高齢者の病気・症状
寝たきりや運動不足の状態が続くと、むくみやすくなります。高齢者は、運動不足だけでなく、病気が原因でむくみができることもあるのです。むくみの原因や改善方法について確認していきましょう。
■むくみには病気によるものがある
むくみができる理由は、皮膚の下の皮下組織に、余分な水分が溜まっているからです。むくみの原因はいくつかあり、高齢者は複数の要因が重なって発症する場合が多いです。なかには、病気が原因でむくみが起きているという方もいらっしゃいます。むくみを引き起こす病気には次のようなものがあります。
・体の両側にみられる場合
心臓病、腎臓病、甲状腺機能低下症などの病気が挙げられます。上大静脈症候群、慢性静脈不全といった一部の障害によって、引き起こされている可能性もあるようです。また、漢方薬や糖尿病の治療などの薬が原因の場合もあります。
・体の片側、または一部にみられる場合
リンパ浮腫、深部静脈血栓症、慢性静脈不全などの病気があります。また、熱傷、外傷といった感染症の場合も考えられます。
■むくみの治療方法
病気が原因の場合は、原因になっている病気の治療を優先して行いましょう。例えば、静脈不全の場合、静脈が逆流しないように弾性ストッキングを着用し、下肢を圧迫します。その治療と並行して、利尿薬を使用し、体内の余分な水分の排出を促します。
■むくまないために同じ姿勢をしない
むくみを予防するには、同じ姿勢を長時間とらないことです。立ち仕事の場合は、定期的に足を曲げたり伸ばしたりする運動をしましょう。デスクワークが多い方は、筋力向上のために、1時間おきに起き上がる運動をするのもおすすめです。こまめに歩いたり、屈伸運動をしたりすると血行が良くなり、むくみ予防になります。
高齢者で寝たきりの場合は、背中や臀部に水が溜まりやすいです。定期的に体の向きを変えるようにしましょう。在宅で介護をしている場合は、体位交換用の器具などを利用すると負担が軽くなります。また、寝る際には、かかとの下から膝の裏あたりに、枕や座布団などを入れてみると良いでしょう。足元を少し高くすることで、むくみの軽減が期待できます。
■足浴するのも効果あり
足浴は15分程度を目安に行いましょう。高齢者の体を冷やさず、体力を余分に消費しないようにすることが大切です。体が温まりすぎてしまうと、汗をかき、体温を奪われてしまいます。風邪を引かないように、汗をかきすぎない程度に行ってください。また、湯加減も調節が必要です。温度は39~42度と言われていますが、温度の感じ方には個人差があります。お湯が熱すぎないか確認をしましょう。また、足浴は食後すぐに行うと胃の働きが低下してしまいます。食後すぐに行うのは控えるようにしてください。
足浴をすることで、脚が温まり全身の血液の巡りが良くなります。老廃物の排泄がスムーズになることは、むくみの改善に繋がります。全身浴と比べると、心臓への負担も少ないため、高齢者におすすめです。衣服を着たままできるため、在宅介護でも気軽にできるのもメリットでしょう。
足浴には血行を良くするだけでなく、足の皮膚を清潔にする効果、リラックス効果もあります。皮膚を綺麗にすることで、感染症の予防になります。血行が良くなることで、副交感神経が刺激されるため、睡眠促進も見込めるでしょう。一緒にマッサージも行えば、効果を高めることができます。
むくみは、血行が悪くなり、余分な水分が溜まることで引き起こされます。高齢者の場合は、病気が原因で浮腫んでいる場合があるため、注意が必要です。予防するには、ストレッチを行い、長時間同じ姿勢で過ごすことを避けましょう。また、足浴はむくみの解消だけでなく、感染症の予防やリラックス効果も期待できます。高齢者に負荷がかからないよう、配慮して行ってください。
■足浴の効果
足浴の効果について紹介します。
足浴には、
・下肢の皮膚を清潔に保ち、感染症を防ぐ
・血行を良くし、血流障害を予防する
・リラックス効果や睡眠促進効果がある
という効果があります。上記の3点を詳しく解説していきます。
・下肢の皮膚を清潔に保ち、感染症を防ぐ
足浴は、全身浴と同様に下肢を洗浄して皮膚を清潔に保ち、感染症などを予防する効果があります。
足の皮膚を汚れたままにしておくと不衛生ですし、細菌が発生することも。足浴は、そのような事態を未然に防ぐとともに、皮膚を清潔にすることで創傷の治癒を早められるという効果があります。
・血行を良くし、血流障害を予防する
足浴で足を温めることで、全身の血行を良くして循環機能を高めます。
足は体の末端にある部位なので、血流が滞りやすいという特徴があります。血の巡りが良くなると、老廃物の排泄がスムーズになり、むくみの改善にも役立ちます。
・リラックス効果や睡眠促進効果がある
足浴によって全身の血流が良くなることで、気分を落ち着かせる働きのある「副交感神経」が優位になり、リラックス効果や睡眠促進効果を得られます。
また、足を温めることにより筋肉の疲労軽減や、疼痛(ずきずき痛むこと)の緩和という効果も。
足浴と同時にマッサージを施せば、さらに効果を高められるでしょう。
足浴は、病気や疾患の種類によっては、ケアプランに組み込むことが義務付けられているほど、体に有効な入浴方法として知られています。
「足は第二の心臓」といわれます。体の末端ということもあり、じっくりと見る機会が少ない部位ですが、足浴をすることで観察できるチャンスです。そこから思わぬ病気が見つかる可能性もあるので、ぜひ足浴をしましょう。
■足浴の注意点
足浴には体に良い効果がたくさん期待できる一方で、注意すべき点もあります。特に、高齢者に足浴をする際は、より配慮しなければなりません。
ここでは、
・体をなるべく冷やさない
・お湯の温度や力加減に注意する
・時間帯に配慮する
・足の状態をよく観察する
の4つを注意点として解説します。
・体をなるべく冷やさない
足浴は、15分程度を目安に手早く行い、余分な体力を消耗するのを避けましょう。体が温まりすぎて汗をかくと、体温を奪われてしまうので、汗をかかない程度の時間に収めることが重要です。
また、露出部分を極力少なくして、ひざ掛けやバスタオルなどで保温しながら行いましょう。
足浴が終わった後はしっかりと水気を拭き取ってください。
・お湯の温度や力加減に注意する
足を浸けるお湯の適温は39~42度とされていますが、人によって感じる温度は異なります。足をお湯に触れさせる前に、熱くないか必ず確認するようにしましょう。
また、足を洗うときの力加減にも注意が必要です。「痛くないですか?」とこまめに声をかけ、高齢者にとってちょうどいい力で洗うように心掛けてください。
・時間帯に配慮する
足浴の効果を高めるには、行う時間帯に配慮することも大切です。
昼間の気温の高い時間帯やお昼寝前などに行うと、高齢者の体にかかる負担を小さくできます。全身浴と同様、食後の足浴は血液を皮膚の表面に集めるため、胃の働きが低下し消化不良を引き起こす可能性があります。
食後すぐの足浴は避けましょう。
・足の状態をよく観察する
足の状態を観察するポイントには、「皮膚が乾燥していないか」「皮膚が変色していないか」「臭気はないか」「爪の状態は正常か」などが挙げられます。
介護者の場合は、足浴を行いながら被介護者の足先に何か不調の兆候が出ていないかをよく確認しましょう。特に、水虫や爪白癬(爪の水虫)などのトラブルについては注意深く観察してください。
症状の度合いによっては、専門医の診察が必要です。
■むくみに効果的な足浴の方法
むくみに効果的な足浴の方法として、
・足浴の準備
・洗浄
・かけ湯
・拭き取る
・薬を塗る
の5種類があります。それぞれのポイントもまとめたので、解説していきます。
・足浴の準備
足浴の手順として、まずは「足浴の準備」をします。一見して少ないように思われますが、準備するものは多数あります。
お湯が冷めないように足浴するには、基本的な準備を整えておくことが大切です。
まずは、足浴の基本的な準備品についてご紹介します。
足浴の準備のポイントは以下の通り。
1.事前に高齢者の体調や傷口がないかなど足の状態を確認する
2.事前にトイレは済ませておくように伝える
3.お湯の量は足の甲、くるぶしがつかる程度にする
4.お湯の温度が冷めないように計りながらお湯を継ぎ足す
5.糖尿病や麻痺など感覚が鈍い方は、事前に健側の足または手でお湯の温度を確認してもらう
この5つをしっかりと把握しておきましょう。
・洗浄
次に、準備したバケツ(お湯)に足を3〜5分ほどつけておき、その間にビニールエプロンと手袋を着用。
準備したせっけんをガーゼに付け、軽く泡立ててから足先から足首までを洗います。その際に、足の傷口には気をつけて洗いましょう。
また、足の間は不衛生となりやすいため、念入りに洗うようにしましょう。
洗浄の準備のポイントは以下の通り。
1.長くお湯に足をつけると皮膚が柔らかくなってしまうため注意する
2.お湯の温度が下がらないように注意する
3.せっけんは泡立て過ぎないようにする
4.お湯が汚れる場合は、足し湯やお湯の交換をする
5.足の指、足の裏はデリケートなため本人に確認しながら洗浄する
このように、順序を守りながら行うことを意識することが大切です。
・かけ湯
足浴のかけ湯には、せっけんを流す目的と足首・ふくらはぎを温める目的があります。
事前に準備しておいたピッチャー(39度~42度)のお湯でせっけんを流し、そのあとは足の甲、くるぶし、ふくらはぎなどにかけ湯をします。足の保温効果を高めるために膝下の露出部分をバスタオルで保温しておくと、なお良いでしょう。
かけ湯のポイントは、以下の通り。
1.長時間の足浴は、足をふやけさせ皮膚の損傷の原因になるため注意します。
2.足浴時間は、最大でも15〜30分程度にします。
3.リラックス効果を促すため、アロマオイルなどを使用する場合は感染症などの悪化も考慮し、事前に医師や看護師に確認しておく
普段、皆さんが何気なくやっていることでも、高齢者にとっては危険が伴うこともあるので、さまざまな観点からリスクを考慮していきましょう。
・拭き取る
お湯の拭き取りは、足専用のやわらかいタオルを準備しておくと良いでしょう。
また、感染症予防のために本人専用のタオルを事前に準備していただくように依頼しておくことも忘れないようにしましょう。
拭き取りのポイントは、以下の通り。
1.お湯が滴り落ちないように足先からかかとの順番に拭くと良い
2.足の指の間が湿らないようによく乾燥させるように注意する
拭き取りも重要なのは、「事前にどれだけ準備しているか」。それを工夫するだけで、効率が格段に変わります。
・薬を塗る
足浴後に足先に塗る保湿剤、または医師から処方されている塗り薬がある場合は、適切な部位に最適な量を塗っていきます。
ただし、傷口がある場合などは医師による特別なケアが必要になる場合がありますので事前に確認しておくようにしましょう。
足浴の薬を塗るポイントは、以下の通り。
1.必ず、足についた水気をとってから塗り薬を塗ります。
2.塗り薬は、足浴後30分以内に行います。
高齢者の方は免疫力が低下していることがほとんどなので、何気ない変化に気づ区ことが傷口の発見にも繋がります。
■足浴を避けた方が良い場合
足浴の手順や注意点について紹介してきましたが、足浴を避けた方が良いと判断される場合についても合わせてご紹介します。
足浴のケアを考えている方の中でも以下のような方がいれば、中止するようにしましょう。
足欲を避けた方が良い場合として、
・酸素の投与を受けている場合
・重度の心臓疾患の場合
・高熱を出している場合
・重度の麻痺、感覚障害がある場合
が挙げられます。上記の4点は2次的な弊害を起こすことにつながりかねないので、最優先で覚えておくことを念頭に入れましょう。
■まとめ
高齢者や足のむくみが気になる人にとって、足浴には多くのメリットがあります。
マッサージや会話などのコミュニケーションをとりながら足浴すれば、相手との信頼関係をより深めることにもつながります。とくに高齢者の体調は日々変化するため、ただ足を洗うだけではなく、相手の気持ちに寄り添うことが大切です。
相手の体調にいち早く気付き、適切な足浴を心掛けましょう。
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