認知症による徘徊を予防するためには

認知症の全知識

認知症の介護において徘徊に悩んでいる人は少なくありません。徘徊するようになると、事故にあったり他人に迷惑をかけたりして、様々なトラブルに巻き込まれることがあります。徘徊によるトラブルを避けるためには、あらかじめ対策を行うことが大切です。認知症による徘徊に対する予防方法や注意すべきことについて解説します。

徘徊の危険性とは

家の外に出て目的もなく歩き回る徘徊は、事故やトラブルのきっかけになることがあります。家のなかとは違い、外には多くの危険が存在しているからです。まず心配なのは交通事故です。信号や車はもちろんですが、車道を歩く危険性もあります。突然道路に飛び出すこともあるでしょう。車や自転車にぶつかれば、大きなケガにつながります。

また、近所に川があれば落ちてしまうこともあります。階段や坂道で転んでケガをする場合もあるでしょう。家のなかとは違い、気温にも注意が必要です。夏場であれば脱水症状や日射病の危険性があります。冬場は低体温症を起こす可能性もあるでしょう。

さらに、本人だけではなく、自転車に乗っていた人が徘徊している人を避けようとしたことが原因で、転倒してケガをさせてしまうというケースもあります。徘徊には第三者を巻き込む危険もあります。取り返しがつかない事故になる前に、できる限り対策をすることが必要です。

GPSを利用する

徘徊を予防する方法の一つとして、GPSを利用するといいでしょう。GPSは人工衛星を利用して、どこにいても居場所を知ることができることが可能です。認知症患者にGPS機能がついたスマートフォンや機器を持たせておけば、外に出たとしても居場所を把握することが可能です。ただし、本人が持っていなかった場合や手離してしまった場合には役に立ちません。

GPS機能のついた端末は、巾着袋などに入れて首にぶら下げておくと安心です。ほかにも、バッグや服に縫い付けたり靴にGPS機能をつけたりすることが可能です。

服や持ち物に名前と連絡先を書いた名札をつける

徘徊をしている時に、親切な人が気づけば保護をしてくれることもあります。しかし、本人が住所や名前を言えない場合もありますので、服や持ち物には名前のほかに、住所や連絡先を記載した名札をつけておくといいでしょう。

名札は縫い付けておいたり住所を書いたカードを持たせたりしてもよいでしょう。保護された時には無事に帰ってくるように、連絡先がすぐに分かるようにしておきましょう。

近所の人や交番に届けておく

近所の人や交番は頼りになるものです。徘徊行動を起こした場合は、交番に届け出を提出して保護してもらうようしておくとよいでしょう。また、地域の自治会委員や民生委員、ご近所の方に徘徊のことを伝えて、見かけたら連絡してもらいましょう。

実際に連絡をもらって本人を迎えに行った際には、大声で怒らないようにしましょう。怒られるとそれが恐怖となり、居心地が悪くなってさらに徘徊行動が悪化するといわれています。まずは怒らずに、本人の言葉に耳を傾けてあげましょう。

徘徊する理由を聞いてあげたり会話をしたりすることで、本人の状態を把握することができるかもしれません。ストレスや不安が原因で、妄想の症状が出ている可能性もあります。原因を知ることは、徘徊行動を改善するために必要なことです。本人の不安やストレスが原因で徘徊をするのであれば、会話をすることで悩みや不安が少しでも軽減されて、症状が緩和する場合があります。

徘徊行動が頻繁に起こると、介護をする方の疲労が重なります。GPSを用いて居場所を知ることも一つの方法といえます。徘徊をする認知症患者を一人で介護をすることは大変です。家族はもちろんですが、近所の方や福祉サービスを利用してサポートをしてもらいましょう。