一人暮らしの親が認知症になったらどうする?トラブルを防ぐ準備や対策も

認知症の全知識

この記事では、一人暮らしの親が認知症になった場合の対処法を解説します。

別々に暮らしている親が一人暮らしの場合、「万が一、認知症になったらどうしよう」などの不安を抱えている人は少なくありません。同居しているケースとは異なり、親が一人暮らしの場合は常に一緒にいられないため、自分が見ていない場所で起こるトラブルを不安に感じてしまいます。

そこで本記事では、一人暮らしの親が認知症になった場合に起こりうるトラブルや事前準備・対策などを解説します。

親が一人暮らしで今後の介護が心配な人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

【この記事でわかること】

● 認知症の親の一人暮らしで起こりうるトラブル

● 一人暮らしの親が認知症になる前にできる準備

● 認知症の親の一人暮らしでトラブルを防ぐ対策

● 認知症の親の一人暮らしで頼れる支援サービス

認知症の親の一人暮らしで起こりうるトラブル

遠方で離れて生活する家族にとって、一人暮らしの高齢者の生活は把握しにくいものです。そのため、認知症の症状が進行して身の回りのことを自分ですることが困難になっても、周囲から適切なサポートを受けられないケースがあります。

認知症の親の一人暮らしで起こりうるトラブルは、主に以下の通りです。

  • 食生活の乱れ
  • 近隣住民とのトラブル
  • 排泄時のトラブル
  • 火の不始末
  • 外出時の行方不明・事故
  • 金銭・服薬の管理不足

上記6つのトラブルを詳しく解説するので、認知症の親がいる人や一人暮らしの親に認知症の不安がある人は確認しましょう。

食生活の乱れ

一人暮らしの場合は食生活を気にかける人が周囲にいないので、食生活が乱れやすい傾向にあります。軽度の認知症でも同じメニューを繰り返してしまい、栄養バランスが偏ってしまうケースは珍しくありません。

特に、持病がある人は生活習慣病や認知症の悪化を招きやすいので、食生活が乱れないように見守りましょう。

近隣住民とのトラブル

認知症の人は、本人以外からはゴミとしか思えないものを収集したりため込んだりするケースが多くあります。

もの・ゴミの収集や悪臭、害虫・害獣などが原因で、近隣住民とのトラブルにつながるケースがあります。近隣住民とのトラブルは、地域コミュニティから孤立してしまう原因の1つです。

地域コミュニティから孤立してしまい感じる不安や、孤独感などのネガティブな感情は被害妄想を悪化させ、コミュニケーション不足により認知機能の低下を招くおそれがあります。

排泄時のトラブル

認知症の人は尿意をコントロールするのが難しくなるだけでなく、排便に関するトラブルが起こりやすくなります。

  • 失禁して汚れた下着をタンスに隠してしまう
  • 長期間にわたる便秘症状で精神的に不安定になる
  • 便秘症状を放置して腸閉塞のリスクを高める
  • 下剤の服用後に便失禁してしまう

そのほかにも、下剤によって下痢に苦しみ、脱水症状を起こすケースがあります。

健康的な身体を維持するためにも、排泄のコントロールは重要だといえます。

火の不始末

認知症状の1つである”もの忘れ”には、以下のような火の不始末につながるおそれがあります。

  • 調理後にガスコンロの火を消し忘れる
  • 調理中であることを忘れて火にかけたままの鍋を放置する
  • 暖房器具を消し忘れる
  • タバコの火を始末できていない

特に、長年家事を担当してきた人は習慣的に台所に立とうとする傾向があるので、キッチン周りで火の不始末が起こりやすくなります。

できるだけ調理を必要としないよう、配食サービスの導入を検討することもおすすめです。

外出時の行方不明・事故

認知症の人は”見当識障害”によって、自分の今いる場所や時間帯、置かれている状況などを記憶していない場合があります。

歩き慣れた近所でも、迷子になってしまうケースは珍しくありません。

季節に合った服装や持ち物を準備していない場合が多く、夏場は熱中症、冬場は低体温症などのリスクが高まる傾向にあります。

また、目的もなく自宅外を歩き回る”徘徊”の症状があらわれ、思いがけない事故に巻き込まれる人は少なくありません。思いがけない事故の具体例として、以下3つが挙げられます。

  • 転倒時に骨折する
  • 横断歩道や踏切で人身事故に遭う
  • 車の運転中に対物・対人事故を起こす

徘徊による行方不明が心配なら、GPSを活用した見守り機器の導入も選択肢の1つです。認知症の人は、判断能力の低下や注意力の散漫などが原因で、事故を起こしてしまう場合があります。

できるだけ周囲の人が送迎したり介護タクシーを活用したりするなど、本人が運転する機会をなくしましょう。

金銭・服薬の管理不足

認知症の人は自己管理能力が衰えるため、金銭管理に支障をきたしやすくなります。

金銭管理で気を付けたいポイントは、主に以下の4点です。

  • 年金や預貯金を管理できない
  • 家賃や公共料金など月々の支払いを滞納する
  • 高齢者を狙った詐欺に遭う
  • 生活に不必要な高額商品を購入してしまう

そのほかにも、服薬管理が困難になるため持病がある人には注意が必要です。

特に、糖尿病や心臓病のような疾患は、薬の飲み忘れによって症状が悪化しやすく、危険な状態に陥りかねません。逆に、「飲み忘れたかもしれない」という不安から過剰摂取につながるケースがあります。

糖尿病薬や降圧剤は過剰に摂取すると意識障害を起こすおそれがあるため、自己管理が難しい場合はサポートが必要です。

一人暮らしの親が認知症になる前にできる準備

親が認知症になる前にしっかり備えておくことで、いざという時の安心感につながります。

一人暮らしの親が認知症になる前にできる準備は以下の通りです。

  • 世話は親族で役割分担する
  • 資産や体調などの状況を把握する
  • 介護について相談できる場所を見つける
  • 本人の意見を尊重する

上記4つの準備を押さえておきましょう。

世話は親族で役割分担する

認知症の親の介護を1人で担うことは容易ではありません。介護を1人に任せるのではなく、家族・親族内で介護の役割分担を決めておくことがおすすめです。

親族のなかに介護の経験がある人や認知症に理解がある人がいれば、協力してもらいましょう。

また、親のかかりつけ医や服用中の薬などに関する情報は、家族間で共有しておくことが大切です。

資産や体調などの状況を把握する

認知症の症状が進行してもの忘れがひどくなる前に、銀行口座や不動産などの資産を確認しておきましょう。

資産の所有者が認知症によって判断能力が低下すると、資産に関する契約行為ができず口座などが凍結されるケースがあります。

普段から親の体調について把握しておき、判断力が充分保たれている間に”家族信託”などを導入することがおすすめです。

家族信託とは、家族や親族などに財産の管理を任せる制度です。前もって導入しておくと、認知症の症状が進行した後も、資産凍結のリスクを避けらます。

介護について相談できる場所を見つける

介護に関する問題を家族内で抱えこんでしまうケースは少なくありません。介護について相談できる場所があれば、介護の負担を減らすための方法が見つかりやすくなるでしょう。

自治体が設置主体となる”地域包括支援センター”なら、介護をはじめとして医療や福祉、保健などに関して相談できます。

また、各自治体の高齢者福祉課や介護福祉課などでは、地域包括支援センターを案内してもらえるほかに介護に関する相談も受け付けてもらえます。

本人の意見を尊重する

多くの高齢者は長年の生活習慣へのこだわりを持っており、周囲から口出しされることに抵抗を感じやすいでしょう。

本人の意見を尊重したサポートを提案すれば、家族からの提案を受け入れやすくなります。

ニュースや知人などの認知症の話題と一緒に、「あなたはどう思うのか」「あなたならどうしたいのか」などの問題を提示することで、今後の生活についてさりげなく伺えます。

認知症の親の一人暮らしでトラブルを防ぐ対策

認知症の症状は時間が経つにつれて進行していくケースがほとんどです。

症状悪化の原因が一人暮らしに対する不安や社会からの孤立感などであるケースは少なくありません。そのため、認知症の親が一人暮らしを続けていると、さまざまなトラブルにつながりやすいでしょう。

認知症の親の一人暮らしでトラブルを防ぐ対策は以下の通りです。

  • 認知症レベルの診断を受ける
  • 周囲の人とのつながりをつくる
  • 状況に応じて生活スタイルを変更する
  • 介護支援サービスの利用を検討する

上記4つの対策を詳しく解説するので、認知症の親が一人暮らしをしている人は試してみましょう。

認知症レベルの診断を受ける

親の認知症の症状がどのくらい進行しているか把握しておくことが大切です。

進行の度合いを適切に把握しておくと、家族のサポートや介護サービスの導入が必要であるか判断しやすいでしょう。想像していたより認知症の症状が進行している場合、介護サービスの導入や介護施設への入居が視野に入ります。

また、親が所有している資産を把握し、自己管理が難しそうならば成年後見制度の利用を検討しましょう。

周囲の人とのつながりをつくる

認知症の人が地域のなかで安心・安全に暮らすためには、周囲からの見守りやサポートが必要です。見守りの体制を整えたいなら、地域包括支援センターや地域の民生委員に相談することがおすすめです。

また、近隣住民は長年にわたって付き合いがあるため、ちょっとした変化や違和感に気付き、心配してくれるケースがあります。

地域コミュニティは心強い味方といえるため、帰省時に隣人などに挨拶をしましょう。

状況に応じて生活スタイルを変更する

認知症の症状は緩やかに進行するケースが多いため、必要とするサポートが次第に増えます。

万が一、親の認知症状が悪化し一人暮らしが難しいようであれば、親との同居を視野に入れましょう。

また、介護者が働き方を変えた場合、仕事による負担やストレスが減り、親の介護に取り組みやすくなります。必要に応じて、時短勤務やパートタイム勤務への変更を検討しましょう。

介護支援サービスの利用を検討する

「一人暮らしの親が認知症を発症したけれど、仕事や家庭の都合で同居は難しい」などのケースは珍しくありません。

とはいえ、親の一人暮らしを継続し、遠方から頻繁に通いながら介護を続けると、家族の負担が大きく介護疲れに発展しやすくなります。

家族の介護負担を減らすために、介護支援サービスの利用を検討しましょう。

介護支援サービスを利用すると、一人暮らしを続ける高齢者の生活をサポートしてもらえるため、安心して任せられます。

認知症の親の一人暮らしで頼れる支援サービス

認知症の人は身の回りのことを自分で行うことが次第に難しくなりますが、周囲のサポートがあれば一人暮らしを続けられるケースがあります。

周囲からサポートしてもらい家族への負担を減らす方法として、支援サービスの導入を検討しましょう。認知症の親の一人暮らしで頼れる支援サービスは以下の通りです。

  • 介護保険の通所・訪問サービス
  • 見守りサービス
  • 家事代行サービス
  • 食事配達サービス
  • 地方自治体の支援サービス

上記5つのサービスを詳しく解説します。介護サービスの導入を検討している人は確認しましょう。

介護保険の通所・訪問サービス

介護保険を利用すれば、収入に応じて1〜3割負担で介護サービスを導入できます。

在宅介護の場合、おすすめの介護サービスは以下の通りです。

通所サービス(デイサービス) ● 日帰りで施設に通い、食事や入浴、排泄などの介護サービスを受けられる
訪問介護 ● 介護スタッフが利用者宅に訪問し、食事や排泄の介助、家事代行などの生活支援を行う
訪問看護 ● 主治医の指示の下で看護師が健康管理や療養上の世話を行う

自宅に出入りする人が増えるとコミュニケーション機会の増加につながり、認知機能の維持・向上にもつながります。

また、離れて暮らす家族にとっては安否確認に役立つため、介護サービスの導入で安心感を得られるでしょう。

見守りサービス

親が遠方で一人暮らしをしており頻繁に帰省することが難しい場合、見守りサービスの導入がおすすめです。見守りサービスには、主に以下3種類があります。

  • 民間会社のスタッフによる訪問型
  • センサー型やカメラ型
  • スマホアプリや電話など家電型

24時間の見守り体制を整えられるだけでなく、状況に応じて安否確認や緊急時対応などのサービスを受けられます。

遠方で離れて暮らしていても安心感を得られる点が魅力的です。

家事代行サービス

家事代行サービスでは、家の掃除やゴミ出し、買い物などの家事を代行してもらえます。

介護保険で利用できる訪問介護サービスでも家事を依頼できますが、利用ルールが設けられており、すべての家事を依頼できるわけではありません。

民間の家事代行サービスなら家事全般の代行を依頼できるため、幅広い利用用途を期待できるでしょう。

食事配達サービス

食事配達サービスを利用すると定期的にお弁当などを届けてもらえるので、自宅での調理の必要がありません。

配達サービスで提供される食事は塩分や栄養バランスに配慮されており、健康管理に役立ちます。

また、高血圧や腎疾患、糖尿病の人など、食事管理が必要な人に対応した食事配達サービスもおすすめです。

地方自治体の支援サービス

高齢化が進んでいる地方の自治体では、高齢者を支援する独自のサポートを提供しているケースが多くあります。

安否確認や外出支援、金銭管理などのサービスを受けられるため、離れて暮らす家族も安心できるでしょう。

ただし、公的サービスとは異なるため利用時に費用が発生します。

親が一人暮らしをしている自治体で支援サービスを実施しているのか、また、費用はいくらなのかなど、各自治体のホームページで確認しましょう。

認知症の一人暮らしに関するよくある質問

ここでは、認知症の一人暮らしに関するよくある質問に回答します。

  • 認知症の親の一人暮らしに限界が来たらどうすればいい?
  • 認知症で身寄りがない人の一人暮らしで生じる問題は?
  • 一人暮らしから施設入居に変えたほうがいいタイミングは?

順番に見ていきましょう。

認知症の親の一人暮らしに限界が来たらどうすればいい?

「認知症の親が一人暮らしを続けるのが難しい」、「一人暮らしを続けるのは安全ではない」と感じた場合、施設入居や同居を視野に入れましょう。

その場合、介護する側が引っ越すと転職や転校などが必要となり、負担が大きくなります。なかでも、介護をきっかけに退職・転職する介護離職では、経済的に困窮するおそれがあります。

介護する側の負担を減らすには、一人暮らしをする親に引っ越してきてもらうほうが現実的でしょう。

認知症で身寄りがない人の一人暮らしで生じる問題は?

認知症で身寄りがない人が一人暮らしを続けると、以下のような問題が生じる場合があります。

  • 認知症の進行や体調の悪化に気付きにくい
  • 預貯金や資産などの財産管理が難しくなる
  • 病院への入院・施設入居時に身元保証人がいない

認知症の高齢者は自身の健康を管理することが難しく、不規則な食事や昼夜逆転した生活、喫煙・飲酒などによる生活習慣病のリスクが高まります。

身寄りのない人の場合、普段から自宅に出入りする人を増やして安否確認や健康管理をしてもらうことが大切です。

自宅に出入りする人を増やす方法として、以下3つが挙げられます。

  • 友人や地域の人たちと積極的に交流する
  • 訪問型の見守りサービスを導入する
  • 介護サービスの導入や施設入居を検討する

近年では、身元保証人がいなくても入居できる施設が増加していますが、競争率が高く必ずしも入居できるとは限りません。

施設入居時に身元保証人を用意できない場合、民間の身元保証サービスを利用しましょう。

サービス内容や費用は運営元によって異なり、財産管理や葬儀の手続きを以来できるケースがあります。

一人暮らしから施設入居に変えたほうがいいタイミングは?

「本人だけで安全な生活を続けるのが難しい」「介護による負担が大きくてつらい」などの状況なら、施設入居を検討しましょう。

ただし、施設の種類によってかかる費用や入居条件が異なるため、希望する施設に必ずしも入居できるとは限りません。

スムーズに施設入居を進められるよう、あらかじめ入居したい施設の種類や予算などを決めておくことがおすすめです。

一人暮らしの親が認知症になった場合は周囲のサポートが大切

一人暮らしの親が認知症になった場合、食生活の乱れや火の不始末などのトラブルが発生するリスクが高まります。一人暮らしの親が認知症になる前に、起こりうるトラブルを想定して備えておくことが大切です。

また、既に認知症で一人暮らしをしている親がいる家庭では、認知症レベルの診断を受けて周囲とのつながりをつくることが大切です。必要に応じて、支援サービスの導入や施設入居を検討しましょう。

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