介護保険の問題点は解決しているのか

介護保険まるわかり

2017年9月の時点で、全人口に占める65歳以上の割合が27%超である日本は、「超高齢社会」に突入しています。高齢者への社会保障は、社会全体の課題にもなっており、その基本政策として施行されたのが「公的介護保険制度」です。しかし、超高齢社会と少子化によって、労働人口が減少し、社会保障費が増えるといった財政問題が起きています。同制度の財政面や高齢者支援の現状など、介護保険制度の問題点をみていきましょう。

消費税が上がって介護制度は充実したのか

介護保険の財源は、税収のような公費負担と、同保険加入者から徴収される介護保険料で構成されています。公費負担は、被保険者の負担を軽減するため、国・県・市が負担しています。その割合は、国:都道府県:市町村で、およそ2:1:1です。なお、財政が厳しい地方自治体に対して、より多くの交付金(調整交付金)を与え、市町村格差を減らすように努めています。

日本の社会保障費は、高齢者の増加に伴い、年々拡大しています。「年金、医療及び介護の社会保障給付」に必要な経費に充てるように定められ、その財源の一つに消費税があります。導入当初は3%だった消費税率は、1997年度からは5%に、2014年度には現在の8%に引き上げられました。今も社会保障費は増大を続けているため、2019年10月には消費税率10%の引き上げが予定されています。

消費税率引き上げられたことで財源が拡充され、介護職員の雇用環境や賃金の一部改善などが図られました。しかし、財政状況は依然厳しく、被保険者への「負担増」となる制度の見直しも行われているため、まだまだ改善が必要といえるでしょう。

家族が要介護になった場合は

自分の親や配偶者が要介護になった場合、どのように介護をしたらいいのか悩んでしまう方も多くいらっしゃいます。養護施設への入所を希望しても、入れるところがすぐ見つかるとは限りません。また、要介護レベル1や2の人は、施設への入所が基本的には認められていないという問題もあります。

同居している親や配偶者の介護によって、転職や退職を余儀なくされる人は少なくありません。これは「介護離職」と呼ばれ、その数は毎年10万人以上の方が該当すると言われています。核家族化が進んでいることや、要介護度が低い方に対する支援制度が限定的といったことが、介護離職の原因として考えられるでしょう。「介護休職制度」を導入する企業もありますが、取得率は男女の合計が5%未満であり、一般的に普及しているとは言い切れません。

介護施設に入所出来ない人もいる

在宅介護ができない、自力での生活が困難となれば、施設への入所を検討することになります。しかし、希望すれば誰でも好きな施設に入所できるとは限りません。施設にはそれぞれ入所条件があり、受け入れ可能な支援レベルや医療依存度、年齢などを定めています。

また、入所希望の高齢者が増え、施設自体が既に満員となっている可能性もあります。介護を必要としていた場合でも、支援を受けることができていない方も多くいらっしゃるのです。

介護に関することは改善点が多くあげられている

より深刻な問題になっているのが、人材不足です。特に地方では過疎化によって、介護に携わる人がより減少しています。介護施設の収容者数に余裕があっても、介護士や看護師などが十分に確保できず、入居受け入れを制限していることもあるようです。

この他にも、65歳以上の高齢者同士による「老老介護」や、認知症を発症している高齢者同士での「認認介護」など、超高齢社会ならではの新たな課題も出てきました。また、施設において虐待といった事件も起きており、入所者と従業員双方のために、環境改善が必要不可欠といえるでしょう。

さらに高齢化が進む日本社会において、高齢者の介護環境をより良いものにしていく必要があります。当事者である高齢者や非介護者のみならず、若い世代の方も、介護の問題解決を行っていくことが大切です。