寝たきりの人への介護の仕方は?注意点や利用できる介護サービスも紹介

在宅介護について

この記事では、寝たきりの人への介護の仕方や注意点、利用できるサービスなどを詳しく解説していきます。

「寝たきりの人に対して、どのように介護すればいい?」と悩んでいる人は少なくありません。

この記事を読めば、寝たきりの人への適切な対応方法がわかるでしょう。寝たきりの人への介護の仕方で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

● そもそも寝たきりとは?

● 【項目別】寝たきりの人への介護の仕方

● 寝たきりの人を介護する際の注意点

● 寝たきりの人が利用できる介護サービス

● 寝たきりの人への介護に関するよくある質問

そもそも寝たきりとは?

「寝たきり」に明確な定義はありません。

寝たきりの主な原因は、認知症や脳血管疾患、加齢などによる身体機能の低下とされています。

寝たきりは、主に以下の観点から判断することが一般的です。

  • 寝たきりの症状
  • 寝たきりの要介護度

上記2つの観点をそれぞれ詳しく紹介していきます。

寝たきりの症状

寝たきりの状態が続いて起こるさまざまな症状を「廃用症候群」といいます。

体を動かす機会が減少すると、体力や筋力が低下し、内臓がうまく機能しなくなり、全身に症状が現れます。

運動器障害 ・筋萎縮:筋肉が痩せて衰える

・関節拘縮:関節が固くなって動きが悪くなる

・骨萎縮:骨の密度が低下して脆くなる

循環・呼吸器障害 ・誤嚥性肺炎:寝たきりで痰が溜まりやすく、気管支や肺に入って炎症が起こる

・心肺機能の低下:心臓の機能が低下し、全身に充分な血液や酸素が行き届かなくなる

・血栓塞栓症:血の塊ができて血管が詰まる

自律神経・精神障害 ・うつ状態:気分が落ち込んで意欲が出ない

・せん妄:周りの状況を理解できず、幻覚や錯覚が生じる

・見当識障害:自分が今いる場所や時間がわからなくなる

思うように体を動かせないと億劫になり、さらに体を動かす機会が失われます。

高齢者の場合、廃用症候群の進行が早く、1週間寝たきりの生活が続くと、約10〜20%の筋力低下が見られるため注意が必要です。

寝たきりの要介護度

寝たきりとされる状態は、要介護4もしくは5に相当します。

要介護4と5の認定における大きな差は、意思疎通の違いです。意思疎通が難しい場合、要介護5と認定されるケースが多くなります。

要介護4以上の場合、食事や排泄、入浴など、日常生活全般での介護が必要です。

【項目別】寝たきりの人への介護の仕方

寝たきりの人に誤った方法で介護すると、思いもよらぬケガや事故を招きます。

そのため、正しい知識や方法を把握したうえで、介護しましょう。寝たきりの人への介護の仕方は、以下の項目別に異なります。

  • 歩行介助
  • 更衣介助
  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 体位変換

上記6つの項目ごとに詳しく紹介していくので、普段の介護に役立ててください。

歩行介助

寝たきりの人の場合、歩くのが難しい状態にあります。したがって、ベッドで横になったままの状態では身体機能が低下するだけではなく、覚醒状態も悪くなってしまいます。

対策として、介護ベッドのリクライニング機能を利用して座った姿勢(長坐位)をとったり、車椅子で座ったりして過ごしてもらいましょう。

ただし、寝たままの状態で介護ベッドをリクライニングすると、背中側の皮膚に摩擦や圧が加わり、床ずれ(褥瘡)の原因となります。

また、急に上体を起き上がらせると、起立性低血圧によるめまいを起こして、倒れこんでしまう場合もあるので注意が必要です。

クッションなどを使用して膝を軽く折り曲げて、頭側をゆっくりギャッチアップしてください。

最初は、ゆるやかな角度で5分ほどから始め、次第に角度を上げて時間を伸ばしましょう。

筋力のアップだけではなく、循環・呼吸機能のアップも期待できるので、歩行介助につなげていける可能性が高まります。

更衣介助

要介護者に麻痺や関節拘縮がある場合、更衣介助では「脱健着患(だっけんちゃっかん)」を意識しましょう。

脱健着患とは、動かしやすい側の服から脱がせ、麻痺などで動かしにくい側から服を着せる方法です。介助中の要介護者のケガを防げるだけではなく、介護者にとっても介助をスムーズに行えます。

また、無理な可動域で介助しようとすると、要介護者に負担がかかってしまうので注意が必要です。

  • 拘縮した関節は痛みを伴いやすい
  • 麻痺した側の関節は脱臼しやすい

要介護者にとって動かしにくい側の更衣介助は、無理な可動域で動かそうとせず、ゆっくりと行いましょう。

食事介助

寝たきりの人は、咀嚼する力や飲み込む力が弱っているので、柔らかく飲み込みやすい形態の食事を用意しましょう。

唾液や胃粘液の量の低下や、消化器の活動低下によって、以前ほど食欲がない人も少なくありません。したがって、本人の嗜好に合わせた食事を提供するほか、形態が変わっても食事と認識できるように、メニューの説明を心がけましょう。

また、食事の際の姿勢が悪いと、食べ物が気管に流れてしまい、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。姿勢に関する注意点は、主に以下の通りです。

  • 深く椅子に腰掛け、足裏はしっかりと床についている
  • 膝や肘が90度に保たれている
  • 顎が上がった状態ではなく、自然に顎を引いた姿勢をとれている

寝たきりの人は筋力が低下しているので、姿勢を保つだけでも疲労を感じやすい傾向にあります。したがって、食事時間が長くかかりすぎない配慮も心がけましょう。

入浴介助

入浴介助は、寝たきりの人にさまざまなメリットをもたらします。

  • 全身を清潔に保てる
  • 細菌による感染症予防にも役立つ
  • 体を温めることで血行が促進され、関節の痛みを和らげる
  • リラックス効果により、夜間の睡眠の質が向上する

ただし、入浴介助は転倒や循環動態の変化に伴う、体調不良といったリスクにも注意が必要です。したがって、体調が優れない日や覚醒状態が良くない日は、無理に入浴介助を進めず清拭や部分浴に切り替えてください。

また、入浴介助は全身の皮膚の状態を観察できる絶好の機会です。皮膚に湿疹や赤み、掻き壊しといった皮膚トラブルがないか観察します。

乾燥がひどい場合は、特に念入りに保湿ケアを実施し、必要に応じて皮膚科の受診を検討しましょう。主に、以下は褥瘡の好発部位のため注意が必要です。

  • 背中
  • 大転子部
  • くるぶし

寝たきりの人は褥瘡を起こしやすいので、特に注意して観察してください。

排泄介助

排泄介助では、要介護者のプライバシーや尊厳に配慮する必要があります。特に、寝たきりの人は自力でトイレに行くことが難しく、オムツを使用している人も少なくありません。

尿意や便意を自覚でき、意思疎通ができている状態での排泄介助は、羞恥心を伴います。

「人の手を借りて情けない」「自分でトイレにすら行けない」といった自信の喪失につながらないように、介護者はネガティブな言葉を避けてください。

また、肌に水分が残った状態で新しいオムツを履いたり、不潔なオムツを長時間使用したりすることは、肌がかぶれてしまう原因です。

しっかりと肌の水分を拭き取ってから新しいオムツを着用し、常に清潔な皮膚を保ちましょう。

体位変換

長時間同じ姿勢を取り続けていると、同じ部位に圧が集中し、褥瘡ができやすくなります。

衣類や寝具による摩擦・ズレは褥瘡を起こす大きな原因です。衣類やシーツのしわもしっかり伸ばしましょう。

特に、ベッドのリクライニング機能で上体を起こす場合、背中や脚側の皮膚が引っ張られて、ズレが生じやすい傾向にあります。

先に、ベッドの足側を上げてからリクライニングし、体のずり落ちを防いでください。リクライニング後は、背中に要介護者の手を差し伸べて、背中に生じた圧を抜くことも欠かせません。

さらに、褥瘡の予防には、2時間おき間隔の体位変換が重要です。除圧のマットレスを使用する場合、4時間までなら体位変換の間隔をあけても問題ないとされています。

介護者の負担を減らすために、除圧のマットレスの使用を検討しましょう。

寝たきりの人を介護する際の注意点

寝たきりの人は、身体機能が低下しており、日常生活全般で周囲のサポートが必要となります。

しかし、予備能力も低下しているため、一旦体調を崩してしまうと回復までに時間もかかりやすいといえます。そこで、寝たきりの人を介護する際は以下の注意点に気をつけましょう。

  • 誤嚥に注意する
  • 床ずれ(褥瘡)に注意する
  • 常に身体を清潔に保つ
  • プライバシーを尊重する

上記4つの注意点について、詳しく解説していきます。

誤嚥に注意する

寝たきりの人は飲み込む力が弱っているので、食事中に誤嚥しやすい傾向にあります。安定した姿勢で食事を摂れるように、介護者はサポートしましょう。

また、口腔内で繁殖した雑菌を唾液と共に誤嚥してしまうと、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。誤嚥性肺炎の予防のためには、食後の口腔ケアで清潔を保持することも欠かせません。

さらに、咳払いして痰を自分で出せず、気道から分泌された痰が肺に流れ込んでしまい、肺炎を起こしてしまう場合があります。

痰が絡んでいる側を上にした横向きの体勢や、上体を起こした体勢がとれるように、環境を調整しましょう。

床ずれ(褥瘡)に注意する

褥瘡を放置して悪化してしまうと、感染症を起こしてしまう危険があります。褥瘡の予防のためには、以下のポイントを取り入れてみましょう。

  • 除圧できるマットレスを使用する
  • 2時間おきに体位変換する
  • 栄養バランスの整った食事で身体が痩せるのを防ぐ
  • おむつは早めに交換して清潔を保つ

除圧できるマットレスは、介護保険を利用すれば、1〜3割の自己負担額でレンタルできます。短期間のお試しも可能のため、使用してみたい場合はケアマネジャーに相談してください。

また、骨の出っ張った部分は、圧が集中してかかりやすいので、痩せてしまうと褥瘡のリスクが上がります。

したがって、豊富なたんぱく質を中心とした、栄養バランスの整った食事を意識しましょう。

皮膚の赤みなど褥瘡の徴候を見つけたら、できるだけ早くかかりつけ医やケアマネジャーに相談し、適切な対策を進めることも大切です。

常に身体を清潔に保つ

寝たきりの人は、自分で身体の清潔を保つのが難しいため、介護者の対応が重要です。清潔な状態を保てないと、皮膚の痒みや白癬症(水虫)といった感染症のリスクを伴うでしょう。

また、寝たきりのまま過ごしていると、血行が滞って皮膚の代謝や免疫が落ちやすくなります。

在宅で入浴介助する場合は負担が大きいので、訪問入浴やヘルパーを利用したり、部分浴で対応したりなど工夫しましょう。

プライバシーを尊重する

多くの寝たきりの人は、自力でトイレに行くのが難しいだけではなく、尿意や便意がわかりにくくなってしまいます。意思疎通が可能な場合、「介護されることに抵抗を感じる」と感じることも少なくありません。

介護者が全てサポートするのではなく、要介護者にもできる範囲で協力してもらい、プライバシーや自尊心に配慮しましょう。

寝たきりの人が利用できる介護サービス

寝たきりの人は、さまざまな介護サービスを利用することで、介護者の負担を減らせます。

寝たきりの人が利用できる介護サービスは、主に以下の2種類です。

  • 居宅サービス
  • 施設サービス

上記2種類のサービスを、詳しく解説していきます。

居宅サービス

居宅サービスは、在宅で生活しながら利用できる介護サービスです。

サービス名 サービス内容
訪問介護 ホームヘルパーが自宅に訪問して、排泄介助や衣類の着脱などの日常生活全般を介助してもらう
訪問入浴介護 自宅の浴室で入浴介助してもらう
訪問看護 看護師や保健師を中心とした医療従事者が自宅を訪問し、褥瘡の処置や療養上の相談、栄養や食事の指導などが受けられる

介護サービスは要介護認定を受けることで利用できます。したがって、利用開始前にケアマネジャーに相談し、居宅介護支援を受けましょう。

施設サービス

施設サービスは、在宅で介護を続けていくのが難しい場合、施設に入居することで受けられる介護サービスです。

サービス名 サービス内容
デイサービス 利用できるのは1日単位で、食事の提供や入浴・排泄の介助などを受けられる
ショートステイ 最大30日連続で利用でき、利用期間中は食事の提供や入浴・排泄の介助などを受けられる

デイサービスやショートステイは、短期間施設に入居し、日常生活全般の支援を受けられます。

気軽に外出できない寝たきりの要介護者にとって、家族以外の人との交流や気分転換が図れる良い機会です。

また、寝たきりの人の介護は心身の負担が大きく、介護疲れから家族が介護うつを発症してしまう場合があります。

居宅サービス以外に、施設サービスもうまく利用して、家族の負担を減らすことも大切です。

寝たきりの人への介護に関するよくある質問

最後に、寝たきりの人の介護に関する、よくある質問を紹介します。

  • 要介護5の在宅介護は無理?
  • 在宅介護の限界点はどう決めればいい?
  • 寝たきりの人の余命はどれくらい?

上記3つの質問に答えていくので、悩みの解消に役立ててください。

要介護5の在宅介護は無理?

在宅介護は不可能ではないものの、2時間おきの体位変換やおむつ交換など、家族の負担がかなり大きくなります。

要介護5は、介護に要する時間が110分以上であるとされています。したがって、日常生活全般において介護が必要であり、意思疎通が難しいことも少なくありません。

居宅サービスや施設サービスをうまく組み合わせて工夫することが大切です。

在宅介護の限界点はどう決めればいい?

在宅介護の限界点は、介護者である家族が決めるものです。

ただし、いきなり限界点が生じるわけではありません。段階を踏んで少しずつ、在宅介護の限界点を迎えるケースが多いといえます。

そのため、介護疲れから家庭が崩壊するより前に、外部の介護サービスを頼ったり、施設入居を検討したりしましょう。

寝たきりの人の余命はどれくらい?

寝たきり1年後の平均生存余命は、2〜8年とされています。

一般的な平均介護期間は約5年1ヶ月であり、寝たきりの人が介護を必要としている期間は平均よりもずっと少ないといえるでしょう。

寝たきりの人は、全身の状態が悪化しやすいため、平均余命が短い傾向にあります。

寝たきりの人の介護に限界を感じたら訪問介護や施設を検討しよう

寝たきりの人は日常生活全般において介護が必要なため、介護者の負担が大きくなります。廃用症候群や褥瘡、誤嚥性肺炎などを起こさないように、介護の仕方を工夫することも大切です。

また、家族だけで介護の負担を抱え込んでしまうと介護疲れや介護うつといった、新たな問題が生じるおそれもあります。

訪問介護や施設の利用を検討しながら、寝たきりの人の尊厳に配慮した介護を心がけましょう。

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