介護保険まるわかり
高齢者の中には、身体機能の低下や疾病、怪我などによって、排泄のサポートが必要になる方もいらっしゃるでしょう。その場合、尿取りパッドや紙おむつなどが必需品になりますが、経済的な負担になることもあります。公的介護保険制度は、このような方に対しておむつ代を負担してくれます。
具体的にどのようなものか、確認してみましょう。
■おむつ代は意外と馬鹿にできない
排泄での介助は、要介護レベル2の判断基準の一つなっていますが、レベルが1であっても、支援が必要な場合もあります。
寝たきりで生活している成人の場合、紙おむつの1日の交換回数は5回以上必要です。大人用の紙おむつとなると、紙パンツタイプであっても、サイズや高い機能性を求めると、価格が高くなります。また、介護レベルが高い人の場合、紙おむつに加え、尿取りパッドや介護用シーツ、おしりふきといったものも必要になってきます。1ヶ月のおむつ代は、紙パンツタイプのみでも10,000円以上、場合によっては30,000円近くの出費が見込んでおいた方がいいでしょう。
・1ヶ月でかかる介護のおむつ代相場
1ヶ月でかかる介護のおむつ代がどれくらいの金額になるのかを計算してみましょう。
高齢者の排泄量は1回につき100~150cc、排泄する回数は8~10回。それを踏まえて、おむつメーカーの商品も、高齢者が1回に排泄する尿量を150mlと見積もっており、2回分の300mlをカバーできるものが多いといえます。
したがって、おむつは基本的に排尿2回につき1回の取り替えが必要で、1日でするおむつ交換は4~5回ほど必要になってくるとわかります。
また、複数のおむつメーカーによると、おむつ1枚当たりの値段は平均50~60円程。すると一日あたり200~300円、1ヵ月だと6,000~9,000円程のおむつ代が必要になるといえます。
■紙おむつ給付・助成制度とは
おむつや尿取りパッドなどは、毎日使う消耗品です。たとえ少額であっても、長期間だと経済的な負担となってしまいます。このため、市区町村などの地方自治体は、介護用の紙おむつや排泄用品の現物支給や助成金支給などを実施しています。大阪市でも紙おむつや尿取りパッドの介護用品を給付しています。
制度の対象者となるのは、以下に該当する方です。
・65歳以上の第1号被保険者
・要介護レベル3以上
・おむつが日常的に必要とされる方
また、要介護レベルに関わらず、医師による診断によって、日常的におむつの使用が認められた場合は、給付対象となることがあります。給付を希望する場合は、市区町村の保健福祉課や地域包括支援センターに申請し、給付決定を受ける必要があります。この手続きも、各団体によって異なるため確認が必要です。
・支援内容は現物支給が多い
紙おむつの給付・助成制度は、現物で支給しているところが多いようです。給付が決定すると、自治体によって利用できる紙おむつのパンフレットが送られたり、おむつ交換用のチケットが配布されたりします。特定の紙おむつを使いたい場合は、認可の有無について窓口に相談してみましょう。
おむつの購入費用を現金で給付する場合は、高齢者本人や家族が自分でおむつを購入し、そのレシートを申請書に添付する必要があります。レシートの管理や、実際の購入から給付まで時間がかかるため、希望する方は注意してください。
・助成内容は自治体によって異なる
助成内容は自治体によって異なります。
紙おむつ以外にも、尿取りパッド、使い捨て手袋、清拭剤、ドライシャンプーなどを支給する箇所もあるので、自治体のHPをよく見て条件を確認しましょう。
また、おむつ支給事業は、介護保険以前から実施されており、低所得者向けの市町村の家族支援事業として位置づけられてきた経緯があるので、安定して供給することが可能です。
・紙おむつ助成制度は無料なのか
公的介護保険では、介護に関する「サービス」を対象としているため、おむつ代や介護食などの物品支給は原則対象外となっています。このため、介護保険以外の支援として、市区町村が独自にサービスしています。無料で支給していることもありますが、利用者に対して月500円程度の自己負担が必要な自治体もあるため、調べるようにしましょう。
■おむつ代の負担限度額はあるのか
自治体では、1ヶ月の紙おむつ代の負担限度額を定めています。限度額は市区町村によって差がありますが、5,000円~1万円程度です。また、自治体によっては、要介護レベルに合わせて、限度額の上限を決めているところもあります。自分の地域の限度額を確認しておきましょう。
高齢者や介護する家族にとっては、おむつの購入自体が負担になっている場合もあります。ただし、市区町村によって、対象となる条件や具体的な支援内容が異なり、制度そのものがない自治体もあります。お住まいの地区の保健福祉課や、地域包括支援センターに問い合わせ、担当の社会福祉士に相談してみましょう。
■紙おむつの支給例
ここでは、各自治体が行っている紙おむつの支給例を紹介していきます。
自治体ごとに特徴があるので、少しでも把握しておくことが大切です。
・東大阪市
東大阪市の紙おむつ支給例を紹介します。
東大阪市では、
・東大阪市では在宅で居住し、住民基本台帳に登録してある方
・要介護3、4、5のいずれかの認定を受けている方
・住民税世帯非課税の方
・生活保護を受給していない方
・納期限から1年を経過している滞納保険料がない方
・障害者総合支援法に基づく紙おむつの支給を受けていない人
が対象です。
介護者が2人以上いる場合でも、申請できるのは1人。該当する市内にお住まいの高齢者(要介護高齢者)を在宅で介護している、市内にお住まいの家族(介護者)です。ただし、要介護高齢者の世帯および介護者の世帯は、市民税が非課税の場合に限ります。
加えて、介護が必要な高齢者の家族に、おむつを含む介護用品と引き換えられる給付券を交付。申請に基づき、給付の対象となる介護用品と交換できる給付券(1か月あたり6,500円)を、申請のあった月に応じて、申請者に交付します。(1年間に最大12枚)
給付の期間は7月から翌年の6月までです。そのため、受給中の方も、毎年、更新の手続きが必要です。
・遊佐市
遊佐市の紙おむつ支給例を紹介します。
遊佐市では、
・寝たきり等で常時失禁のある在宅生活者(グループホーム等含む)
・介護保険の介護認定2で要介護2~要介護5の判定を受けた方
が対象となります。
また、例外として
・長期入院や介護保険施設に入所している方
・原則的にその月の半数以上(15日間)入院や入所(ショートステイを含む)している方
は対象外なるので注意しましょう。
支給方法としては月に1度、現物支給します。
配達は、町内に住んでいる対象者の世帯へ直接配達することで安否確認を同時にしていきます。紙おむつの配達時期の目安は毎月上旬~中旬です。
例年、対象世帯の所得状況調査を実施する8月支給分などについては、支給額の再計算業務により配達が下旬となっているので把握しておきましょう。
・江東区
江東区の紙おむつ支給例を解説します。
江東区では、
・江東区にお住まいの65歳以上の方
・要介護3・4・5または、重度の認知症等のため排泄意識がなく常時失禁状態の方
・病院に1ヶ月以上継続して入院している方
・区で定める所得基準額以内の方
・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設に入所していない方
・生活保護を受給していない方
・心身障害者紙おむつの支給を受けていない方
が対象です。
支給方法は、月に1度、自宅等に紙おむつを配送。区で作成したカタログの中から支給限度である60点まで選択できるので、紙おむつ以外も選択可能です。
配送先が区内で、選択したおむつ60点以内の場合は無料。配送先が区外の場合は、配送料がかかります。また、支給限度を超えた場合、1点につき100円を自己負担しなければなりません。
・板橋区
板橋区の紙おむつ支給例を解説します。
板橋区では、
・板橋区に住民登録のある方
・要介護1以上で、常時失禁状態の方
が対象です。
ただし、次のいずれかに当てはまる場合は対象になりませんので、注意が必要です。
・支給対象者の世帯のうち、区で定める所得基準額を超える方
・生活保護世帯または中国残留邦人等支援給付世帯である方
・介護保険施設に入所している方
・板橋区心身障がい者紙おむつ助成事業の給付を受けている方
支給方法は、区が指定する紙おむつ支給品の中から、一種類を区の委託事業者がご希望の配送先へ無料で配送。ただし、東京23区外への配送は有料(送料実費負担)となります。
また、紙おむつの持ち込みを禁止している病院や施設に入院・入所している場合は、現物支給に代えて月額5,000円を上限におむつ代を支給。区で作成したカタログの中から支給限度内である60点の中から選択できるので、紙おむつ以外も選択可能です。
配送先が区内で、選択したおむつが支給限度内の場合は無料です。配送先が区外の場合、配送料がかかります。また支給限度を超えた場合、1点を100円として自己負担しなければなりません。
■まとめ
おむつの助成金や給付に関して、介護保険で利用できる制度はありません。
しかし、各市区町村によって、要介護者を対象とした介護用品についての制度が用意されている場合があります。
支給方法は各市区町村によって異なり、助成金を支給する方法や専用の給付券を発行する方法、おむつを現物支給する方法等もあります。
対象者は、基本的に要介護認定を受けている方です。おむつの消費量が多く、家計を負担しているレベルであることが条件で、主に要介護4~5の介護度を対象としている場合が多くみられます。
また、同居している世帯の全員が非課税であるといった世帯収入にも条件がありますので、申請前に、お住いの市区町村に確認が必要です。年度によっても条件が変更になる恐れがあるので、自分が支給条件に当てはまるのかどうかを必ず把握することを推奨します。
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