高齢者への支援のポイント
「老人ホームを選びたいけれど、どんなポイントを押さえればいいの?」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
ここでは、老人ホームの選び方や施設の種類などについて詳しく紹介します。
この記事を最後まで読み終えていただければ、自分や家族の希望する条件に合う老人ホームを見つけることができます。
老人ホームの選び方でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
● 老人ホームの選び方 ● 老人ホームの公的施設5種類 ● 老人ホームの民間施設6種類 ● 老人ホームを見学する際にチェックすべきポイント ● 老人ホームの選び方に関するよくある質問 |
老人ホームの選び方
老人ホームは、入所者にとって大切な生活の場。
近年では高齢化に伴い、平均入居期間が伸びていることもあり、後悔しないように老人ホームを選ぶことが大切です。
そこで、老人ホームの選び方のポイントは次の通りです。
- 希望する生活を送れるか
- 要介護度認定の必要の有無
- 希望する条件に合っているか
- 設備や周辺環境は良いか
上記4つのポイントについて詳しく紹介していきます。
希望する生活を送れるか
老人ホームを選ぶ際には、入居者本人が希望する生活を送れるサービスや仕組みが備わっているか検討しましょう。
特に、現在の生活で感じている不便さや不安を洗い出すことで、必要なサービスや仕組みが分かります。
- 友人がいなくて淋しい:同世代の友人を作りやすい雰囲気がある施設
- 1人で通院することが難しい:定期的に医師の診察を受けられる施設
- 持病による体調不良が心配:24時間の見守りや看護師によるサポートがある施設
- 家事全般をこなせなくなってきた:家事のサポートが受けられる施設
どんな風に暮らしたいか、老人ホームに何を求めるのか、入居者本人の希望をしっかりと聞くことが大切です。
要介護度認定の必要の有無
入居者本人の現在の介護度で入居できる老人ホームなのか、把握しておくことが大切です。
老人ホームの中には、要介護認定の有無や一定の介護度が入居条件となっている場合があり、入居条件に該当しなければ入居はできません。
また、入居者の介護度によって、老人ホームで提供されているサービスや雰囲気が異なります。
介護度が「自立」の方が入居できる老人ホームでは、介護を必要としない元気なうちから入居できるので、レクリエーションやイベントが盛んに行われています。
そのため、希望する老人ホームの入居条件に、要介護認定が必要であるか確認しておきましょう。
希望する条件に合っているか
医療や介護のサービスを希望する方は、心身の状態に応じたケアを受けられるか、確認しておきましょう。
- 介護職員の人員体制
- 医師や看護職員が常勤しているか
- 提携している医療機関や緊急時・看取りの対応
- 訪問診療や健康診断の頻度や内容
- リハビリや機能訓練の有無
介護体制、医療体制、リハビリ体制の充実度は、入居者が健康で自分らしい生活を送れるようにサポートします。
入居者本人が希望する条件に合っているサービスを受けられる老人ホームを選びましょう。
設備や周辺環境は良いか
安心して入居者が生活できるのか、老人ホームの設備の充実度を把握しておきましょう。
設備が整っていれば、介護度が上がっても不便なく生活することができます。
- 施設内や居室は車椅子に対応しているか
- ドアの形状や床材の材質は入居者の安全面に配慮されているか
- 個人用のキッチンや浴室があるか
- 浴室やトイレは高い介護度の入居者にも対応しているか
- 居室内に家具や仏壇などを持ち込めるスペースがあるか
- 共同スペースの清掃は充分に行き届いているか
また、入居者が散歩や外出に行くのに不便はないか、家族が面会に訪れやすいか、周辺環境も大切なポイントです。
老人ホームの公的施設5種類
老人ホームには、介護度の高い方や低所得の方の保護・支援に重きを置いた公的施設があります。
国の補助金を受けているため、入居者の負担する費用を安く押さえることが可能です。
老人ホームの公的施設は次の5つです。
- 特別養護老人ホーム
- 養護老人ホーム
- ケアハウス
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
上記5つの施設について、詳しく解説していきます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、手厚い介護が必要な方を対象にした老人ホームです。
介護度 | 要介護3~5 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | 65歳以上 |
入居金 | 無し |
月額料金 | 5万~15万円 |
養護老人ホームは、介護保険を利用することで毎月の費用を安く押さえられますが、人気が高く、長期間入居待ちになる場合が多いです。
また、レクリエーションやイベントが少ないので、プライベートを充実させて楽しみたい方には向きません。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、収入がなくて生活が困窮している方や、身寄りがないといった方を対象とした老人ホームです。
介護度 | 自立 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | ・自立して生活が送れる65歳以上の方で、かつ生活保護受給者
・低所得などが原因で在宅での生活が困難 |
入居金 | × |
月額料金 | 0~14万円 |
養護老人ホームは、生活や経済面で困窮した高齢者を擁護し、社会復帰を促すことを目的としています。
食事や健康管理などのサービスは受けられるものの、介護サービスは受けられません。
自治体による入居基準をクリアするのが難しく、施設数・定員数がすくないため、入居の難易度は高いといえます。
ケアハウス
ケアハウスは独居での生活が不安な方を対象とした老人ホームです。
介護度 | 自立~要支援2 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | 独居生活に不安がある65歳以上 |
入居金 | ○:数十万~数百万 |
月額料金 | 10万~30万円 |
介護サービスの提供は行っておらず、介護が必要となった場合、外部のサービスを利用します。
また、レクリエーションが頻繁に行われているので、同世代の方の共同生活を楽しみたい方におすすめです。
ただし、認知症の対応ができない場合が多いので、認知症が心配な方は注意しましょう。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、退院後の生活が困難な方を対象とした老人ホームです。
介護度 | 要介護1~5 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | 日常生活に復帰するためにリハビリが必要な高齢者 |
入居金 | × |
月額料金 | 8万~14万円 |
怪我や病気によって入院していて、退院後在宅への復帰が困難な高齢者のために、リハビリを提供しています。
原則3〜6カ月の短期入所なので、長期間の入所を希望している方には向きません。
介護医療院
介護医療院とは、手厚い医療管理が必要な方を対象とした老人ホームです。
介護度 | 要介護1~5 |
認知症の受け入れ | ○ |
その他の条件 | × |
入居金 | × |
月額料金 | 9万~17万円 |
介護医療院とは、2017年に廃止された介護療養型医療施設に代わり、長期的な医療と介護の両方を必要とする高齢者を対象に、医療ケアや介護ケア、リハビリケアを提供します。
痰の吸引やカテーテル、経管栄養など医療的管理が必要な方でも安心です。
ただし、相部屋が多く、個室を希望する場合は追加料金が発生するので注意しましょう。
老人ホームの民間施設6種類
民間の老人ホームは、公的な老人ホームと比べると費用が高い反面、手厚いサービスを受けることができます。
老人ホームの民間施設は次の6つです。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- シニア向け分譲マンション
上記6つの施設について詳しく紹介していきます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、介護を必要としている高齢者におすすめです。
介護度 | 自立~要介護5 |
認知症の受け入れ | ○ |
その他の条件 | 60歳以上の方(施設によって60歳以下でも可) |
入居金 | 0~数百万 |
月額料金 | 15万~30万円 |
介護付き有料老人ホームでは、24時間体制で介護サービスを受けることができます。
「今後介護度が上がってしまうかもしれないので心配」という方でも安心です。ただし、自立している方でも介護費用が発生するので、注意しましょう。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、「現在のところ介護サービスは不要」と考えている方におすすめです。
介護度 | 自立~要介護5 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | 60歳以上 |
入居金 | 0~数百万 |
月額料金 | 15万~30万円 |
住宅型有料老人ホームで、介護サービスの提供は受けられません。必要に応じて、外部の介護サービスを利用することになります。
また、自立している入居者が多いので、レクリエーションやイベントを楽しむことも可能です。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、アクティブに過ごしたい方におすすめです。
介護度 | 自立 |
認知症の受け入れ | × |
その他の条件 | × |
入居金 | 0~数億円 |
月額料金 | 10万~40万円 |
トレーニングルームや露天風呂などの設備が整っているので、健康的な生活を楽しむことができます。
ただし、健康型有料老人ホームの対象は、自立した方が対象です。食事や生活の支援は受けられますが、介護サービスの提供は受けられません。
認知症を発症したり、介護が必要になったりした場合は退去しなければならないので、注意が必要です。
グループホーム
グループホームは認知症の進行を遅らせたい方におすすめです。
介護度 | 要支援2~要介護5 |
認知症の受け入れ | ○ |
その他の条件 | 65歳以上かつ認知症で、住民票がその地区にある方 |
入居金 | 0~数十万 |
月額料金 | 15万~20万円 |
認知症ケアを行える専門のスタッフが、24時間体制でケアを提供してくれるので安心です。
家事や身の回りのことなど、自分でできることは自分で行いながら共同生活を送ります。
認知症の症状を和らげたり、進行を遅らせたりできる効果が期待できるのは、グループホームならではです。
ただし、施設によっては介護度が上がると退去しなければならない場合があるので、あらかじめ施設の退去要件を確認しておきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅はコストパフォーマンスを重視している方におすすめです。
介護度 | 自立~要介護5 |
認知症の受け入れ | 軽度のみ |
その他の条件 | 60歳以上 |
入居金 | 0~数十万 |
月額料金 | 10万~30万円 |
サービス付き高齢者住宅は、24時間体制でスタッフが常駐しており、介護ケアやリハビリケアといったサービスも充実しています。
他の民間施設と比べて、入居金や月額料金がリーズナブルな施設が多いのは嬉しいポイントです。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、老後の生活を豊かに楽しみたい方におすすめです。
介護度 | 自立 |
認知症の受け入れ | × |
その他の条件 | 費用の支払いができる |
入居金 | 数千万~数億円 |
月額料金 | 10万~30万円 |
シニア向け分譲マンションは、通常のマンションと同様にマンションの所有権を持っているので、財産になります。
温泉やジムなどの設備が充実しているので、日々の生活を楽しみながら健康を維持することができます。
注意しなければならないのは、介護が必要になった場合、外部のサービスを利用しなければならないということです。
介護度が上がったり、病状が悪化したりすると、シニア向け分譲マンションでの生活は難しくなってしまいます。
老人ホームを見学する際にチェックすべきポイント
老人ホームへの入居を検討する際、実際にどのような施設なのか見学したうえで決めましょう。
老人ホームと自宅では生活環境が異なるため、不自由さや不便さがないか確認する必要があります。
老人ホームを見学する際にチェックすべきポイントは次の通りです。
・施設の雰囲気
・スタッフのスキル・勤務態度
・施設設備の衛生管理や充実度
・医療体制
上記4つのポイントについて詳しく紹介していくので、参考にしてください。
施設の雰囲気
老人ホームは入居者にとって大切な生活の場です。
特に認知症の方は、不慣れな環境によるストレスで、認知症の症状が悪化・進行してしまうおそれもあります。
「身体拘束や虐待の兆候がないか」という点も大切なチェックポイントです。
明るく清潔な雰囲気があり、入居者が安心して生活できるような対応をしてくれる老人ホームを選びましょう。
スタッフのスキル・勤務態度
スタッフのスキルや勤務態度は、入居者の安全面に直結します。
スタッフ同士の無駄話や、多忙でスタッフ不在が多いといった場面では、思いがけない事故が起きる可能性が高まるからです。
知識や経験豊かなスタッフは、入居者の体調不良など突然のトラブルにも迅速に対応してくれるので安心といえます。
また、笑顔や丁寧な言葉遣いなど、スタッフの接遇の面も確認しましょう。乱暴な言葉遣いや大きな声を上げるといった行為は、入居者にとって不安や恐怖を招きます。
認知症の入居者1人1人の尊厳に配慮してくれる老人ホームがおすすめです。
施設設備の衛生管理や充実度
入居者の身体や服装、施設内が清潔に保たれているかチェックしましょう。不潔な環境で過ごすと、入居者の心身の不調につながります。
また、衛生管理が行き届いていないということは、人員不足で充分な介護ケアや医療ケアも行えていない可能性があるので注意が必要です。
入居者のために衛生管理が充実している施設を選びましょう。
医療体制
医療体制は、施設ごとによって異なるので、希望する医療ケアを受けられるか確認しておきましょう。
痰の吸引や経管栄養、褥瘡の処置など、入居者に必要な医療ケアは多岐に渡ります。
2022年現在は医療ケアを必要としていなくても、「今後必要になるかもしれない」と不安な方は、看護師が常駐している老人ホームがおすすめです。
老人ホームの選び方に関するよくある質問
できるだけ老人ホーム選びを失敗したくないという方は多いです。
しかし、疑問に感じることや不安なことがあると、どの老人ホームにすればよいのか、決め手に欠けてかえって悩んでしまうかもしれません。
老人ホームの選び方に関するよくある質問は次の通りです。
- 認知症の人の老人ホームはどのように選ぶべき?
- 老人ホームの費用に補助金はある?
- 老人ホームに入るための条件は必要になる?
上記3つの質問に詳しくお答えしていきます。
認知症の人の老人ホームはどのように選ぶべき?
認知症の方や今後認知症が心配な方が老人ホームの入居を検討する場合、認知症を受け入れている施設を選びましょう。
認知症の方を受け入れていない老人ホームに入居してしまうと、認知症発症後に退去し、新たな老人ホームを探さなければなりません。
また、軽度なら受け入れているという施設は、症状が悪化・進行すると退去しなければならない場合があるので注意が必要です。
老人ホームの費用に補助金はある?
老人ホームの費用を年金のみで払いきれない場合、補助金を受けることができます。
「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」というサービスです。老人ホームの月額料金のうち、食費と居住費が所得に応じて決められた限度額以下になります。
特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院に入居またはショートステイする場合に利用可能です。
所得者を対象としており、単身者で1,000万円以上、もしくは夫婦で2,000万円以上の資金がある場合は対象になりません。
老人ホームに入るための条件は必要になる?
老人ホームに入るためには、施設ごとの入居条件を満たさなければなりません。
年齢や介護度、認知症の有無、リハビリの必要性など、入居条件は施設ごとに異なります。入居希望者の現在の状態と比較して、入居条件を満たしているか確認しましょう。
まとめ:老人ホームの選び方を知って適切な老人ホームを選ぼう
老人ホームは希望する条件や目的によって、自分や家族に合っている施設が変わります。
認知症ケアやリハビリに特化した施設や、終身で入居できる施設など、施設の特徴はさまざまです。入居希望者が老人ホームに求めているサービスや、どんな生活を送りたいのか、本人の意思を尊重した上で選びましょう。
ただし、施設ごとの入居条件を満たしていることも大切なポイントです。
満足のいく老人ホームに入居できるように、気になる施設を訪問・見学し、慎重に検討しましょう。