放置するとそのまま認知症になることも!軽度認知障害(MCI)の症状とは

認知症の全知識

近年高齢化が進むに伴い「認知症」という言葉も一般的になってきました。

しかし、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」についてはあまり知られていません。

この記事では軽度認知障害(MCI)の症状や対策方法についてお伝えします。

軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、認知症の一歩手前の状態です。

日常生活での行動異常はあまりみられませんが、物忘れのような記憶障害が出るものの症状はまだ軽く、正常な状態と認知症の中間のような状態を表します。

軽度認知障害(MCI)の臨床的な定義は以下の通りです。

  • 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
  • 客観的に見て、一つ以上の認知障害(記憶障害や見当識障害)が認められている
  • 日常生活での行動異常はみられない
  • 認知症ではない

軽度認知障害(MCI)の症状

軽度認知障害(MCI)では、認知症の代表的な症状である記憶障害、注意力・集中力の低下、計画的に動きにくくなる実行機能障害などがみられます。
または、うつ病のような無気力な症状が出ることもあります。

いずれも認知症そのものに比べると軽度であるため、本人はもちろん周囲もすぐには気づきにくく、変化に戸惑うこともあるでしょう。

具体的には以下の症状が挙げられます。

  • 同じ話を何回もする
  • 好きだった趣味に興味を示さない
  • 頭がぼんやりしていて、疲れやすく元気がない
  • 連続ドラマや読書などの内容を理解しにくくなるため、見なくなる
  • お金の計算やスケジュール管理ができない
  • 仕事で新しい機械や仕事を覚えようとしなくなり、意欲が低下する
  • 外出時でも服装に気を遣わなくなり、外出そのものに消極的になる
  • 友人の名前、銀行口座の暗証番号など、今まではしっかりと覚えていたことを忘れる
  • 最近の出来事自体は覚えていても、「いつ」「どこで」「誰と」など、詳しい内容を思い出す事ができない
  • 料理中に鍋を焦がしたり、水道の水を出しっぱなしにしたりするなど、今までと様子が異なる。また、凝った料理が作れなくなる

軽度認知障害(MCI)からそのまま認知症に進むことも

軽度認知障害(MCI)はそのまま放置しておくと認知症を発症する確率が高いとされています。

厚生労働省の認知症施策における発表のなかでは、認知症とその予備軍とされる軽度認知障害(MCI)の人口は862万人と予測されています。

これは65歳以上の実に4人に1人が当てはまるという驚異的な数値です。

2017年6月に国立長寿医療研究センターからの発表によると、軽度認知障害(MCI)をそのまま放っておくと4年後には認知機能の低下が進み、約14%が認知症に進んだという結果になったそうです。

一方で、仮に軽度認知障害(MCI)になったとしても、約46%の人は認知機能が正常化する可能性があるとも伝えられました。

つまり、認知症は不治の病といわれていますが、軽度認知障害(MCI)のはまだ取り返しがつく可能性があるということです。

そのため、早期発見・早期治療が重要となります。

軽度認知障害(MCI)は、「認知症まではいかないが、健常ではない」ことに加え、「数年後に認知症に移行する可能性がある」ともいえます。

軽度認知障害(MCI)が疑わしい場合はどうする?

それでは、軽度認知障害(MCI)が疑われる場合、どうしたら良いのでしょうか。

症状の内容・日時を記録しておく

軽度認知障害(MCI)が疑われる症状に気が付くのは、本人であることも、周囲のご家族や知人であることもあります。

もし、気がかりな症状が出始めたら、内容・日時・その他の状態で気になることを記録しておきましょう。
こうすることで客観的に状態を把握することができ、医療機関で診断を受ける際に、非常に役立つからです。

会話の中でそれとなくチェックする

軽度認知障害(MCI)の可能性があるからといって、本人に「認知症やMCIでは?」「認知症のテストを受けてみたら?」と聞いてしまうと、自尊心を傷つける可能性があります。

本人に悟られないようにさりげなく、「明日の病院の予約って何時?」「こないだの事件ってどこで起きたんだっけ?」などと確認するつもりで聞いてみましょう。

その際は、一日にいくつも質問するのでなく、数日空けて日常会話の中で質問しましょう。

軽度認知障害(MCI)の予防と対策方法

軽度認知障害(MCI)の診断を受けた人すべてが認知症となるわけではなく、健常な状態に回復する可能性もあります。

軽度認知障害は健康上、生活上において何らかのリスクを抱えている可能性もありますので、まずは生活習慣から変えていきましょう。

健康な食生活

まずは規則正しい時間帯に、野菜、青魚を中心に1 日20~30品目を食べるなど、バランスの良い食事をとるようにしましょう。

特に認知症の予防には、肉よりもさば、ぶり、さんまなどの青魚が良いとされています。

そのほかにも、ブロッコリーなどの野菜のアマニ油、エゴマ油、アーモンド、くるみなどのナッツ類も効果があるといわれています。

新鮮な野菜や牛乳などは宅配でも調達が可能です。
作ること自体が難しい場合には、弁当の宅配サービスなどもあります。
無理なく健康な食生活を続けられる仕組みを導入しましょう。

適度な運動習慣

適度な運動は認知症の予防だけではなく、全身の血行・血流が改善され、心地良い疲労やリフレッシュ効果にもつながります。

ウォーキングや軽いジョギング、水泳やヨガなど、無理のない範囲から始めるのも良いでしょう。

急に運動を始めることに抵抗がある場合には、家族と毎日のんびり散歩するなど、体力や生活習慣に応じた運動を習慣づけるようにするのがおすすめです。

脳を活性化するレクリエーションや趣味

頭を使う趣味なども、脳を刺激することで認知機能の低下の予防・改善に役立つとされています。

たとえば、頭を使うゲーム(クイズ、パズル、麻雀、オセロ、将棋など)、手芸や料理などの手作業、楽器の演奏や歌を歌うことなどが挙げられます。

これらの活動は生きがいの発見や仲間づくりにもつながります。

本人が無理なく生活に取り入れられ、楽しめる趣味を一緒に探しましょう。

地域の仲間づくり

人との会話も脳へ良い刺激を与えます。

他者と関わることで平凡な日常からも開放され、相手を気遣ったり、自身の存在価値を確認できたりもします。

趣味のサークルや敬老会など地域で行われる活動も多くあるので、広報誌や地域包括支援センターなどで地域の情報を集めると良いでしょう。

口腔機能の改善

高齢になると、義歯や歯周病など、口腔内に問題を抱えている方も少なくありません。

よく噛んで食べることは食生活にも深く関わり、噛むという行為は脳の活性化にも大きな影響を与えます。

さらに、口の健康を保つことで嚥下機能の改善や誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

また、見栄えや発音など、他者とコミュニケーションを取る際にも大切な役割を果たします。

かかりつけの歯科を持ち、定期的に検診をしてもらうなどして口腔内の健康も意識しましょう。

認知症を知り、備える

軽度認知障害(MCI)と診断されていなくても、認知症とは何か、利用できるサービスは何かという基礎知識を調べておきましょう。

健康なうちに、どのように生きていきたいのかを予め周囲の人に伝えたり、エンディングノートなどに記録したりしておくことは、とても重要です。

どのような未来が訪れても、本人の意思が明確になっていれば、家族も判断に迷うことはありません。

これまでの人生や考えをまとめたものは、本人やご家族の大切な宝物になるでしょう。

予兆があれば早期の受診を

お伝えしてきたような症状が続く場合には、ぜひ一度、医師の診察を受けてみましょう。

軽度認知障害(MCI)は内科的な要因も考えられるため、まずはかかりつけ医に相談し、専門的医療機関を紹介してもらうのが良い方法です。

また、お住まいの地域包括支援センターや自治体の医師会などに問い合わせると、認知症を専門医のいる「もの忘れ相談医」などの情報を教えてもらうことも可能です。

軽度認知障害(MCI)は認知機能が正常化する可能性もありますので、とにかく早期のうちに受診をすることが重要になります。

まとめ

軽度認知障害(MCI)は、早期発見により改善される可能性があるとお伝えしてきました。

もし軽度認知障害(MCI)と診断されたとしても、よりよい生活を作っていくきっかけとして利用してはいかがでしょうか。

早い段階で生活習慣を改善したり、心構えや準備を行ったりすることは大きなメリットになるでしょう。