老人ホーム・介護施設・介護サービスの種類
「高齢者向けの施設にはさまざまな種類があるので、どんなところを選べばいいのか分からない…」とお悩みの方は多いです。
ここでは、「グループホーム」と「有料老人ホーム」の違いについて説明します。
希望する条件にぴったり合う施設を探したいという方は、参考にしてください。
【この記事でわかること】
● グループホームと有料老人ホームの特徴 ● グループホームと有料老人ホームのメリット・デメリット ● グループホームと有料老人ホームを選ぶポイント |
グループホームと有料老人ホームの違いはある?
グループホームと有料老人ホームは、共に高齢者が入所する施設です。ただし、入所条件や提供している介護サービスの内容、費用が異なります。
それぞれの違いを理解したうえで、希望通りの条件にぴったり合う施設を選びましょう。
グループホームの特徴
グループホームは高齢者向けの小規模な介護施設です。
特徴は次の3つです。
・認知症ケアに重点を置く
・要支援2以上の認知症高齢者が対象
・住民票が登録されている自治体の施設のみ利用可能
これらの3つについて詳しく説明していきます。
認知症ケアに重点を置く
認知症の入居者に対して、症状を安定させたり、進行を遅らせたりするのが目的です。
認知症ケアに特化した専門スタッフから、介護サービスや機能訓練を受けながら、料理や掃除といった家事を分担しながら共同で生活します。
要支援2以上の認知症高齢者が対象
自宅での生活を続けるのが難しいと感じている要支援2以上の認知症高齢者が対象となります。軽度〜中程度の認知症で、身体が元気な方が多いです。
重度の介護や医療ケアが必要となった場合は退去しなければならない可能性があります。
住民票が登録されている自治体の施設のみ利用可能
住民票が登録されている自治体の施設のみ入居できます。
地域密着型と呼ばれ、住み慣れた地域で介護サービスを受けられます。
有料老人ホームの特徴
有料老人ホームは、高齢者向けのホテルライクな介護施設です。
特徴は次の2つです。
・ニーズに合わせて選べる
・介護度の制限が緩い
これら2つについて詳しく解説していきます。
ニーズに合わせて選べる
有料老人ホームは、3つの種類に分けられます。
それぞれの違いを把握したうえで、ニーズに合っているものを選びましょう。
・介護付き有料老人ホーム:常駐スタッフによる手厚い介護・生活支援サービスを受けられる
・住宅型有料老人ホーム:費用が安い代わりに常駐スタッフによる介護サービスがない
・健康型有料老人ホーム:自立者のみが対象でトレーニングルーム等が充実
定員は数名程度から100名以上とさまざまです。
また、内装や外観はホテルのように華美な場合が多いです。
介護度の制限が緩い
高齢者を入居対象としており、入居できる介護度は施設によって異なります。
手厚い生活支援・介護サービスを提供し、より満足度の高い生活を送ってもらうことが目的のため、入居者の自立度や介護度はさまざまです。
そのため、入居している方は必ずしも認知症ケアや医療ケアを受けるとは限りません。
グループホームのメリット4選
「それぞれの特徴は分かったけれど、具体的にどんなメリットがあるの?」と疑問に感じてしまう方は多いです。
そこで、グループホームのメリットは次の4つです。
・有料老人ホームより安く入居できる
・スタッフの専門的な知識が多い
・家庭的な雰囲気で生活できる
・生活そのものが認知症の抑制・緩和に繋がる
これら4つについて詳しく解説していきます。
有料老人ホームより安く入居できる
グループホームは初期費用が数百万円程度、月額費用はおよそ15〜30万円程度です。
初期費用には保証金、敷金、入居一時金などが含まれ、退去時に一部費用が返還される場合があります。また、生活保護受給者に対応していれば、生活保護受給中の方でも入れます。
一方で、有料老人ホームは場所にもよりますが初期費用が1億円以上、月額費用は12〜40万円とかなり高額です。有料老人ホームに比べて、グループホームは経済的負担が少ないのは、大きなメリットといえます。
スタッフの専門的な知識が多い
認知症の高齢者が入居するため、スタッフは認知症ケアへの専門的な知識が豊富です。認知症の進行を遅らせたり、症状を安定させたりするために、園芸療法や音楽療法などを行います。
入居者本人のこれまでの生活歴を尊重して、興味が持てそうなレクリエーションを選択してくれるので安心です。
家庭的な雰囲気で生活できる
認知症の方は不慣れな環境に適応するのが苦手で、不安を感じてしまいがちです。
グループホームは家庭的な雰囲気や、少人数での共同生活によって、生活環境の変化に馴染みやすいように配慮されています。
また、住み慣れた地域で生活を続けられるのも嬉しいポイントです。
生活そのものが認知症の抑制・緩和に繋がる
入居者は、能力に応じて料理や掃除を行います。
生活そのものがリハビリの一環となっており、認知症の進行を緩やかにしたり、症状を落ち着かせたりする効果が期待できます。
また、援助が必要な部分に関してはスタッフがサポートするので、事故や怪我の心配がありません。
グループホームのデメリット3選
メリットだけでなく、当然デメリットも存在します。
グループホームのデメリットは次の3つです。
・医療サービスに限界がある
・入居に制限がある
・定員が少ないためすぐに入居できない
これら3つについて詳しく解説していきます。
医療サービスに限界がある
グループホームの医療体制は充分ではありません。
医師や看護師の常駐が義務付けられていないため、医療ケアを必要とする方は入居が難しいです。
また、入居中に高度な医療ケアが必要な状態になり、退去せざるを得ない場合があります。
入居に制限がある
要支援2以上で軽度~中程度の認知症がある方が対象です。そのため、希望する全ての高齢者が入居できるわけではありません。
要支援認定と認知症の診断が必要となるため、グループホームへの入居はハードルがやや高いということに注意が必要です。
定員が少ないためすぐに入居できない
小規模運営のため、定員数が少ないです。
そのため、希望を出しても、空きが出るまで長期間待つ場合があります。
有料老人ホームのメリット5選
グループホームとの違いについて理解するうえで、有料老人ホームのメリットも把握しましょう。有料老人ホームのメリットは次の5つです。
・すぐに入居できる場合が多い
・医療体制が充実している
・介護レベルが上がってもサービスを続けられる
・ニーズに合った施設を見つけやすい
・入居者同士のトラブルに対して調整しやすい
これら5つについて詳しく解説していきます。
すぐに入居できる場合が多い
入居を希望すれば、長期間待たない場合が多いです。
施設数が多いのはもちろんですが、要支援・要介護の認定が必要ありません。そのため、入居条件のハードル自体は低いです。
医療体制が充実している
看護師の常駐が義務付けられているので、医療体制が充実しています。インスリン注射や経管栄養など、容体が落ち着いていて、重症ではない医療ケアなら受けられます。
定期検診といった日常的な健康管理や緊急時対応などは、医療機関と提携しているので安心です。
また、その他の医療サポート体制は、施設によってさまざまです。24時間看護師が常駐していたり、医療機関と併設していたりします。
より手厚い医療を受けたいと考えている方は、希望する施設の医療サポート体制について把握しておきましょう。
介護レベルが上がってもサービスを続けられる
自立して生活できる方に限らず、要介護5に上がってもサービスを続けて受けられる施設があります。
長期間の入居を希望している方は、介護レベルが上がっても退去の必要がない施設を選びましょう。
また、終身で入居でき、看取りにも対応していれば、介護レベルが変わったタイミングで他の施設を探し直す必要がありません。
もしも看取り介護を希望する場合は、24時間看護師が常駐している施設がおすすめです。
ニーズに合った施設を見つけやすい
有料老人ホームには、入居の目的や提供されるサービスなどが異なり、主に3つの種類があります。
・介護付き有料老人ホーム:介護を必要とする高齢者を対象に、介護や生活支援を提供
・住宅型有料老人ホーム:自立~要介護高齢者を対象に、生活支援の提供があり、外部の介護サービスが利用可能
・健康型有料老人ホーム:自立している高齢者を対象に、家事のサポートや食事のサービスを提供
介護サービスを受けることまで想定している方は、介護付き有料老人ホームへの入居を検討しましょう。
また、将来的に介護サービスを受けたいと考えている方は、住宅型有料老人ホームがおすすめです。
入居者同士のトラブルに対して調整しやすい
入居者数は数名〜100名程度と施設によってさまざまです。入居者数が多い施設であれば、相性が合わない入居者がいても、スタッフが間に入って調整できます。
有料老人ホームのデメリット4選
有料老人ホームはデメリットについても把握したうえで、入居を検討しましょう。
・施設内の人が多く認知症高齢者が混乱しやすい
・認知症の知識が浅いスタッフもいる
・生活自体が認知症のリハビリに繋がりにくい
・グループホームよりも費用が高い
これら4つについて詳しく解説していきます。
施設内の人が多く認知症高齢者が混乱しやすい
入居者数が多いため、他の入居者の顔を覚えきれない認知症高齢者は、混乱してしまう場合があります。
また、家庭的というよりもホテルのような雰囲気なので、自分がどこにいるのか正しく把握しにくく、より戸惑いやすくなりがちです。
認知症の知識が浅いスタッフもいる
認知症のケアに特化していないので、認知症に関して知識の浅いスタッフもいます。
認知症の入居者に適切な対応や声掛けが行われないことで、「尊厳を守られていない」と傷付き、自信を喪失してしまう可能性があります。
生活自体が認知症のリハビリに繋がりにくい
認知症の予防・改善といった、リハビリの効果が期待しにくいです。なぜなら、料理や掃除といった家事を自分で行う必要がないからです。
また、認知症ケアに特化した認知療法は行わず、カラオケや囲碁といったレクリエーションが行われています。
グループホームよりも費用が高い
月額費用の高さも目立ちますが、入居一時金にあたる初期費用が莫大です。施設によって費用は異なるものの、高額だと入居時に1億円以上支払う場合もあります。
年金のみで有料老人ホームの費用を捻出するのは難しいといえます。
グループホームと有料老人ホームの比較表
グループホーム | 有料老人ホーム | |
入居条件
|
要支援1以上の認知症高齢者
施設がある市町村に住民票がある |
「自立」「自立~要介護5」「要支援1~要介護5など施設によって異なる |
介護体制 | 入居者:介護スタッフ=3:1 | 入居者:介護スタッフ=3:1
看護師1名以上 ※介護付き有料老人ホームの場合 |
規模 | 定員9~27名 | 定員数名~100名以上 |
退去要件 | 重度の認知症・寝たきり・医療ケアが必要になった場合など | 長期入院・認知症などで他の入居者への迷惑行為がある場合など |
自由度 | 認知症の症状の進行度合いによって、1人での外出は制限される | 状態によって安全であると判断されれば1人での外出・外泊も可能 |
費用 | 初期費用/0~数百万円
月額費用/15~30万円 |
初期費用/0~1億円
月額費用/12~40万円 |
グループホームと有料老人ホームを選ぶポイント4選
施設ごとの違いを把握したうえで、どちらが希望する条件や目的に合っているのか判断して選びましょう。グループホームと有料老人ホームを選ぶポイントは4つです。
・生活の自由度の違いで選ぶ
・介護スタッフの人数で選ぶ
・医療ケアの充実度で選ぶ
・費用の違いで選ぶ
これら4つについて詳しく解説していきます。
生活の自由度の違いで選ぶ
生活の自由度が高いのは、有料老人ホームです。
必ずしも認知症であったり、介護を必要とする状況であったりするとは限らないので、比較的自由に生活できます。
「まだ心身ともに健康であるけれど、将来的に自宅での生活が心配」という方は、自由度の高い有料老人ホームへの入居がおすすめです。
介護スタッフの人数で選ぶ
グループホームと介護付き有料老人ホームにおける介護スタッフの人員配置数は、「入居者:介護スタッフ=3:1」と同じです。
ただし、住宅型・健康型の有料老人ホームは、介護スタッフの人員配置の基準が定められていません。
介護スタッフが常駐していない場合があるので、注意が必要です。
医療ケアの充実度で選ぶ
医療ケアが充実しているのは、看護師の配置が義務付けられている有料老人ホームです。
容体が落ち着いていて、重症ではない医療ケアであれば看護師が対応可能なので、安心して入居できます。
費用の違いで選ぶ
費用をできるだけ抑えたいという方には、グループホームがおすすめです。初期費用を抑えられ、退去時も一部費用の返還が受け取れる場合があります。
また、生活保護受給中でも入居できるグループホームもあるので、入居者家族の経済的負担が少なく済みます。
まとめ:グループホームと有料老人ホームの違いを知って自身に合った施設を選ぼう
介護施設は介護や医療ケア、生活の援助を必要としている高齢者にとって、その人らしく暮らす大切な生活の場です。
施設選びでは、どのような目的で入居したいかを考える必要があります。
軽度~中程度の認知症で、認知症ケアを受けながら地域で生活したいと考えている方には、地域密着型で家庭的なグループホームがおすすめです。
一方、介護サービスや生活支援を受けながら、自由度の高い生活を希望している方は、終身で入居できる有料老人ホームを選びましょう。
それぞれの施設のメリット・デメリットを把握したうえで、希望している条件や目的に合っている施設への入居を検討してみてください。