高齢者で介護が必要な認知症のリハビリケア

高齢者への支援のポイント

介護施設では、認知症高齢者に対してリハビリケアを行うことも、大切な役割のひとつです。一般的にリハビリケアといっても種類が多く、それぞれに特徴があります。代表的なリハビリケアについて確認していきましょう。

リアリティ・オリエンテーションをする

1960年代のアメリカで、戦争の後遺症で脳に損傷を受けた兵士に対して行った療法です。現在では、認知症改善のリハビリのひとつとして、介護施設でも利用されています。

【対象となる認知症患者】
言語障害がまだ見られない「初期段階の認知症高齢者」のリハビリケアとして有効です。何十年も前の長期記憶はしっかり覚えているものの、昨日のことについての短期記憶が失われがちな人が対象になります。
【具体的な手法】
リアリティ・オリエンテーションには以下の2種類があります。
(1)24時間リアリティ・オリエンテーション
日常的なコミュニケーションのなかで行います。例として、着替えのお手伝いをしながら「今日は○月○日ですね」といった声かけをして、「今は何月何日か」「自分はどこにいるのか」という、基本的な状況把握となる「見当識」を補うのが特徴です。
(2)クラスルームリアリティ・オリエンテーション
小さなグループに分かれて、スタッフの進行のもとで、各人の基本的な情報を話し合う方法になります。

リアリティ・オリエンテーションでコミュニケーション力アップ

リアリティ・オリエンテーションには、認知症の進行を遅らせることや、コミュニケーションを高める効果があります。自分の状況に関する基本的な情報を繰り返すことで、記憶中枢に働きかけ、認知症の進行を遅らせます。見当識障害を改善することは、高齢者の「今どこにいるか分からない」「なぜここにいるか分からない」という不安の軽減にもなります。

クラスルームリアリティ・オリエンテーションでは、認知症高齢者同士が「思い出せない」という葛藤を共有し、お互いの共感を高める効果があります。楽しかった経験を分かち合うことで、コミュニケーションの喜びを再認識することもできるでしょう。

また、リアリティ・オリエンテーションは薬を使わないため、副作用がないというのもメリットのひとつです。

回想法で情動が活性化

過去の記憶をヒントに人生を振り返ることで、精神の安定を図る心理療法です。認知症は、古い記憶だけは最後まで残るという特徴があります。子どもの頃の写真、玩具、仕事で使っていた道具などから人生を回想するのです。

当時の記憶が蘇ることで情動が活性化し、認知症特有の感情消失改善が期待できます。また自分の人生を見つめ直し、肯定することで、気持ちが前向きになる効果もあるでしょう。

音楽療法で脳を活性化する効果あり

音楽療法は、音楽を通じて脳を活性化するリハビリです。治療に応用するようになったのはアメリカで、第一次世界大戦後の帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が最初だったとされています。手法として、以下のようなものがあります。

(1)好きな音楽を聴く
(2)カスタネット、タンバリンなどの簡単な楽器で演奏する
(3)歌に合わせて踊る
(4)カラオケで歌う

「音楽は記憶の扉を開けるカギ」ともいわれ、特に子どもの頃に歌った唱歌、若い頃の流行歌などは、回想法と同じ効果が期待できます。

介護施設では、音楽療法士が高齢者の年齢に合った曲を選び、認知症の状態に合わせて踊りや動きを取り入れたプログラムを作成します。正しい決まりはないため、高齢者の好きな曲を流すだけでも良いでしょう。

認知症高齢者にとって、リハビリケアは重要になってきます。認知症の進行具合によって、最適となる療法も異なってくるので、それぞれに合った療法を選択するよう心がけてみましょう。