老人ホームで最も多い解約・退去時のトラブル。契約前に事前にチェックするポイント

介護の問題・トラブル

説明会や施設見学を重ねて、やっと見つけた老人ホーム。
しかし、入居してすぐに長期入院になってしまいすぐに退去するケースもあります。
このような場合、予想以上の請求が発生しトラブルに発展してしまう場合も。

この記事では、解約・退去時のトラブル事例や、契約前に事前にチェックするポイントをお伝えします。
安心して施設で暮らすために、確認すべきポイントをしっかり押さえておきましょう。

解約・退去時のトラブル事例

全国消費生活相談員協会が平成27年9月に発表した「老人ホーム関連トラブル110番報告書」によれば、施設とのトラブルのうち、契約・解約に関するトラブルは実に76%。とても多いことがわかります。

トラブルの例をご紹介します。入居一時金として2,000万円を支払ったAさんは、すぐに持病が悪化し、入居わずか10日後には長期入院することになってしまいました。
しかし、施設側から返金があったのは、1,380万円ほど。
たった10日間の入居期間で、なんと620万円という高額な金額を支払うことになりました。

ほかには、入居してすぐに入居書が死亡し退去(解約)となっても、契約が終了したとみなされて一時金がまったく戻ってこなかったというケースも。
以前は明確な法律が整備されておらず、泣き寝入りした利用者も多くいたようです。

クーリングオフで入居一時金が戻ってくる(90日ルール)を知っておこう

入居者からの相談やトラブル報告が相次いだことから、平成24年度の老人福祉法改正時に、90日以内であれば実際にかかった諸経費などの金額を除いた入居一時金が返還される「短期解約特例(通称:90日ルール、クーリングオフ)」が法律で義務づけられるようになりました。

つまり、入居から90日以内であればクーリングオフを利用することができ、入居一時金は原則返還されることとなったのです。

ただ、入居一時金の全額が返金されるわけではありません。
日割り計算で算出した家賃・提供を受けたサービスを差し引いた残りの入居一時金が返還対象であることが一般的です。

たとえば、先ほどのAさんのケースでは、2,000万円の入居一時金から日割計算した家賃やサービスが差し引かれ、1,993万円ほど返金される計算になります。

もちろん、この法律に違反すると施設側に罰則が科される場合も。
短期解約特例(90日ルール、クーリングオフ)制度に違反した施設には、都道府県知事から改善命令が出され、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性もあります。

トラブルを未然に防ぐために注意すべきこと

ご紹介したような入居者にとって安心できる制度もありますが、トラブルは避けたいものです。ここでは、トラブルを未然に防ぐための対策をご紹介します。

契約前に施設の見学会や説明会に参加する

各施設では、入居希望者に見学会や説明会を実施しています。
費用やサポートに関わる費用の説明があれば、その内容を記録して残しておきましょう。
この時点で不明な点があれば、遠慮せずに担当者に確認しておくことが重要です。

早期解約になった場合の違約金や返還額を確認しておく

契約前に、施設側から利用者側へ、説明書の内容について説明することが義務付けられています。
施設の概要や職員の配置、サービス内容とその費用について書かれている「重要事項説明書」というものがあり、料金についての条項も記載されているはずですので、必ず確認しておきましょう。

もし「90日ルール」を適用する場合、いくら返還されるのか、算出方法まで明確にしておいた方が安心です。

一時金の内訳を明確にする

入居一時金とは一般的に「施設への入居に必要な敷金」を表します。
契約前に内訳を明確にしておきましょう。

平成24年度の老人福祉法改正時に、家賃相当額や敷金、サービス提供費以外の費用や金品を受領することが禁止されました。内訳があやふやな場合は要注意です。

契約書類を大切に保管しておく

重要事項説明書など、契約時に交わした書類はきちんと保管しておきましょう。
もしトラブルになってしまった場合、契約書類は重要な証拠の1つになります。
また、念のためにコピーを取っておくと安心です。

話し合いで解決しないときの相談先

施設の最寄りの役所

入居している施設の、各都道府県や市町村の高齢福祉課や介護保険課の窓口に相談しましょう。
相談内容によっては、行政から改善指導をしてもらえる場合があります。

消費者ホットライン

「188」に電話すると、地方公共団体が設置している消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえ、トラブル解決のヒントを教えてもらえます。

各都道府県の国民保健保険団体連合会

国民保健保険団体連合会は、入居者の権利擁護、介護サービスの維持・向上を目的にして作られた施設です。
介護サービスに関する調査や、施設への必要な指導・助言を行ってくれます。

法テラス(日本司法支援センター)に相談する

サポートダイヤル0570-078374に電話をすると、一般的な法制度や手続き、トラブル解決の相談窓口を無料で教えてもらえます。
法テラスは国によって設立された「法的トラブル解決のための総合案内所」ですので、安心して利用しましょう。

多額なお金が必要になる老人ホーム。
解約や退去時にトラブルに巻き込まれることも少なくはありません。
利用者を守る法律や、トラブルを未然に防ぐためのチェックポイント、トラブルになった場合どうすれば良いのかを知っておくだけで、安心して入居することができますね。

施設を決めるときには、事前に見学し、きちんと施設からの説明を受けて納得してから契約しましょう。