家族が認知症を認めない場合に診断・治療を受けてもらうにはどうするか

認知症の全知識

認知症は特別な病気ではありません。
認知症には早期発見・早期治療が重要ですが、特にこれまでしっかりと日々を過ごしてきた自覚のある人ほど、「まさか自分が…」という気持ちになり、素直に病院へ行ってくれないことが多いようです。

この記事では、家族が認知症を認めない場合に、診断や治療を受けてもらうためにどうすれば良いのかをお伝えします。

認知症のチェックポイント

認知症は日々の生活の中で少しずつ変化していくものなので、日ごろからコミュニケーションを取っておくことが早期発見のカギになります。
日常生活の会話の中で、「少し前のニュースについて質問する」「病院の予約日時を確認する」などし、自然なかたちで記憶力の確認をします。この時、突然質問攻めにすると不自然ですので、数日間隔を空けるなどして質問すると良いでしょう。

同居していたり頻繁に会っていたりすれば認知症の症状がわかりやすいものですが、なかなかそうはいきません。「認知症の人と家族の会」が作成した、以下の「家族がつくった認知症早期発見の目安」が状態を判断するのに便利です。

物忘れ

1 話したばかりの電話相手の名前を忘れる
2 同じことを繰り返し言う・問う・する
3 いつも探し物をしている
4 財布・通帳・衣類などを盗まれたと疑い深くなる

判断力・推理力の衰え

5 料理・片付け・計算・運転などのミスの増加
6 新しいことを覚えられない
7 つじつまが合わない話をする
8 テレビ番組の内容が理解できない

時間・場所が分からない

9 約束の日時や場所を間違える
10 慣れた道でも迷ってしまう

人柄が変わる

11 怒りっぽくなる
12 周りへの気遣いができなくなり、頑固になる
13 自分の失敗を人のせいにする
14 「最近様子がおかしい」と周囲から言われる

不安感が強い

15 怖がったり寂しがったりすることが増える
16 持ち物を何度も確かめる
17 「頭が変になった」と自ら訴える

意欲の低下

18 身だしなみに興味がなくなる
19 趣味やテレビに興味を示さなくなる
20 おっくうになり、ふさぎこむ
これらの症状に当てはまるものが多い場合、認知症の可能性があります

認知症の検査で病院につれていくには?

認知症の可能性に気付いたとしても、素直に医療機関に行って検査を受けてくれるとは限りません。
本人が納得したうえで受診するのが理想ですが、そうでない場合はいろいろな工夫が必要です。それでは認知症の検査で病院に連れていく方法をご紹介します。

抵抗の少ない科で一般的な診断を受ける

診療を受けるためには、認知症専門での受診が基本ですが、抵抗されることもあります。
初期の認知症の人はまず「物忘れ外来」「老年科」「心療内科」「神経内科」などで一般的な診断を受けてみましょう。
そこで必要な場合は紹介状を出されます。紹介状があれば、納得して受診するというケースもあるようです。

付き添い人の診療に付き合ってもらうことにする

この方法には医療機関の協力が必要です。

あらかじめ医療機関にお願いをしておき、付き添い人の名前を呼んでもらい、付き添い人が形だけの診察をしてもらいます。その際、「ご一緒にどうぞ」と呼び入れてもらい、「せっかくですから血圧を測りましょう」というようにして本人の診察に移ると受け入れてくれる場合が多いようです。

保健所の健康診断に誘う

保健所によっては、認知症相談を実施しているところもあります。
保健所なら病院より抵抗が少なく、受け入れやすいという人もいるようです。
ただ、保健所ではCTやMRIなどの詳細な検査はできないため、保健所から病院への受診を薦めてもらいましょう。

認知症が診断された場合の告知方法

認知症が診断されたとしても、本人に告知をすべきとは限りません。
たとえ本人が望んでいたとしても、告知のショックだけ受けて記憶としては忘れてしまうのであれば、必ずしも告知する必要はないでしょう。
現時点で、認知症を完全に治癒する方法はありません。
重要なのは、認知症になってもできる限り自分らしい生活することです。
告知は本人の精神状態を見極めて行いましょう。
また、告知する場合も認知症という言葉にこだわらず、「もの忘れが強くなってきたみたい」「頭が疲れやすくなってぼんやりしたり、イライラしたりするそう」など、ほかの伝え方でも良いでしょう。

認知症を認めない人への認知症対応

認知症を受け入れられない場合でも、さまざまなアプローチは可能です。
たとえば、「もの忘れには、このトレーニングがおすすめだよ」「脳を健康に保つために、このリハビリをしてみよう」など、医療・介護関係者は治療や支援の対応法を身につけているものです。
また、抗認知症薬は「頭の働きを良くする薬」「イライラを和らげてくれる薬」と伝えることで、無理なく受け入れられる場合もあります。
ただ、本人が認知症を認めきれていない・告知していない場合には、関係者に伝えておきましょう。

まとめ

認知症になると、誰よりも不安を感じているのは本人です。
認知症の受け止め方は人それぞれ。老化現象だと自然と受け入れられる人もいれば、拒絶する人もいるでしょう。
できる限り本人にショックを与えない方法で、診断・治療へ導きましょう。