう。

保障内容が手厚くなるが保険料が高くなる恐れがある

保障内容が手厚くなることで、より多くのサービスを受けやすくなります。ただし、サービスを追加していくうちに、自己負担額が増えてしまう場合があります。

必要なサービスを見極めて、自己負担額が高額にならないように気を付けましょう。

まとめ:介護保険と医療保険の違いを知って優先度を判断しよう

自分自身や大切な家族が、介護や治療を必要とする状態となった時、不安や戸惑いを感じがちです。

介護保険と医療保険の違いを把握し、優先度を判断してスムーズに手続きを行うことで、必要な支援をより早く受けることができます。

介護保険と医療保険は、受けられるサービスや対象となる状態が異なります。状況に応じて、それぞれ必要な社会保険の利用を検討しましょう。