高齢者への支援のポイント
年代を問わず、腰痛に悩んでいる方は多いでしょう。特に、高齢者で腰痛に悩まれている方は、日常生活への支障や病気になる可能性もあります。若い方と高齢者では、腰痛の症状や原因が異なっているのです。高齢者に起きる腰痛の特徴と改善方法について紹介します。
高齢者は慢性疼痛が多い
若い年代では、ぎっくり腰のような急性疼痛の方が多いですが、高齢者の場合は、慢性疼痛で悩まれている方がほとんどです。症状には以下のような違いがあります。
- 【急性疼痛】
- 運動時に痛みが生じることが多い、腰以外の痛みはあまりない
- 【慢性疼痛】
- 腹痛以外の症状を伴う(足の痺れ、お尻の痛み、うつ症状など)
腰が痛くなってしまうと、動くのが億劫になり、座ったまま、横になったきりという方も少なくありません。しかし、高齢者が体を動かさなくなってしまうと、身体機能が低下してしまい、病気にもかかりやすくなってしまうでしょう。痛みの原因を探り、腰痛を改善していくことが大切です。
高齢者の場合の腰痛原因
高齢者の腰痛は、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、脊椎骨折などによって引き起こされています。それぞれの症状について確認していきましょう。
- 変形性脊椎症
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊椎骨折
高齢になると脊椎骨が変形する、椎間板の変性が起きることが、主な原因です。脊椎の可動域が制限され、姿勢が悪くなります。そのため、筋緊張の張りが強くなり、筋肉疲労によって痛みが起こると言われています。また、朝に痛みが強く、体を動かしているうちに痛みが軽減することも多いです。
背骨の中にある脊髄の通路が狭くなり、神経が圧迫されている状態です。下肢の痺れがあり、坐骨神経痛などの痛みや運動障害を起こします。変形性脊椎症や椎間板変性(椎間板ヘルニア)などが原因とされています。
高齢になると、骨密度が低くなり、骨がもろくなります。これにより、脊椎が窺弱性(ぜいじゃくせい)骨折をしやすい状態になっているのです。転倒だけではなく、咳やくしゃみなど、軽い刺激によって起きる場合もあります。悪化すると、腰部脊柱管狭窄症も伴い、下肢の神経にも影響します。
腰痛タイプを把握しておく
腰痛にはタイプがあります。腰痛を改善するには、自分がどのタイプかを把握しておくことが必要です。次の項目に当てはまるものをチェックしてみてください。
- 1. パソコン作業など長時間座っていることが多い
- 2. 前かがみの姿勢で作業をすることが多い
- 3. 重い荷物を運ぶことが多い
- 4. 猫背である
- 5. 長時間立ち仕事をしている
- 6. 腰を反らして立つ癖がある
- 7. 左右に偏った動作をしがち
- 8. 座るときに足を組む癖がある
- 9. 腰の左右に違和感がある
- 1~4にチェックが多い…「そらし改善タイプ」
- 5~6にチェックが多い…「おじぎ改善タイプ」
- 7~9にチェックが多い…「横ずらしタイプ」
髄核(ずいかく)が後方にずれているため、腰を反らすことで中心に戻るタイプです。
髄核が前方にずれているため、おじぎをすることで中心に戻るタイプです。
髄核が左右どちらかにずれています。上半身を横に曲げると中心に戻るタイプです。
髄核は、椎間板の中心にある、水分を多く含んだ組織のことです。慢性疼痛は、「そらし改善タイプ」の方が約8割を占めています。
タイプ別の腰痛改善体操
それぞれのタイプ別腰痛改善体操を紹介しましょう。
- そらし改善タイプ
- おじぎ改善タイプ
- 横ずらしタイプ
両足を肩幅と同じぐらいに開き、腰に両手をあてて、上体をゆっくり後ろに反らします。反りきったら3秒ほどキープし、徐々に体を前に戻してください。膝を曲げないように注意しましょう。
イスに腰掛け、両足を肩幅より少し広めに開きます。両手で足首をつかみ、ゆっくりおじぎをします。
ひじを曲げた状態で、肩と水平に壁にひじをつけ、お尻を壁側にずらします。右側に痛みがある場合は左ひじを、左側に痛みがある場合は、右ひじをついて行うようにしましょう。
腰痛になる原因を取り除くために、自分の腰痛タイプを把握する必要があります。自分に合った腰痛体操をし、痛みを緩和するようにしましょう。また、長時間同じ姿勢でいる場合は、ストレッチをし、適度に体を動かすことを意識してみてください。