高齢者の認知症予防対策とは

認知症の全知識

高齢者の認知症予防対策としては、いくつかの注意点があります。介護施設の場合、運動やコミュニケーションの機会をどの程度設けているかがポイントとなるでしょう。高齢者の認知症予防について解説します。

認知症とメタボリックシンドロームは関係している

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満・高血圧・高血糖・脂質異常症のうち、2つ以上の症状が出ている状態のことです。代謝症候群、または「メタボ」の略称で呼ばれることもあります。このメタボリックシンドロームは、認知症とも深い関係があります。脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症の両方の危険因子となるのです。

【脳血管性認知症】
メタボリックシンドロームは脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの誘引となります。こういった脳の血管の病気によって引き起こされる認知症が、脳血管性認知症です。
【アルツハイマー型認知症】
脳にアミロイドβなどの特殊なタンパク質が溜まり、神経細胞が壊れて死滅することによって起こる認知症です。メタボリックシンドロームは、高血圧・糖尿病・心疾患などの原因となります。これらの疾患を抱えている人は、アルツハイマー型認知症のリスクが高いことが、アメリカの研究によって証明されています。

以上のように、メタボリックシンドロームは認知症の大きな誘因であることは明らかです。認知症予防対策としては、メタボ解消に取り組む必要があると言えるでしょう。

週2回30分以上運動をする習慣を

認知症対策を目的としたメタボ解消には、週2回から3回、30分以上の運動が良いとされています。また単純にひとつの運動を繰り返すだけではなく、他のトレーニングと組み合わせることで、認知症の予防になります。

国立長寿医療センターでは、運動と頭の体操を組み合わせたものを「コグニサイズ」と呼んで、認知症予防として推奨しています。例としては、運動をしている最中にしりとりをする、4の倍数で手を叩くといったものがあり、動作を取り入れることが大切です。

認知症予防には他人とコミュニケーションを

コミュニケーションの機会が減ることも認知症リスクを高めます。1人暮らしの方も、デイサービスを活用し、なるべく多くの方と触れ合う機会を作りたいところです。

他人と話すことは、脳にとって良い刺激になります。他人を気遣い配慮したり、上手にコミュニケーションをとろうと工夫したりすることは、認知症予防になるでしょう。反対に、一方的に話してしまい、相手の話に耳を傾けなくなっていないかを見ることも、認知症対策として必要でしょう。

バリデーションを試してみる

すでに認知症が進んでいる方に対して、「バリデーション」という取り組みをしている介護施設もあります。認知症高齢者と、コミュニケーションをとるための療法として有名です。

【バリデーションとは】
アメリカで開発された認知症の方とコミュニケーション術のひとつです。認知症の方の経験や感情を認めて、共感して話を聞き、思い出話をするといったことを行います。バリデーションでは、認知症の方から見た世界を否定せず、尊重し、介護をすることが特徴です。アイコンタクトをとり、優しく触れながら、過去の思い出を引き出すなどの方法を用いて、以下のことを目指しています。
(1)高齢者の自尊心の回復
(2)コミュニケーションの促進
(3)ストレスの軽減
(4)介護者との信頼関係構築

バリデーションのテクニックは難しいものではありません。介護施設スタッフだけではなく、家族や周りの方も比較的簡単に取得することができるでしょう。

高齢者の認知症予防と改善のための対策としては、運動とコミュニケーションがポイントになります。介護施設を探す際は、このようなことを積極的に取り入れているかどうか、着目してみてもいいでしょう。