高齢者の認知症予防にある作業療法とは

認知症の全知識

認知症のリハビリとして知られている作業療法ですが、実は予防にも効果が期待できます。介護施設でも積極的に取り入れている作業療法とは、一体どのようなものなのでしょうか。

作業療法は何らかの作業のリハビリテーションのこと

作業療法とは、何らかの作業を通して行うリハビリのことです。大きくは以下の3つに分けることができます。

【日常生活のなかで行うもの】
料理・洗濯・掃除・買い物といった家事に加え、片付け・食事・入浴・排泄など日常生活の動作のすべてが、作業療法の一環とすることができます。高齢者ができるだけ自立して行えるようにサポートしましょう。
【集団活動で行うもの】
介護施設のレクリエーションも作業療法のひとつです。体操、折り紙、編み物、陶芸、塗り絵などの趣味を、グループで取り組むことにより良い効果を発揮できるでしょう。コミュニケーションが活性化することで、認知症予防も期待できます。
【リアリティ・オリエンテーション】
リアリティ・オリエンテーションとは、今自分がいる場所や時間を認識する「見当識」を強化するリハビリです。声かけの際に、見当識に関する情報を盛り込むようにし、作業療法として取り入れている施設もあります。

作業療法のメリット

認知症発症後の進行抑制だけではなく、認知症の発症そのものを予防する効果があると言われています。さらに、高齢うつなど認知症の周辺症状も軽減するというメリットがあり、理由として「脳の活性化・自尊心の回復」という2つが挙げられます。

作業療法はすべて手先を動かすものばかりです。手先を動かすことは、脳の広範囲を活性化するのに役立ちます。また料理やお菓子などを作り、食べた人が喜んでくれれば、高齢者は自分の存在意義を見出しやすくなります。掃除や洗濯でも同じことが言えるでしょう。作業療法は、「誰かのために役立っている」という自尊心を回復させるきっかけになりやすく、高齢者の心の健康に役立ちます。

作業療法でその人らしい生活ができる

作業療法は、身支度で身体的環境、掃除などで周辺環境を整えることでもあります。環境を整えることで、運動療法やその他の活動のメリットも生まれてくるでしょう。いわば作業療法は、その人らしい生活の土台作りでもあるのです。またこういったリハビリは、認知症になってしまった本人だけでなく、その家族の方が穏やかに過ごすこともサポートしています。

上記のような内容を、生涯にわたって自立して行えるか否かは、対象者のクオリティ・オブ・ライフを大きく左右します。日々の作業療法によって、一定レベルをキープすることは、非常に重要だと言えるでしょう。

作業療法は家庭でも取り組みやすい

作業療法は日常生活のなかで行えるものが多くあります。介護施設だけではなく、一般家庭でも気軽に取り組むこともできます。ただし家庭内で作業療法を行うと、自己流による弊害も出やすいことに注意が必要です。初めてのときは、医療機関の作業療法士にプログラムを組んでもらうことをおすすめします。

作業療法士に相談する際は、すでに認知症を発症している場合、発症前後でどのような変化があったのか詳しく伝えるようにしてください。発症前の方でも、性格、嗜好、得意なこと・苦手なことなどの情報を、できるだけ詳しく伝えて、当事者が少しでも気持ち良く取り組めるプログラムを作るようにしましょう。

作業療法は認知症予防のほか、症状の進行防止、認知症周辺症状の改善などにも効果があると言われています。簡単な身の回りのことを、生涯にわたって自分で行えるかどうかは、本人だけでなく家族のためにもなります。作業療法を高齢者の生活に積極的に取り入れて、自立して生きる力をキープできるようにしましょう。