まだら認知症とは?症状や原因、予防対策についてわかりやすく解説

認知症の全知識

認知症には、朝できていたことが夕方はできない、もの忘れが激しいのに難しい計算はできるなど、症状に波が生じるケースがあります。

このような状態を「まだら認知症」といいます。

この記事では、まだら認知症について詳しく解説するとともに、原因や対応について解説します。

まだら認知症とは?

「まだら認知症」とは、脳血管性認知症の初期症状の一つです。

アルツハイマー型認知症とは違って、すべての機能が低下してしまうわけではなく、一部の機能のみが低下するものの、ほかの機能は以前と変わりません。

時間帯によって現れる症状が異なったり、一部の機能しか低下しなかったりするため、周囲も気づきにくく自覚症状がないケースもあります。

認知症の診断がつかなかったり、遅くなったりしてしまうこともあるのです。

まだら認知症は軽視されやすい

まだら認知症の症状は、出たり出なかったりするため発見が遅れがちです。

ただし、周囲の人に見過ごされたまま放置していると、症状が進行してしまう場合があります。

「急に物忘れが増えておかしい」と感じた場合、もしかしたらまだら認知症かもしれないので気を付けましょう。

まだら認知症の症状

まだら認知症は、症状の現れ方に偏りがあるのが一番の特徴です。

記銘力(ものを覚える能力)・遂行能力(ものごとを成し遂げる能力)の低下が目立ちますが、判断力や専門的知識はしっかりしています。

【その他に現れる症状】

・頭痛やめまい、耳鳴り

・手足がしびれる、つまずきやすい

・言葉が出にくい、呂律が回らない

・食べものや飲み物が飲み込みにくい

・やる気が出ない、感情のコントロールがしにくい

また、アルツハイマー型認知症と比べると、物忘れはひどくなく、本人も「忘れた」ということを覚えています。

本人が能力の低下を自覚するため、苦しみや怒りの感情につながりやすく、本人の尊厳や自信を傷付けないように配慮しましょう。

まだら認知症の進行

まだら認知症は、段階を追って進行していきます。

なぜなら、老化に伴う機能低下でなく、脳血管疾患が原因の認知症なので、脳血管疾患の再発を繰り返すごとに悪化していくからです。

そもそも、まだら認知症とは、脳梗塞や脳出血などによって、脳の一部分の機能が突然失われて起きたものです。

新たに脳梗塞や脳出血が起これば、階段を一段下りたように症状が悪くなります。

そのため、まだら認知症の進行を遅らせるには、脳血管疾患の再発予防が大切です。

まだら認知症の寿命

一般的に、認知症発症後の平均余命は7〜10年とされています。

ただし、あくまで研究時のデータにすぎないため、絶対的な数字ではありません。

個人差も大きいので、平均余命の数字は参考程度に捉えておきましょう。

まだら認知症の原因

まだら認知症は、時間帯によってできないことがあったり、難しい本を読めるのに服を着替えられなかったりと、症状の波が大きい状態を示します。

このような「まだら」な状態が生じてしまうのには、4つの原因が考えられます。

・脳のダメージが偏っているから

・脳の血流が絶えず変化しているから

・自律神経が乱れているから

・体の不調などその他の要因によるもの

そこで上記4つについて詳しく解説していきます。

脳のダメージが偏っているから

「まだら認知症」は、正式には「脳血管性認知症」といいます。

脳は、場所により働きが異なります。脳血管性障害によって脳にダメージを受けた場合、ダメージを受けた部分の機能は低下するものの、ダメージを受けなかった部分は健在なままという状態になるのです。

脳の血流が絶えず変化しているから

脳の血流は気温や時間帯によって変わります。「低血圧の人は朝動き出しにくい」ということがあるのも、このためです。

起床後、食事後、暑さや入浴で体温が一時的に上昇した後、水分不足の時などには、一般的に脳の血流量が低下します。

このような時だけ、認知症の症状が強まって症状が出ることがあります。

自律神経が乱れているから

脳血管性認知症の方がレビー小体型認知症やパーキンソン症状を抱えている場合、自律神経のバランスが乱れやすいという特徴があります。

自律神経には意識の覚醒や血圧の調整を司る働きがあります。自律神経が乱れて血圧が低下すると、反応が鈍くなったり、幻覚を見たり、せん妄状態になることもあります。

体の不調などその他の要因によるもの

まだら認知症の症状が悪化しているものだと思っていたら、実は体調不良による不快感のためだったということがあります。

認知症の方の多くは、体調の変化を把握したり、周囲の人に伝えたりするのが苦手です。

体調不良を上手く伝えられず、認知症状として現れている可能性があります。

もしも数日おきに、症状の改善と悪化を繰り返していたら、体調不良を疑いましょう。

まだら認知症と脳血管性認知症の関係性

まだら認知症は、脳血管性認知症の症状のひとつであるため、つながりがあります。

障害を受けた脳の機能は低下しますが、障害を受けていない正常な部位の機能は保たれるのが特徴です。「会話が噛み合わないのに、難しい新聞を読んで理解している」など、能力に大きな差があり、本人も自覚しています。

そのため、「思うとおりにできない」と歯がゆさやもどかしさを感じやすいです。脳血管性認知症は、感情のコントロールが難しく、怒りや悲しみなどが激しく現れやすい傾向があります。

介護者や家族など、周囲の人への暴言・暴力、セルフネグレクトにつながる危険性が高くなります。

正常に保たれている機能で行えることを大切にし、自信をもって前向きに生活していけるようなサポートが大切です。

まだら認知症の予防対策6選

まだら認知症は、加齢に伴う変化ではありません。

日常生活の中で症状の出現や悪化を予防することが可能です。

・リハビリテーションで改善

・症状の変動を観察・記録

・脳梗塞や不慮の事故などの後遺症に注意する

・高血圧に注意する

・食生活の改善や禁煙・禁酒を心がける

・症状が悪い場合は静かで安全な環境へ移動する

そこで、まだら認知症の予防策6つについて詳しく解説していきます。

リハビリテーションで改善

まだら認知症は、リハビリテーションによって改善が見込めます。特に、年齢が若いほど、リハビリテーションの効果は高いとされています。

ただし、本人は「以前のようにできなくなった」という自覚から、自信を失い、苦しんでいるかもしれないので、無理に押し付けてはいけません。

本人の意思を尊重しながら、残された能力に目を向け、伸ばしていけるような声掛けや関わりを意識しましょう。

できることに着目することで、本人が自信を取り戻していけるきっかけになります。

症状の変動を観察・記録

まだら認知症の症状が悪化するタイミングや症状について、日々観察・記録しましょう。

どんなときに、どんな症状が起こるのか把握していれば、症状の原因を特定しやすくなります。

また、症状が出るタイミングで静かな場所でゆっくり休ませ、体調不良にいち早く気付いてあげられます。

脳梗塞や不慮の事故などの後遺症に注意する

小さな脳梗塞や、転倒によって頭を強く打つことでも、まだら認知症の原因になります。

特に、脳梗塞や脳出血など、脳血管疾患の既往歴がある人は、血液をサラサラにする抗凝固薬を服用していることが多いため、出血しやすい状態です。

些細な出来事でも出血しやすくなっています。

脳梗塞の兆候に早く気づいたり、不慮の事故を防いだりすることが大切です。

高血圧に注意する

脳梗塞の最大の危険因子は高血圧です。

自覚症状が現れにくいため、見逃しやすいので注意しましょう。高血圧を治療せずに放置していると、脳梗塞を起こすリスクが上がります。

血圧をさげるために、高血圧の治療を受け、塩分を減らしたバランスの良い食事、ストレスをためない生活を心がけましょう。

食生活の改善や禁煙・禁酒を心がける

脳血管疾患の予防のために、ヘルシーな食事と、禁煙・禁酒は大切です。

脂っぽい食事や煙草、飲酒は動脈硬化のリスクが上がるので、脳梗塞や脳出血を起こしやすくなります。

食生活をはじめとした不摂生な日常生活を改善することで、脳血管疾患の予防に努めましょう。

症状が悪い場合は静かで安全な環境へ移動する

まだら認知症の症状が強く出ているとき、意識はぼんやりとしがちです。

ぼんやりとしている状態のまま活動したり、雑音の多い空間にいると「せん妄」や「見当識障害」といった症状を起こしたりする場合があります。

症状の波が強く出ているタイミングでは、静かで安全な場所へ移動し、リラックスして過ごせるように環境を整えてあげましょう。

まとめ:まだら認知症は早めの受診が大切

自分や家族にまだら認知症のような症状があらわれたら、できるだけ早く医療機関の受診をおすすめします。

症状が軽いうちに受診して治療を受ければ、進行を遅らせることができます。

できるだけ長く健康な生活を送るために、ちょっとした体や気分の不調に配慮し、重大な病気を見逃さないことが大切です。

症状が出たり、出なかったりするため、発見が遅れたり、見逃されてしまいがちですが、日々の生活の中で、健康状態や体調に気を遣うように心がけましょう。