思いやりのある介護食を作るプロ!特別養護老人ホームいくとく(社会福祉法人育徳園)の調理師・北林佑樹さん

「それU.K.ミライbridge」 後半は、 大阪難波にあるFM OH!の中に、日曜日のこの時間にだけオープンするパートナーズカフェ。
介護・福祉・看護業界で活躍されている、普段はなかなか脚光を浴びない方々に、スポットライトをあてて主役にしていくコーナーです。

第36回目のゲストは、特別養護老人ホームいくとく(社会福祉法人育徳園)の調理師・北林佑樹さん。

今回はお茶の間のアイドルU.K.さん(Uちゃん)と、YouTuberユニット「介護あかるくらぶ」のまさZO20がお届けします!

人生最後の食事を作る調理師

要介護3以上の方が入居可能とされている施設、特別養護老人ホーム(以下、特養)で調理師として働かれている北林さん。

特養は、“終の棲家”ともいわれている施設です。
入居者さんにとっての最後の食事をとる場所になるので、おいしくて、満足していただけるような食事作りを心掛けています。

まさZO20「特養の食事っていうのは、普通の食事ではなく、きざみ食やペースト食と呼ばれるような、食べやすく刻んであったりペースト状でスムージーに近い状態した食事が主なんです。ただ食べやすい反面、見た目としてあまりおいしそうではない……っていう欠点があって」

そこで、北林さんは“ソフト食”といわれる、舌でつぶせて喉に詰まりにくい柔らかい食事を作られているそうです。

北林さん「たとえば豚肉の生姜焼きなんですけども、見た感じはお肉の薄切りみたいな状態にしていて、普段は細かく刻んだ食事を食べている方でも、一目で『あ、お肉だ!』とわかるような見た目に仕上げているんです」

はぁーそういう工夫を!すばらしい、思いやりですね。

「亡くなる前にお寿司を食べさせてあげたい」

最後の食事はやっぱり「お寿司が食べたい」っていう方が多いみたいですが、お寿司って普通のご飯だから提供するのが難しいんですよね。

これまであらゆる工夫をして介護食を作られてきた北林さんですが、6年程前の出来事で今でも忘れられないエピソードがあるそう。

ある日、施設で入居者さんのお誕生日会をした時のこと。
握り寿司が好きだという方のために、「よし!特別に作って出してみよう」ということに。

北林さん「ところが、普通のご飯を食べられない方のための食事なのに、握り寿司ってご飯を握れないといけない。おかゆをどうやって握るねん!と(笑)」

試行錯誤をして、お米とお水の割合を工夫して固めのご飯を炊き、軽くつぶしておいたそのご飯をスプーンで俵状に。その上にお造りの切り身を乗せて提供しました。

「あれからさらに勉強して経験を積んだ今思えば、よく出せたなぁ~という出来だったかもしれませんが、当時にしたら、僕のその時できる精一杯だったんです」という北林さん。

でもそういう想いが人の心を動かしますよね。
お寿司を出してあげて、結果、どうでした?

北林さん「ご家族さんが『うちの母はずっとお寿司を食べたいって言っていたけど、おかゆしか無理やのにどうやって食べるの?と言っていたんですね。それをこんな風にお寿司を出してくれて、本当にうれしかったです、ありがとうございます!』と言ってくださったんです」

数か月後にその入居者さんは亡くなられたそうですが、後日荷物を引き取りに来たご家族さんに言われた言葉が、とても印象的だったといいます。

最後、菓子折りを持って「うちの母は最期にお寿司を食べられて本当に喜んでいました」と伝えに来てくださったんですよ!
この思い出は、今後もずっと忘れることがないと思います。

“介護食レストラン”で家族団らんを♪

今後の夢は、「介護食レストランを作ること」。

北林さん「普通食を食べるのが難しい方って、外食に行っても食べられるものがないんですよね。外食って、ただお腹を満たすだけではなく、家族団らんのひと時になると思うんです。家族で集まる時にみなさんでお越しいただいて食卓を囲んでもらって、いろんな話に花を咲かせてね、いつかその方が亡くなったとしても、残されたご家族のなかでそこで集まったことが思い出として残るような、そんな場所をいつか作りたいなと思っています」

とても素敵な思いやりのある夢を聞かせていただきました。
心より応援しています!

特別養護老人ホーム いくとく(社会福祉法人育徳園)

大阪・天王寺にある特別養護老人ホーム。社会福祉法人 育徳会として、ほかに高齢者デイサービスセンター、保育所、コミュニティセンターなどを運営。