認知症患者の転倒予防をするには?

認知症の全知識

ご家族が認知症と診断されたとき、それぞれにとって認知症との関わりが始まります。認知症になった高齢者を支援・介護する家族にできること、あるいは注意すべきことは何があるのでしょうか?認知症患者との関わりのなかで、その家族として意識しておきたい予防ケアについてまとめました。

見守りケア

認知症患者本人の日常生活を、目視によって観察し、把握することを「見守りケア」または「観察ケア」と呼びます。認知症患者が怪我の予防や、徘徊などの行動が現れていないかの確認をし、すぐ対応できるように備えることが目的です。

この見守りケアでは、家族や介護士など、高齢者と関わる方たちの「情報交換」と「協力」が大切になります。その場を離れるときは、他の人に自分が場を離れることや、そのときの状況について情報交換することが重要です。

見守りケアにおいて、高齢者に現れた認知症状を理解することは、時間帯や原因、環境などを気付くことができます。普段の状態を知ることで、体調の変化も分かりやすくなるでしょう。しかし、危ないからといって極端に行動範囲を制限すると、ストレスを与えることになります。干渉しすぎないように心がけましょう。

かかわりケアとは

「かかわりケア」とは、家族や介護士が患者の意思を尊重し、その気持ちを支えることです。認知症患者にも、意思や自我はあります。患者本人が今何をしたいのか、どうありたいのかといったことを理解することが大切です。具体的には、以下のような行動が挙げられます。

  • 名前を呼ぶ
  • 質問をして確認をする
  • 認知症患者の気持ちを理解して、その感情を共有する
  • 一緒に行動するための意欲を引き出す

認知症患者であっても個人の性格があります。「○○さん」と名前で呼びかけ、何かをする際にはその意思を確認するために質問をしましょう。また、患者本人の気持ちや感情を理解しようとすることで、患者の「ありのまま」を受け入れることに繋がります。

気分転換のケア

認知症の症状のなかに、一つのことに対して強く執着する場合があります。このような場合には、新しい情報を提供し、アドバイスをすることで、関心を他のものに向けるよう誘導します。一種の気分転換によって、執着が薄れるようにすることが狙いです。

執着は何度も繰り返されることが多く、なんらかの理由で解決が難しい場合は、相手にとって大きなストレスになってしまいます。一時的にでも、気分転換を図ることができれば、自発的に落ち着きを取り戻してもらうことも可能です。その人にあった気分転換の方法を知っておくようにしましょう。

本人の尊厳を守るケア

認知症は病気の一種です。現在はまだ、発症後に完治する方法は見つかっていません。患者本人が認知症であることを正確に認識できなくても、どこかおかしいと気が付くことはあります。認知症であると理解していない場合、薬や運動機能低下の訓練を拒否したり、介護する家族や介護士の言葉を信用してくれなかったりすることも考えられます。

しかし、行動を強制的に行わせるといった、認知症患者が嫌がることはしてはいけません。無理強いをすることで、ストレスを感じ、拒否の主張を強めてしまう可能性があります。可能な限り、患者の方を自由にさせることが、ストレスを溜まりにくくする大切なポイントになってきます。

認知症は身体機能の低下や、患者とのコミュニケーションが徐々に難しくなってしまうこともあります。病状によっては、本人が予防や治療行為に参加することができないことも考えられるでしょう。しかし、コミュニケーションが難しくなったとしても、患者本人にも意思があり、考えがあります。介護・支援する周囲の人々が、認知症患者本人の人格を尊重し、その気持ちや感情を気遣うことが大切なのです。