介護保険まるわかり
介護保険は、40歳以上のすべての国民(健康保険加入者)が加入する制度です。保険料は、給与所得者であれば給料から自動的に天引きされ、自営業やフリーランスの方なら国民健康保険に上乗せされて徴収されます。
ところで、介護保険の仕組みや保険料など、その内容を理解されている方は少ないのではないでしょうか。ここで、保険料の算出方法や納付に関する注意点といった介護保険基本的な情報をまとめました。
40歳から払うことになる介護保険料とは?
介護保険は、原則65歳以上で要支援・要介護の認定を受けた人が介護サービスを利用する際、利用料の一部として使われる制度です。介護サービスの自己負担額は1割から3割ですが、残りは介護保険の財源によってまかなわれます。なお、40歳から64歳で末期がんや関節リウマチなどの特定疾病により支援や介護が必要な人も、介護サービスを利用できます。
介護保険の加入者は、65歳以上の第1号被保険者と40歳から64歳までの第2号被保険者にわかれます。第1号被保険者と第2号被保険者とでは、保険料の計算方法や納付方法が異なります。詳しくは、後ほど説明します。
40歳から終身まで介護保険料の支払いは続く
先ほども紹介した通り、介護サービスを利用するにあたって、所得に応じて自己負担額は最大3割というのは多くの人にとって周知の事実。
残りの1割は、介護保険の財源によってまかなわれています。
つまり、40歳以上から納める必要がある「介護保険料」とそこに乗っかる税金が財源となります。
そんな介護保険料ですが、満40歳以上の人が対象となり、支払いは終身まで続きます。
特に面倒な手続きは不要なので、40歳を迎える前日から保険料支払いの義務が発生することを覚えておきましょう。
現役世代といわれる40~64歳は第2号被保険者と呼ばれ、健康保険料の一部として納付します。
その後第1号被保険者と呼ばれる65歳以上になると、健康保険料とは別にこの「介護保険料」を納付するのです。
これまでは健康保険料の一部として納付して来たものが、別途「介護保険料」という名前で徴収されるので、多くの人にとって戸惑いが隠せない問題でもあります。
ですが介護保険料を納付していれば、介護保険サービスが利用可能となるので嬉しい制度でもあります。
財源は保険料と公費
介護保険の財源は、40歳以上の方が納める介護保険料のほかにも、国や自治体の公費があり、それぞれ半分ずつ負担する仕組みになっています。このうち介護保険料は、第1号被保険者と第2号被保険者の割合が決まっており、3年ごとに改定されます。
ちなみに、令和2年度の割合は、第1号被保険者が23%、第2号被保険者が27%、公費が50%です。
介護保険料の計算方法
介護保険料は、第1号被保険者と第2号被保険者とで算出方法が異なります。それぞれ下記の計算式を説明します。
- 第1号被保険者の計算方法
- 第2号被保険者の計算方法(国民健康保険)
- 第2号被保険者の計算方法(協会けんぽ)
第1号被保険者の計算方法
65歳以上の第1号被保険者の介護保険料は、以下の公式で求められます。
- 保険料=「基準額」×「所得に応じた割合」
基準額とは、65歳以上の人が利用する介護サービスに必要な財源を、その自治体に住む65歳以上の人口で割った額です。基準額は自治体によって異なり、一例として大阪市の場合は、月額7,927円(年額9万5,124円)になります(平成30年度から令和2年度の場合)。
所得に応じた割合とは、所得をランク分けして定めた倍率のこと。大阪市の場合は11段階にわかれ、もっとも低いのが0.5倍、もっとも高いのが2倍です。所得が多い人ほど、保険料を多く納める仕組みになっています。
なお、所得の低い段階の人は、年によって割合が低くなる自治体もあります。大阪市もその一つで、所得がもっとも低い第1段階の場合、平成30年度は0.5倍ですが令和2年度は0.35倍に下がります。
これらの数値から、大阪市の第1号被保険者が支払う保険料を計算すると、もっとも低い人で月額約2,774~3,963円(年額3万3,294~4万7,562円)、もっとも高い人は月額1万5,854円(年額19万248円)になります(平成30年度から令和2年度の場合)。
基準額や所得に応じた倍率は3年ごとに見直されます。自分が住んでいる自治体の基準額や所得に応じた割合を知りたい方は、役所のホームページや高齢福祉課の相談窓口などで確認しましょう。
第2号被保険者の計算方法(国民健康保険)
40歳から64歳までの第2号被保険者の保険料は、加入している保険組合や自治体によって異なります。たとえば、国民健康保険では、以下四つの項目を足して算出しています。
- 介護保険料=所得割額+均等割額+平等割額+資産割額
(国民健康保険加入者の場合)
所得割額とは、本人または世帯の前年所得額に応じて定められた金額で、被保険者ごとに異なります。また算出方法も自治体によって異なり、大阪市では以下の公式で算出されます。
- 所得割額=(前年所得額-33万円)×2.62%
(令和2年度の大阪市の場合)
また、均等割額、平等割額、資産割額は自治体ごとに定められています。大阪市の場合、均等割額は4,424円、平等割額は1万3,396円です(資産割額はありません)。
これらを足した額が介護保険料となり、最高限度額は16万円としています。
第2号被保険者の計算方法(協会けんぽ)
第2号被保険者で、給与所得者の介護保険料の算出方法は、加入している健康保険組合によって異なります。一例として、全国健康保険協会(協会けんぽ)だと、以下の公式で求められます。
- 介護保険料=(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率
(協会けんぽの場合)
標準報酬月額とは、給与などの報酬を段階分けしたもので、都道府県が定める「標準報酬月額表」で決まります。大阪府の場合、月額の給与が19万5,000円以上21万円未満の標準報酬月額は20万円、21万円以上23万円未満だと22万円などと区分されています。
標準賞与額とは賞与の総額で、1,000円未満は切り捨てです。介護保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)が全国一律で設定している数値で、2020年度は1.79%です。
先述の通り健康保険組合によっても異なるため、詳しい保険料は所属している組合に確認しましょう。
介護保険料の納付方法
ここでは、以下3点の詳しい納付方法について紹介していきます。
- 第1号被保険者の納付方法
- 第2号被保険者の納付方法(国民健康保険)
- 第2号被保険者の納付方法(協会けんぽ)
介護保険料の納付方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異ります。
それぞれ自分が該当する納付方法をチェックしておきましょう。
第1号被保険者の納付方法
第1号被保険者の場合、年金額に応じて納付方法が変化します。
ポイントは、年金額が年18万円以上あるかどうかです。
年18万円以上年金額がある人は、自動的に年金から天引きされます。
仮に年18万円未満の人だと、自治体から納付書が送られてくるのでそれで納めることとなります。
介護保険料の計算方法は、先ほど紹介した以下の通りです。
- 自治体が定めた基準額×自身の段階の係数=介護保険料
段階は人によって異なり、状況に応じて細かく分類されています。
段階と対象者はそれぞれ以下の通りとなり、該当する係数と基準額で割り出せるので参考にしてみてください。
段階 | 対象者 | 係数 |
第1段階 | ・世帯全員が市区町村民税非課税の老齢福祉年金受給者 ・世帯全員が市区町村民税非課税かつ、本人の年金収入などが年額80万円以下であること |
0.5 |
第2段階 | ・世帯全員が市区町村民税非課税かつ、本人の年金収入などが年額80万円以上120万円以下であること | 0.75 |
第3段階 | ・世帯全員が市区町村民税非課税かつ、本人の年金収入などが年額120万円を超えていること | 0.75 |
第4段階 | ・世帯に市区町村民税課税者がいるものの、本人が市区町村民税非課税者であり、年金収入などが年額80万円以下であること | 0.9 |
第5段階 | ・世帯に市区町村民税課税者がいるものの、本人が市区町村民税非課税者であり、年金収入などが年額80万円超えていること | 1.0 |
第6段階 | ・本人が市区町村民税非課税かつ合計所得が年額120万円未満であること | 1.2 |
第7段階 | ・本人が市区町村民税非課税かつ合計所得が年額120万円以上190万円未満であること | 1.3 |
第8段階 | ・本人が市区町村民税非課税かつ合計所得が年額190万円以上290万円未満であること | 1.5 |
第9段階 | ・本人が市区町村民税非課税かつ合計所得が年額290万円超えていること | 1.7 |
第2号被保険者の納付方法(国民健康保険)
一方で第2号被保険者の場合だと、介護保険料は国民健康保険の一部として支払いをします。
自営業や従業員問わず、納付方法は同じです。
第1号被保険者のように、別途介護保険料を用意する必要はありません。
第2号被保険者の納付方法(協会けんぽ)
協会けんぽなど、国民健康保険以外の保険に加入している場合も変わらず、国民健康保険の一部として支払いをします。
特に難しい手続きをすることもありません。
介護保険料を滞納した場合はどうなる?
介護保険は、40歳以上の方が全員加入する制度です。自治体に何の届出もなく、故意に納めない人に対してはペナルティが課せられますから注意が必要です。
納付期限までに支払わなかった人には、期限の20日後までに督促状が送られてきます。このとき、保険料とは別に督促手数料と延滞金も発生します。延滞金は日割計算で算出され、納付日が遅くなるほど高くなります。
督促状を無視して滞納期間が1年から1年6ヵ月になると、介護サービス利用料の自己負担額が全額負担になります。ただし、この期間内に滞納分を納めれば返還申請ができます。
1年6ヵ月を過ぎると返還申請ができなくなり、全額自己負担に。そして滞納期間が2年を過ぎると、未納分が納められなくなります。これを「未納の確定」といいます。過去10年以内に未納の確定がある人は、その滞納期間だけ介護サービス利用料の自己負担額が3割となるほか、高額介護サービス費制度が受けられません。
介護保険料を滞納すると、将来介護が必要になった際に自分が困ることになります。必ず納付期限までに納めましょう。
介護保険料に関する注意点
基本的に保険料は、前年度の所得から金額が割り出されます。
そのためフリーランスなどの自営業をやっている人や、近頃勤めていた会社を退職したなど。
収入状況に大きな変化がある人は、現時点での収入に見合わない金額になる場合があるので要注意です。
ただし、退職などの理由でやむを得ず収入が減ってしまった場合は、「退職者特例」などの制度を設けている自治体も存在しているので要確認が必要です。
保険料の減免について
何らかの理由で、介護保険料が支払えない方もいらっしゃるでしょう。
たとえば、前年に勤めていた会社を退職して収入が減った場合、保険料は前年の収入に応じて算出されるため、現在の収入に見合わない保険料が求められるケースもあります。このようなケースに対して、前年度の収入を減らして保険料を減免できる特例を設ける自治体もありますから、該当する方は退職前に確認しておきましょう。
また、本人か世帯の所得額に応じて介護保険料の減免制度を設けている自治体もあります。大阪市では、世帯所得が基準額(令和2年度は年額9万5,124円)を下回っている人について、平等割額と均等割額を2~7割軽減して保険料を計算する減免制度があります。
このほか、「勤め先が倒産した」「解雇された」などの理由で離職された人への軽減措置や、災害で住まいに被害が生じた人への減免などもあります。条件は自治体によって異なりますから、経済的に困っている方は自治体に相談してみましょう。
介護保険料が高過ぎるから減免したい場合
住んでいる地域によって異なるものの、条件によっては介護保険料の減免が可能な場合があります。
- 震災や水害などで、住宅や家財などが損害を受けた
- 事故などの大きな障害を負ってしまった
- 長期入院のため収入が減った
- 倒産や失業によって、収入が減った
- 前年の世帯収入が、基準収入額を下回ったなど
上記の減免の条件は、ごく一部に過ぎません。
自分が住んでいる自治体に問い合わせをして、減免条件を把握しておくことをおすすめします。
まとめ
介護保険料は、40歳になると自動的に徴収されます。
保険料が突然アップするため、最初は戸惑う人もいます。
ですが自分はもちろん家族が要支援・要介護に認定された際は、介護保険の重要性がわかるはずです。
いざという時のために、介護サービスを有効活用する上でも制度や仕組みを正しく理解しておくことが大切なのです。