動物とのふれあいは認知症予防になる?

認知症の全知識

動物との触れあいが与える効果を、医療の面で活かそうとする「アニマルセラピー」をご存じでしょうか。動物と触れあうことで、健康面や精神面、生活面の向上を目指すというものです。この「アニマルセラピー」は、認知症予防にも効果があると言われています。具体的にどのような効果があるのか、実践する場合の注意点なども含めてご紹介します。

バアニマルセラピーは医療現場でも使われている

「アニマルセラピー」とは、動物との触れあいを通して得られる「癒やし効果」を目的として、医療現場で取り入れているセラピー手法の一種です。動物と触れあうことで、緊張やストレスを緩和し、精神面への働きかけを行います。また、イヌの散歩や飼育場所の清掃など動物の世話を行うことで、肉体的・社会的な活動を促すことが期待できるでしょう。

日本国内でのアニマルセラピーは、主にNPO団体によって実施されています。訓練されたイヌ(セラピードッグ)やネコなどを施設に派遣することや、ウマとの触れあいを体験できるホースセラピーを開催しています。アニマルセラピーに、自宅でのペットの飼育も含まれており、セラピーとして効果が見込めるでしょう。

動物が認知症予防になる理由

高齢者は加齢に伴う身体機能の低下により、日常生活への不安や不満によるストレスを蓄積しがちです。また、社会との接点が失われることで、コミュニケーションの機会が減少し、他人との交流に対して消極的になります。老人ホームのような養護施設に長期間入所している方にも、これらの傾向が見られるため、アニマルセラピーが有効であるとされています。

動物との触れあいは、単純で明快なコミュニケーションが可能です。例えばイヌの場合、なでるとしっぽを振るといったものです。動物の世話をすることにより、活動意欲が刺激されたり、達成感を得られたりするなどの効果も期待できます。自信を回復し、他者への関心を喚起することは、孤独に陥りやすい高齢者の精神バランスに、プラスの影響を与えてくれるでしょう。

また、認知症予防においては以下の3つの行動が、キーポイントとして研究されています。

  • 記憶すること
  • 運動すること
  • 誰かと会話をすること

アニマルセラピーは、これらの行動を増やすきっかけになり、高齢者の感情に変化を促すようにしています。

認知症治療ではなく、予防に効果が期待されている

アニマルセラピーが人体に与える影響を、科学的に分析した研究成果は、数多くあります。例えば、2015年4月にアメリカの科学雑誌「サイエンス」に論文が掲載されました。その論文では、イヌと飼い主とのアイコンタクトによって、「オキシトシン」というホルモンの分泌が促進に繋がることが明らかになっています。オキシトシンは、別名「愛情ホルモン」と呼ばれ、母性や愛情、友情、信頼などの感情に関係しています。母親が乳児を見つめることで、オキシトシンが分泌され、イヌと飼い主の間でも同じ効果があることが分かっています。

身体への影響についての研究が進んでいるアニマルセラピーですが、「認知症が治る」というものではありません。認知症の予防に繋がる、あるいは認知症の症状緩和といった効果が期待できるものです。あくまでも、動物への愛情や関心をきっかけに、人の心を癒やす目的として行われる療法であることを理解しておきましょう。

ペットを飼う時はフォローも必要

アニマルセラピーを実践したい場合、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?現在、日本国内ではアニマルセラピーを実施している施設はあまり多くありません。高齢者自身がペットを飼うことも、アニマルセラピーの一環に含まれます。室内飼いの小型犬や猫が適しているでしょう。

ただし、実際に高齢者がペットの飼育を検討するなら、まずは家族で話し合うことが大切です。高齢者が健康な状態であっても、ペットの世話が負担になってしまうことや、または世話自体が難しくなる可能性があります。何かが起きてしまった場合、ペットの面倒を誰が見るのかという点も含めて、予め話し合っておきましょう。

動物の仕草や表情は、人の心を和ませ、笑顔にしてくれます。最近はNPOやボランティアなどが、高齢者のペット飼育のバックアップを行っている地域もあります。動物が好きな方は、ご家族と相談してみてはいかがでしょうか。